第105話 アディの正体

 えっーと。

 あれから、なんやかんやあった。

 なんやかんやはなんやかんやです。

 敵対心剥き出しの赤髪魔術師ちゃんを眠らせたり、破損した宿とかを修復したり、騒ぎを聞きつけた番兵たちを麻痺魔法で無力化したり、シアンヌを回復も兼ねて封印珠に入れたりです。


 先日息子と会って、今度は娘。

 またかと文句のひとつでも言いたいところではあるのだが。

 いや……こんな展開が起きることを、俺はそもそも想定しておくべきだったのだ。


 ちょっと前まで自分の子孫と出会うことを望んでいなかった。

 かまってやる暇はないし、資格も無いと思っていたからだ。

 だからこそ、仮に子孫のいる異世界に来たとしても俺の前に現れることはなかった……主人公補正を持つ俺に、星の意思が忖度するからである。


 唯一のセキュリティホールだったのが、ティナだ。


 既に諦めていたとはいえ、いつか再会したいという願いは俺の心の奥底に眠っており、あがき続けた結果、叶った。叶ってしまった。

 しかも実子のシンジに召喚されるという経緯から、イツナたちのおかげで自分が父親になることを受け入れて世界ごと家族を取り戻せた。

 それにより自分の子供に会いたくない、会うべきではない……という考え方に変化が生じた。少なくとも会ってもいいのかな、ぐらいになった。


 要するに『俺が子供に会う展開』がクソ神宇宙において、ついに解禁されちゃったわけだ。


 俺の血縁なら、召喚の優先順位が上がる。

 今回アディーナに召喚されなかったのは、仲間たちと一緒に戦うって気持ちのほうが強かったからだろう。

 結局、敵側に召喚されてちゃ世話ないが。


 ともあれ、いろんな異世界で女をとっかえひっかえしてきた俺は今後、自分の子供たちに会うことを覚悟しなきゃならないわけで。

 それが嫌かと言われると、むしろ楽しみにしちゃってる部分もあるわけで。

 こうしてアディーナと一緒にいると、頬がゆるんじゃったりもするわけで……。


「いや、まだだ。浮かれるな俺。偶然って可能性も――」

「父さん?」


 隣のカウンター席に座る愛娘が小首をかしげると、銀髪が揺れた。

 フルーツカクテルの注がれたグラスを楽しげに揺らしながら、こちらに向ける瞳を潤ませている。

 とにかくアディーナとがっつり会話するために、二人っきりで話せるバーに連れ込んでしまった。仮にも娘を名乗る少女を、抱きたい女をナンパするときの癖でつい。

 おかげでアディーナも頬を染めている。はたして酔っているのは酒か、ムードか。


「えっと、それでアディーナ」

「アディでいいですっ!」

「わ、わかった。アディ。今聞いた話、もう一度聞かせてくれ」

 

 置いてけぼりにしてしまったイツナも、鏡からこちらの様子を見ていることだろう。

 もっとも、俺ですらお腹いっぱいの内容を理解できるとは思えないが……。


「キミは俺と嫁の間にできた娘……の記憶を持つ転生者で間違いないんだな?」

「そうなんです!」


 アディーナ・ローズは転生者である。

 嫁との間に生まれた子供としての始まりの記憶として持ち、俺と同様に規格外の例外則オーバーフロー・ワン、あるいはその近似体アポロキシメイトであると推察される少女。

 アディーナという名は俺の娘としての名前ではない……とばかり思っていたのだが、これもアディーナ自ら名もなき今生の自分自身に最初の名前をあてがったものなのだという。

 だから、俺の娘の真名はアディーナで合っていた。

 

「前前前世ではずーっとずーっと、お父さんの写真を見て育ちました! お会いできて本当に嬉しいです!」

「お、おう……」


 そんな愛娘が尊敬の眼差しを向けてくる。

 キラキラした瞳が何というか痛い。


「でもな、俺はキミに父さんなんて呼ばれるような清廉潔白な人間じゃ――」

「あ、大丈夫です。ハーレムールールですよね? ちゃんと知ってます!」


 情操教育行き届いてるな、おい!


「そもそも今の父さんとわたしは血の繋がりはないんだし、お嫁さんにしてくれてもいいんですよ?」


 さらっと色仕掛けをしてくるアディに不覚にもドキッとする。

 えっ、なんでだよ、実の娘なんだぞ俺。そういう趣味はなかったはずだ。

 いやでも魂は娘でも血の繋がりはないし、発するフェロモンに抵抗感を覚えることもないわな。

 この場合、近親相姦になるのか?

 人間の倫理観に囚われないエヴァなら普通に許可してくれるかな……いやいや、さすがに俺がNGだ! 話題変えよう!


「そ、それにしたって無限輪廻転生かぁ! クソ神の野郎、俺の娘にとんでもないもの押し付けやがって。ほとんど呪いだろ、それ!」


 そう。アディは俺の『召喚と誓約』ほどでないにしろ、凶悪なチート能力をクソ神に与えられていた。

 記憶を保持したまま、あらゆる異世界間で転生を繰り返す『無限輪廻転生チート』。

 まあ、俺の鑑定眼でも見えないからアディの自己申告なんだけど。


「そんなことないですよ。どの人生も割と順風満帆で、いつも幸せでした!」

「え? ん、ああ、そうか……俺の加護があるんだもんな」


 俺の関係者には、預かり知らぬところで勝手に不幸にならない加護を与えている。ハッピーエンドチートってやつだ。

 当然、俺の知らない子孫とかにも適用される。無限輪廻転生チートにより他のチート能力なども引き継げるアディーナは未来永劫、何不自由なく幸福な人生を送れるってわけだ。


「それだとなんで今回は……」

「父さん、どうかしました?」

「ああ、いや。なんでもない」


 加護の割に波乱万丈の人生を送っている気がするけど、本人はとっても幸せそうだし。

 俺が水を差すのも野暮な話か。


「それにしても、お前さんの特性が俺譲りだったとは考えもしなかったな。クソ神がマークするのは当然か」


 規格外の例外則オーバーフロー・ワンの最大の特徴は、魂が劣化しないことにある。

 破壊されない。経年による腐敗もない。源理チートをいくら抱え込んでも、決してすり減らない。因果から独立した特異点でもあるので諸々の改変効果の影響を受けない、などなど。

 だからこそ俺は異世界流浪の旅を続けつつ、延々と強くなり続けることができる。

 努力チートの究極土台だ。


 何故、クソ神が俺に無限に宇宙を彷徨うような運命を課すのか。

 実を言うと、ただ面白いからだとかいうわけじゃなくて、それなりにちゃんとした理由もある。

 規格外の例外則オーバーフロー・ワンの魂は劣化せず、加工されず、変質しない。いいことづくしのように聞こえるが、エヴァによるとクソ神にとって……というより今の宇宙エネルギー循環システムこと『ガフの部屋』にとって都合が悪いらしい。


 ガフの部屋はクソ神の管理する宇宙からあらゆる魂を回収し、濾過し、漂白して純エネルギーとして全宇宙の創世神に再配布する。

 このリサイクルシステムによってエントロピー問題は解決され、神々は思うような世界を創世することができるようになった。


 さて、普通の生き物が死んで霊魂がガフへ逝くと、記憶や霊体などは綺麗サッパリ洗い流されて純粋なエネルギーに変換されるわけだが。

 仮に俺が普通にくたばって送られた場合、魂を加工できず、一切他と混ざり合うことなく固まってしまい……簡単に言えば詰まりを起こしてしまうらしい。

 だからイレギュラーの俺やアディは普通に人生を終えてはならない、というのがクソ神サイドの理屈である。

 もっとも、その辺のいわゆる『宇宙の真実』ってやつを知ったのは、エヴァと知り合ってからで……それまでは俺もクソ神と世界を呪うばかりだった。

 こちとら聖人じゃないんだ。どんな理由があろうと俺だけが宇宙のために犠牲になることを承服できるわけがない。


「クソ神さんにはわたしも最初の転生のときに一度しか会ったことないですけど、父さんのときの反省と、友達のお詫びも兼ねてるって言ってましたよ」

「あー……」


 クソ神の野郎……アルトの件は気にしてる風を装ってたと思ったけど、あの謝罪はひょっとするとマジだったのか?

 ふん……今更、俺の娘に優しくしたって復讐をやめる気はないんだからねっ。


「だから、わたしには次元転移を縛るような誓約はなしだって。あと、お父さんを『召喚と誓約』でがんじがらめにしたのは完全に趣味だって言ってました」

「やっぱあいつ殺すわ」


 あー、ていうか情報量やべぇな。


 そもそも例外則って遺伝するのか?

 俺の子孫はだいたいめっちゃ強くなるけど別に底が測れないなんてことはなかったし、アディが俺の特性を継いでるのも数奇な偶然に過ぎないのでは? そもそも継いでるんじゃない? 未来になんかあんのか? でも、別の異世界の未来を見通すことは俺にはできないし……。


 それにキャメロット崩壊後にアディが転生したんなら、あのときクソ神が言ってた『例外則は俺とアルトだけ』って話に矛盾はない……ってことにもなるのか?

 まあ、どうでもいいかな……時間軸なんて所詮は特異点の主観だし。

 アディはアディで別の時間を生きてるんだし、下手すればどこかで分岐した並行世界の未来なのかもしれない。

 俺と交差しない次元の住人って可能性もある。気にしても意味はない。


 まあ、突然変異なんだろうな。

 多分そう。

 それでいいや。

 だいたいわかった。


「さっき聞いた話はこんなもんか。さてアディ……お前さんの今生こんじょうに話を絞ろう。今のお前さんはアレだろ? 例の結社出身だって聞いたけど」

「わたしもまだ、はっきりとしたことはわからないんですが……大賢者様は私の魂が赤ん坊に『召喚』されたのではないかとおっしゃってました」


 チート転生者の魂を、召喚?

 前世の記憶のある魂を、特定の肉体に直接?


「どうかしましたか、父さん」

「……これは確認だけど。他の子たちも同じか?」

「キティスも、エレンも、ミニアも。結社で人工的に造られた肉体に喚び出された転生者なんです。わたしは4番目でした」


 なるほど、だからアディは4号ってわけか。


「まだ確実とは言えないけど……多分、お前さんたちは人造転生者だ」

「え?」

「昔、同じような方法でクソ神に対抗できる戦力を揃えようとした奴がいたんだよ」


 かつて、クソ神にクーデターを起こそうとした男がいた。

 そいつの名は、マーリン。チート転生者である。

 奴の抱える研究組織の名が、キャメロット。

 言うまでもなくマーリンが前世の記憶に基づいてアーサー王伝説をモチーフに打ち立てた集団だ。


 キャメロットは絶対服従の強力なホムンクルスの肉体にチート転生者の魂を込められた人造転生者を生み出した。

 12人の円卓騎士と、彼らを率いる騎士神王。

 円卓騎士を率いるべく造られたリーダーユニットが、騎士神王アルトリウス。

 アーサー王をモデルにした人造転生者であり、俺の同類にして親友、そして後天的に生み出された規格外の例外則オーバーフロー・ワンだ。


 クソ神に並々ならぬ憎悪を抱いていた俺が奴らに召喚されたのは、まさに必然だった。

 最初のうちは若干乗り気だった俺だが、アルトリウスたちを使って宇宙構成源理オリジンルールを破壊するとかいう計画の全容を知るに至って完全に対立。

 俺の嫁となったモルガナとともに円卓騎士を難なく葬り、あんなことになってしまったアルトをアヴァロンに放逐し、キャメロットも跡形もなく破壊したのだが……マーリンだけは別の異世界へと逃がしてしまったのだ。


 結社の連中がこぞって口にする、世界の夜明け。

 心を読んでも、拷問にかけても、催眠で吐かせても、結社員によって共通のイメージというものがなくて漠然としているキーワード。

 世界を今の形から変えようという意思だけは汲み取れるけど、必ずしも一枚岩ではないように思えた。

 もしかして結社はキャメロットと同じなんじゃないか?

 だとすると世界の夜明けっていうのは、奴が提唱していた神々から世界を解放するとかっていう、人間至上主義的且つ排他的な思想のことで。

 その最終目標は……。


「えっと、つまり結社はわたし達を使ってクソ神さんを倒そうとしてるんですか?」

「ぶっちゃけそんなところだな。宇宙を壊すテロリストってところさ」


 まさかとは思うが、今のところ状況があのときと見事に合致する。

 奴が同じような計画をこの世界で発動しようとしてたなら、アディがこの異世界に転生したのも偶然じゃないってことになるし、たまたま偶然ってよりはよっぽど筋が通る。


 とはいえ、まだ確証がない。

 肉体に転生者の魂を召喚する……そういう方法がよくあるとは言わないが、俺が見てきた身勝手な異世界人どもなら普通にやりかねない範囲だし。

 ホムンクルスじゃなくて赤ん坊に転生者の魂を召喚してるのも気になるけど、前回の失敗の反省をふまえてやり方を変えたと言われてしまえばそれまでの話か。


「まあ、結社の連中が何をやろうとしてるかなんて関係ない。全部ぶっ潰せば済むことだ」


 とりあえず、マーリンが結社に関わっているかもしれないって言うなら好都合だ。

 真相を確かめつつ奴の息の根を止められる一石二鳥の手段を、俺は持っている。

 それに奴は間接的にではあるがアルトの仇だ……借りは返す。


「あの、お父さん。それは?」


 俺がアイテムボックスから取り出した黒革の手帖を見て、アディがのぞき込んでくる。


「俺が漫画を参考に作った死神手帖だ。こいつに真名を書かれた者は即死する」

「うわっ、こわい!」


 アディのコメントをスルーしつつ、サラサラっと一度たりとて忘れたことのないマーリンの真名を記述する。

 射程距離は世界全土なので、もしいなかった場合は不発に終わるのだが。


「あれっ、文字が赤くなりましたよ!」

「おっ、ビンゴだ。やっぱりマーリンが結社の黒幕だったんだな」


 文字が赤くなったということは、手帳の効果によって異世界のどこかにいたマーリンが死亡したということである。

 即死耐性などで対策されていた場合は黄色くなるから、これは通ったと見ていい。


「えっと、つまり……?」

「ああ、お前さんたちを召喚した黒幕はくたばった」

「うわぁ……話には聞いてましたけど、本当に無茶苦茶しますねっ!」

「ああいう連中は会話したところで時間を浪費するだけだし、イベントをすっ飛ばせるならそれに越したことはないさ。あとは残党を片付けるだけだな」


 因縁の相手って言っても、話すことなど何もないのだ。

 ただ死んでくれれば、それでいい。


「ううっ、残党かぁ……どれぐらいかかるのかなぁ」

「それも心配ない。残りの連中も放っておけば、勝手に死ぬ」

「へ?」

「前に会った結社の女幹部に殲滅の呪詛を仕込んだんだ。おおよそ結社のミームもマーリンが黒幕だったことで察しはついたし。女幹部を感染源にして同じ思想を持ってる連中だけを殺す呪詛が蔓延すれば、手を下す必要もなくなるさ」


 俺が異世界を滅ぼさねばならないとき……種の殲滅をしなくてはならないときなどに使うのが殲滅の呪詛である。

 実際、キャメロットも全く同じ方法で消し去ったのだ。

 これなら俺のいないところで勝手にパンデミックを起こすし、呪詛同化がなくてもできる。


 ただの疫病と違うのは特定のミームを持つ者だけを対象にできるところだ。

 肉体的な条件のみならず、精神的、社会的条件を満たす者のみに感染させることができる。

 文化、思想、言語などを事細かく設定した呪詛をアレンジすれば、顎髭を生やし黒装束を着た連続殺人犯だけを殺す呪詛みたいのも作ろうと思えば作れる。

 

 もっとも全滅させるのに多少の時間がかかるけど、アディと過ごす時間が増えると思えばいいかなって。

 まあ、今の俺なら呪詛同化すれば俺のエネルギーで一気に世界を包み込むこともできるけど、そこまでしなくたっていいや。


「あれー? ひょっとしてお父さんとお酒飲んでる間に、わたしの抱えてた問題って全部解決しちゃった?」

「まあ、俺の旅なんてだいたいいつもそんなもんさ」


 本当ならアディと一緒に戦っていろいろ探るつもりだったけど、知りたかった情報はだいたいわかってしまったし。

 もはや結社は用済みだ。なら、退場してもらうだけの話である。


「あ、ちなみにシアンヌとお前さんの戦いも占領した結社のアジトから見てたんだ」

「うわー……」


 愛娘にドン引きされてしまった。

 しょうがないじゃないか、観戦にいい感じのアーティファクトだったんだし。

 あとで回収しなくちゃな。


「父さんって本当に母さんの言うとおりの人なんですね。やることがえげつない……」

「あっ、そういやまだ聞いてなかったけど、母親は誰なんだ?」


 大方、卒婚嫁のひとりだろうとタカを括っていたのだが。

 返ってきたのは予想だにしない意外な名前だった。

 それこそ、アディが転生した娘だったってオチ以上に。


「うーん、父さんちゃんと覚えてるかなぁ。イツナっていうんですけど」

「………………は?」


 意味を理解した瞬間、頭が真っ白になった。


「そ、そうかぁ、イツナかぁ」


 上擦る声を自覚しながら、必死で平静を装う。


「間違いないか確認するけど、おさげから電気出す系女子の?」

「そうですそうです! 良かった、父さん覚えててくれたんですね!」

「いや、覚えてるも何も……」


 現在進行形で嫁なんですがががが。


 しかし、そうか。言われてみれば納得だな。

 天才児イツナと俺の間に生まれた嬰児えいじが、時空も何もかも越えて最強のチートホルダー候補になるのは当然の帰結だろう。

 卒婚嫁のアテナとか、リリースしたフレイヤとか、ゲーム模倣型異世界出身の女体化トールとか、ソシャゲ異世界のSSRカードが美少女として具現化したアザトースとの間にできた子供だとか言われるより、よっぽどしっくりくる。

 神としての性質も持ち合わせてるっぽいから、途中で神の子供として転生する経験もしたんだろうな。


 さすがの俺も未来の異世界からやってきた、しかも転生してきた娘に会ったことはない。

 有り得る未来から過去に転生するケースがあると知ってはいたけど、まさか自分が経験することになるとは。長い旅もしてみるもんだ。


 アディの口ぶりからして、子育てのためにイツナが卒婚する未来の異世界がどっかにあるってことなんだろう。

 そしてアディの視点からすると、それは過去の話で。俺からすると、未来の話。

 そもそも時間自体が絶対の法則でもなんでもないから、気にしたら負けなのはわかってるけど……。


「えへへー。よかったー」


 アディの笑顔はこうしてみると、確かにイツナそっくりである。

 実際これ会わせたらどうなっちゃうんだろうな。

 双方の反応が実に楽しみである。


 あ、そういえばイツナは鏡でアディと俺の会話を聞いてるかもしれないんだっけ。

 頭から煙出してないといいけど……。




 あくる朝。

 

「おおおおおおはようサカハギさん! 今日はいい天気だね!!」


 イツナがもじもじしながら実にわかりやすい反応をしてくれたので、


「今日は赤飯炊くか!」

「やめてええええっ」


 からかってしまったのはご愛嬌。




 こうして。

 俺は暫くの間、アディとその友人たちと仲良く過ごしましたとさ。

 めでたしめでたし。ちゃんちゃん。


 ちなみにめでたく結社を根絶やしにした後。

 この異世界から旅立つときにイツナとアディを対面させてみたわけだが……アディも同じようなリアクションだったことは言うまでもない。

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