第五話:来る者を拒めず

 霧華から事実を知った日から三日。

 既に夜十時を過ぎた頃。


 雅騎は未だ、学校の制服のままベッドの上に仰向けで寝転がり、両手を頭の下に回し、天井をぼんやりと見つめていた。


 その表情は冴えない……どころか、非常に渋い。


 あの日、授業を終えた雅騎は、フェルミナにバイトを休む許可をもらうと、御影の家へと足を運んた。

 そこで、御影なり銀杏いちょうなりに会え、事情が聞けるのでは。

 そう踏んでの行動だったのだが、彼女の家には誰もおらず、行動は空振りに終わっていた。


 翌日には、神麓かみふもと神社じんじゃの奉仕を任されていた人にも話を聞いてみた。しかし、こちらも一週間程不在にするという、霧華から得た理由以上の情報を得ることはできなかった。


 勿論、何度か御影のスマートフォンに電話も掛けてはみた。だがこちらも、電源を落としているのか。無機質な圏外のアナウンスが返ってくるだけ。


 つまり。

 残念ながら、この三日間。彼は何の手がかりを得ることもできず、ほぼ手詰まりな状態となっていた。


  ──如月さんも理由は聞けなかった。ってことは相当な理由、ってことだよな。


 数少ない情報に思考を巡らせていた雅騎は、彼女に話す事ができなかったを思い出す。

 そう。それはあの一週間前の朝稽古の出来事。


  ──あの日、あいつは絶対におかしかった。その理由を多分……。


 銀杏いちょうは、知っていた。


 これは勘でしかない。

 ただ。あの時視線を逸した銀杏いちょうの表情は、今思い返すと何処か後ろめたさがあったように感じる。


  ──だけど、理由を知っていたとして。何故それをすぐ解決しないんだ?


 あの稽古の日に御影の異変に繋がる原因があるとすれば。彼女なら、その後も引きずる兆候を見せたに違いない。


 しかし。あの日から最後に会った日の朝まで。御影にそれらしい節は、一切感じられなかった。


 もし仮に、その問題が既にとしたら。

 急にまた、何か問題が起こるとは考えにくい。

 つまり……。


  ──解決できなかったのか……。それとも、まだ解決しようがなかった?


 あれこれ考えを巡らしてみるも。結局、その答えに導く情報が足りなすぎる。


  ──……やってみるか?


 そう心で考えながらも。無意識にため息を漏らす雅騎の表情に浮かんだのは、迷い。


 正直な事を言えば。やろうとしている行為に、彼は非常に抵抗があった。

 何しろそれは、御影の知られたくないかもしれない世界に、土足で踏み込むような行為なのだから。

 とはいえこの三日間。答えに全く近づけないもどかしさを、彼はずっと味わっている。


 ……何故、雅騎はここまで御影にこだわっているのか。

 それは彼女を密かに想う恋心がある……かといえば。残念ながら一切ない。


 しかし、雅騎にとって。彼女は今の環境で一番歴の長い、であった。


 友達という括りでは、佳穂や霧華、そしてクラスメイトの男子なども同じ線上にいる。

 しかし。短いながらも幼馴染として過ごし。同じ武術の門下生として切磋琢磨し。

 高校で再会してからも、親しい関係を続けていく中で、彼の心も変化していった。


 親友と言うには、お互いの悩みを相談したりはしない。

 だが。くだらない事で笑い合い、愚痴り合い、皮肉を言い合う。

 雅騎の友達の中でも、男子ですらそこまでできる相手はいない。


 友達以上、親友未満ともいえる二人の関係に、彼はどこか特別なものを感じるようになっていたのは事実だ。


 そんな御影の突然の失踪しっそう。それは雅騎にとって、心配の種でしかない。

 せめて事情を聞けていれば、少しは安心していただろう。しかし、それすらない現状では、どうしても嫌な予感ばかりが先行してしまう。


  ──休みは一週間ほど……って事は、まだ、無事かもしれない。けど……。


 既に三日を無駄にしようとしている。そろそろ何か手を打ち、手掛かりを掴まなければ、大事に至る可能性もある。


 しかし。未だ雅騎の心には、激しい葛藤があった。

 御影が口にせず去った理由に、踏み込んでよいのか。

 踏み込んだとして、をしてもよいのか。

 そして。踏み込んだ後に何かを知った時。彼女にどう向かい合うべきか。


「う〜ん……」


 多くの迷いを抱え込んだ雅騎が思わず唸る。

 だが、唸っているだけでは、何も解決などしない。


「……風呂でも入るか」


 一度頭をリセットしようと上半身を起こした瞬間。側に放り投げていたスマートフォンが振動した。

 画面に目をやると、MINEへのメッセージの届いた通知が目に留まる。

 その相手は……佳穂。


 雅騎はスマートフォンを手に取ると、ロックを解除しそのメッセージに目を通す。


『速水君。急にごめんね。まだ起きてる?』


 短いメッセージ。彼はそれに対し返事を送る。


『起きてるけど。どうかしたの?』

『良かった。あのね……』


 少しの間の後。


『今から会えないかな?』


 返ってきたメッセージに、雅騎は思わず「え?」っと声をあげた。


 こんな遅い時間に彼女に会ったのは、以前佳穂とエルフィと共に、天使達の戦いを乗り切ったあの日位のもの。

 この時間にMINEでやり取りすることはたまにあったものの、と切り出された事は一度もなかった。


『何かあったの?』


 率直に疑問をぶつけてみる。すると、また少しの間を置き、返事が届く。


『御影の事で、ちょっと聞きたい事があって……』


 それを見た瞬間。雅騎は無意識に浮かない顔をした。


 藁をも掴む思いの彼にとって、何か情報が聞けるかもしれない渡りに船の言葉。

 だが一方で、こんな時間に女子を外出させる事への抵抗もある。

 返事もせず、長考する雅騎から反応がないことに、迷惑をかけたと感じたのか。


『無理なら大丈夫。ごめんね』


 佳穂からそんな謝罪のメッセージが届く。

 それを見てはっとした雅騎は、慌ててメッセージを返信した。


『いや。時間はあるけど。こんな時間に出歩かせるのは流石に危険だしさ』

『速水君の家でよければ大丈夫だよ。エルフィとし』


 まるで異世界で交わされるような会話に、デフォルメされた可愛らしい天使が、笑顔で飛んでいるスタンプが続く。


 普通の高校生同士ではありえないであろうその流れに、雅騎は無意識に笑みを浮かべる。

 そしてそれが。煮詰まって余裕のなかった彼の心に、僅かにゆとりをもたらした。


『分かった。ただ、ちゃんと温かくしてね。それから誰かに見つかってもいけないから、気をつけて移動してね』


 雅騎がこんな文章を返すと、


『うちのお父さんみたい』


 という言葉と、にっこり笑みを浮かべるウサギのスタンプが返ってくる。

 画面の向こうからにいる佳穂とエルフィに、クスクスと笑われたような気がして。彼は一人、気恥ずかしげに頬を掻いた。


『それじゃ、これから向かうね!』

『分かった。気をつけて』

『うん!』


 小気味よいやり取りで会話を終えた雅騎は、すっとベッドから立ち上がると、何やら考えながら、そのままキッチンへと向かっていった。


* * * * *


 それから十五分程。


 居間には、何故か雅騎と同じブレザー姿の佳穂と、普段通りの白きローブ姿のエルフィが、彼と共にテーブルを挟むように、正座で座っていた。


「冷めないうちにどうぞ」

『ありがとうございます』

「いただきます」


 先程キッチンで準備していたのは、白いティーカップに注がれているホットミルク。

 僅かにチョコを溶かし入れ、甘い香りを漂わしていたそれを、佳穂とエルフィは静かに口にする。

 その優しい温かさに満足したのか。二人はほっと一息くと、カップをソーサーに戻した。

 雅騎は向かい側であぐらを掻きながら、不思議そうに佳穂を見つめている。


「綾摩さんのその格好って。もしかして塾の帰り?」

「ううん。急いで着れる服がこれしか思い浮かばなくって。それより速水君こそ。今日はバイトが遅かったの?」

「いや。ぼやっとしてたらこんな時間になっててさ」


 こんな夜半にこんな格好で会っている不思議さに、二人は思わず小さく笑みを浮かべた。


「それよりごめんね。急に押しかけちゃって」

「いや、それは別にいいんだけど。それで、御影の話って……」


 雅騎は佳穂に対して、一度知らない口ぶりで会話を始めようとする。

 しかし。そんな嘘をあっさり否定するような発言をしたのはエルフィだった。


『貴方が最近、ずっと思い詰めた表情を見せていたので、何かあったのではと佳穂が心配したのですよ』

「俺が?」

「うん。月曜日から、かな……」


 真剣な目を向けているエルフィと、より申し訳無さをあらわにする佳穂。

 そんな二人を見て、雅騎は困ったように頭を掻く。


「俺、そんなに変だった?」


 そう尋ねると、エルフィは小さく頷いた。


『ええ。ここ数日、授業中も心ここにあらずといった態度でしたし、帰宅する時もまた、何か決意するような表情でしたから』

「丁度御影が休みになった日からだったから、もしかして速水君なら何か知ってるのかな? って思って……」


 二人の洞察力と推理力に、彼は思わず舌を巻いた。

 だが同時に。ふとした疑問が心をぎり、思わず口を突いて出てしまう。


「えっと……。二人って、ずっと俺を見てたの?」


 そう。

 この三日間。図書委員の活動で霧華と話しはしたが、佳穂と話した記憶は一切ない。

 だからこそ。自分を見る機会などそれほどなかったのではないかと思っていたのだ。


 しかし。

 それは、二人にとって愚問でしかない。


 佳穂とエルフィは、一度お互いの顔を見合わせ。そして。


「たまたまだよ」

『たまたまです』


 同時に言葉を発した二人は真剣な表情で……いや。露骨にと言わんばかりの強い圧で、雅騎をじっと見る。

 その雰囲気に気圧けおされた彼は、冷や汗を掻きながら苦笑することしかできなかった。


「と、とりあえず……。俺が知っていることを話せばいいかな?」


 妙な空気を変えるべく。雅騎は姿勢を正すと改めて本題に入る。


「といっても、大した事は知らないんだけどさ」


 困ったような顔を浮かべながら、彼はこれまでの経緯いきさつを掻い摘んで話した。


 霧華から彼女が一週間休むと聞いたこと。

 それを自身は一切聞かされていなかったこと。

 彼女の家は、ここ三日間誰も帰ってきていないこと。

 そして。御影に一切連絡がついていないこと。


「結局、御影が一週間休みって事以外、何も知らないんだよね」


 改めて何も進展していない事実を痛感し、雅騎は無意識にため息をく。


「速水君には話すらしてないんだ……」

「綾摩さんは何か聞いてるの?」

「そこまでじゃ、ないんだけど……」


 彼にそう問われ、佳穂は表情に影を落とすと項垂うなだれて見せた。

 彼女に声を掛けないものの。エルフィも心配そうにその姿を見つめている。

 その空気から彼はふと、最近何処かで似た光景を目にしたことに気付く。


 どこか切なげで、辛そうにも見える佳穂の表情。

 それはあの日の、霧華彼女と同じ。


  ──もしかして……。


「綾摩さんって、如月さんと一緒に御影と会ってたりした?」


 気がいたのか。雅騎は思った事をそのまま口にしてしまう。

 それに一瞬ビクッと反応した佳穂は、視線は合わせぬまま、静かに、小さく頷いた。

 だが、その表情はより辛さを色濃くし。何か言葉にしたくてもできない。そんな迷いある気配を強くする。


 暫しの間続く、三人の沈黙。

 その沈黙が彼の心を罪悪感で満たすのに、それ程時間は掛からなかった。


「ごめん。話せない事もあるよね。無理しなくても──」

「そうじゃない! そうじゃ、ないの……」


 その場を取り繕うように話を切ろうとしたのを察し。佳穂は咄嗟に彼の台詞を遮る。

 驚く雅騎に対し。彼女は覚悟を決めた表情で、ゆっくり顔を上げた。


「霧華には悪いと思う。でも……きっと速水君は知っておいたほうが、いいと思うから」


 そう告げると、佳穂はゆっくりと語り始めた。


* * * * *


 日曜の夜。

 霧華と佳穂は御影の家に呼ばれ。エルフィも含め三人で客間の座布団に腰を下ろしていた。


「お茶を出してくれた御影のお母さんの表情が、何処か冴えないなって思っていたんだけど……」


 それ以上に驚いたのは、入れ替わるように入ってきた御影を見た時だった。

 はっきりと分かるほどに泣き腫らした目。そこにあるのは失望だけ、と言わんばかりの弱々しい姿を、二人の前に晒していたのだそうだ。


『やつれていたわけではありません。ですが、御影はとても憔悴しょうすいしきっているように見えました』


 霧華がどうしたのかと尋ねるも、御影はそれに答えはせず、立ったまま「一週間ほどいとまを貰うから、学校に通うことも、霧華の手伝いもできない」と告げたのだと言う。


「霧華が心配して、詳しい理由を聞き出そうとしてくれたんだけど。御影はずっと謝るだけで、結局理由は話してくれなかったの」


 そして、短く休みの件を伝えた御影が部屋を出る前に、口にした言葉。


『「もし戻れなかったら、すまぬ」。そう言い残し、彼女は部屋を出ていったのです』


 皆が唖然とする中、入れ替わり入ってきた銀杏いちょうに対し、霧華は必死に何があったのか問いただしたのだそうだ。

 あそこまで我を忘れ。取り乱し。叫ぶように懇願こんがんした霧華を見たことがないと、佳穂とエルフィは語る。


 だが。結局銀杏いちょうは、我家わがやの問題だから話すことはないと言い、ただ冷たく「お引取りください」と告げたのだという。


* * * * *


「私達が知っている話は、これで全部」


 話し終えた佳穂が、苦しげな表情で俯く。

 あの時の御影。そして霧華の痛々しい姿を思い出し。結局自分は二人のために何もできなかったという歯がゆさに、強く表情を歪めてしまう。

 エルフィはそんな佳穂を慰めるように。優しく頭を撫でてやる。


 そんな二人の姿に。

 雅騎は、何も言わず、ゆっくり目を閉じた。


  ──まったく……。


 真一文字に口を閉じ。太ももの上に置いていた手で、ズボンをぎゅっと握り込む。


  ──何やってんだよ。あのバカは!!


 突然。佳穂とエルフィの耳に届く、奥歯を噛みしめるギリっという嫌な音。

 思わずはっとした二人は、同時に顔を上げた。


 雅騎は、苦々しい顔で歯を食いしばっていた。

 悔しそうに。歯痒そうに。そして、寂しそうに。


 そんな彼の表情を、今まで二人は見たことはない。

 それ故に。何も言えず、只々ただただ呆気あっけにとられてしまう。


  ──別に俺に言わないのは構わない。けど……


 雅騎は目を閉じたまま、大きく深呼吸すると、ゆっくりと目を開ける。


  ──皆にまで心配掛けてどうすんだよ……。


 心の中の怒りの炎を、ゆっくり、静かに落ち着けていく。


 そして同時に。

 まるでその感情と入れ替わるかのように、その瞳により強い、決意の灯火ともしびが、宿る。


 佳穂から知ることが出来た情報は、今までの情報と大差はない。


 新たにもたらされた話といえば、御影に重大な何かが迫っているかもしれない事と、佳穂や霧華も彼女に何も話せてもらえなかった事実だけ。


 だが、彼にとってはあれば、十分だった。

 足掻あがいてやると、心に決めるには。


「ったく……」


 雅騎は無意識に、呆れるように呟く。


「速水君……」


 そんな彼の一言が、皆にかかっていた沈黙の魔法を打ちはらったのか。

 ポツリと呟く佳穂の声に、雅騎ははっと我に返った。


「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してて」


 慌てて取りつくろうように、彼は無理に笑顔を作る。

 だが、ここ一ヶ月の間。数多くの雅騎の本当の笑顔を見てきた二人にとって、それが偽りのものだと察するのは容易だった。


 佳穂とエルフィの心配そうな表情が変わらないのを見て、彼は困ったように頭を掻く。


  ──とにかく。まずは二人を家に帰して、それからだな。


 ちらりと壁掛け時計を見ると、既に夜も十一時を回ろうとしていた。

 明日も学校がある。そして何よりこれからする行動に巻き込まないためにも。

 二人をこれ以上拘束するわけにはいかない。


「今日は話してくれてありがとう。もう遅いし、二人はそろそろ帰ったほうがいいよ」


 何時ものようにニコリと微笑み、そう言って二人に帰宅を促す。


 だが、彼は気づいていない。


 雅騎が彼女達を見ていなくとも。彼女達は雅騎を見ているということを。

 そして。二人は既に、彼の瞳に込められた何かを、感じ取ってしまっていたということを。


 佳穂とエルフィは、お互い視線を交わす。


「いいよね? エルフィ」

『貴女の、思うがままに』


 真剣な表情でお互いを見た後、ふっと笑顔を浮かべる二人。

 その反応に、思わず首を傾げる雅騎に。


「速水君。私ね。まだ帰れない」


 佳穂は真剣な表情でそう口にした。


「え?」


 その表情と言葉から導き出される答えが浮かばず、戸惑う彼に対し……


『貴方は、御影のために何かしようとしているのでしょう?』


 同じく真剣な表情で彼を見たエルフィが、その真意を口にする。


  ──え!?


 雅騎はそれを聞いて驚きを隠せなかった。


 一度もこの後の事について話したことはない。

 それなのに、エルフィはさもかのように話をする。


  ──まさか、天使も人の心まで読めるのか!?


 かつて自身の術に抵抗し。彼の生命いのちの衰えを指摘してきた様々な天使の力。

 そんな経験からの推測が、雅騎の思考をかき乱す。


 彼の戸惑いを見て悪戯心が芽生えたのか。エルフィは、くすりと笑ってこう言った。


『心を読んだわけでは、ないのですよ?』

「なっ!?」

「ふふっ」


 更なる驚きを見せる雅騎を見て、釣られて佳穂が小さく笑う。


「だって速水君。真面目なんだもん」

「いや、真面目って……」

私達わたくしたちはあの戦いからずっと、貴方を見てきたのです。ですから少しは貴方の考えも、分かるようになっただけなのですよ』


 ネタばらしをしながら、またも悪戯っぽくそう語るエルフィ。

 日中もそうだが、またもそこまで表情に出てしまっていたと改めて痛感し、雅騎は恥ずかしげに頬を掻く。

 だが、次の瞬間。そんな彼の表情がはっとする。


  ──それって……。


 雅騎は少し考え込んだ後、改めて二人を真面目な顔を見た。


「ってことはさ。やっぱり二人ってここ最近、ずっと俺を見てたの?」


 改めて思い出された素朴な疑問。

 掘り返された話題に、佳穂とエルフィはきょとんとした後、顔を一度見合わせ。そして……。


「たまたまだよ」

『たまたまです』


 またも綺麗に言葉を重ねた。


 顔を赤く染め、先程以上にとより強い圧を発し。やや不貞腐れたように雅騎をじっと見る佳穂と、真剣な表情のエルフィ。

 結局彼は、またも冷や汗を掻きながら、苦笑することしかできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る