第89話 終末のラストバトル

「ああ、わたし、解放……された……!」


 リリィも目の前で殺された仲間のことなど、これっぽっちも気にしていなかった。それどころではないのだろう。

 実際、ニコポリンクが途絶えたはずなのに自我を失うことなく……いや、この娘は最初から己の魂を失ってなどいなかったのだ。悠斗如きのチート能力で陵辱できるほど、俺たちの存在はやわじゃない。


「コォォォ……力が溢れる! 止まらないぃ!!」


 リリィの赤い髪が総気立ち、金色へと変わっていく。白目を剥いた顔つきに量産型美少女だった頃の面影など微塵もない。禍々しい魔力波動が立ち上り、天を貫いている。


「決めたぜ。リリィ、テメェはエヴァがなんと言おうと絶対に俺の嫁にする。法も倫理もアンチNTR厨もクソ食らえだ。根こそぎ平らげてやっから、覚悟しろよ」


 俺も自らに課している第一の枷を外した。

 解いた余波だけで世界が滅んでしまう封印を、何のためらいもなく。


「サカハギィィ……シャアアアア!!!」


 俺たちは示し合わせたように距離を詰め合った。

 互いがぶつかりあった拳同士を起点に大地が消滅し、光がすべてを覆い尽くした。衝撃波によって分解された物質が熱エネルギーと化して世界に広がり、その中から純粋な魂エネルギーを俺とリリィが体内へと吸収して再度解放。互いの戦いで滅びることのない新たな天地を創世していた。

 こうなる前に結界を張っておいたから異世界人どもが死んでもガフの部屋に魂を囚われることはない。後で時間を元に戻せばみんな生き返るはずだ。

 今の俺とリリィが本気でぶつかり合ったらこんな世界など修復不能なレベルで完全消滅するから、一度問題ないやり方で滅ぼすより他にない。


 最初、俺たちはなんの技もなく、ただの力比べをした。互いに放出するエネルギーに強烈な攻性ベクトルを与え、拳をぶつけ合う。


「ほらほら、どうした。お前の力はそんなもんか!」


 こればかりは数多の異世界を喰らってきた俺に圧倒的な分があった。もちろん瞬間出力に総量が比例するわけではないが、リリィのエネルギー総量はどう足掻いても今滅んだ世界以上にはならない。しかも半分以上を俺が喰ったから、同じだけのエネルギー出力で戦いあったらリリィが先にスタミナ切れを起こすのは道理だ。

 しかし、リリィは早くも自身の新たな能力を本能的に理解し、戦術を切り替えてきた。


「そうそう、ないならあるところから奪わなくっちゃぁなあ!」


 俺の拳撃から繰り出される魔力とエネルギーを防御しながら吸収し、自分の力へと変換し始めたのである。

 今、この瞬間をできるだけ長く楽しみたい俺としては願ったり叶ったりだ。早いところ今の俺如きとは互角に戦えるステージまでレベルアップしてもらわねば、世界を犠牲にした甲斐がない。


「よーし、いいぞ。その調子だ!」


 みるみるうちに強化されるリリィを見て、まるで我が子が育っていくときのような愛おしさを感じた。


 ああ、すばらしい。

 まさか、こんな展開になるなんて出会ったときには夢にも思わなかった。

 てっきりいつもの金魚の糞ぐらいに思っていたのに。


「クオオオオオッ!」


 まるっきり意味のない叫び声を上げながら、リリィが守勢を解いて、腕を振り上げた。

 その手に魔力を集中させて強化した爪撃を……いや、これは!

 ギリギリのところで気づいた俺は、代行分体を残して次元転移。大きく距離を取った。

 リリィの爪の軌跡に沿って次元が大きく裂ける。身代わりの俺も一緒に切り刻まれていた。


「今のは悠斗の次元破斬……あいつの魂を喰ってやがったか!」


 これで確認できただけでも強奪チートとソウルイーターか。さらに悠斗が持っていた技も全部使えるようになっていると考えて差し支えないだろう。

 もちろん、同じ技といっても威力が桁外れになってるが。


 どうやらリリィは次元破斬が俺に対しても有効な攻撃だと判断したらしく、本体の俺を追撃してきた。従来のリリィの戦い方の手数。そのすべてに悠斗の次元破斬をはるかに越えるスペックを付与するつもりだろう。


「けど、甘いな」

「にゃっ!?」


 その両手首を掴んで攻撃を止めると、リリィがあからさまに動揺していた。


「知ってたか。どんな攻撃も当たらなければどうということはないんだぜ?」


 鮫のように笑いながら、その体を思い切り引き寄せ頭突きを喰らわせる。

 鼻をつぶされ思いっきりたたらを踏むリリィの腹に蹴りを入れると、はるか彼方にまで吹っ飛んでいった。

 

「んー、やっぱり動きが素直過ぎるな」


 やはり戦闘経験の違いは大きいようだ。

 俺の場合、強くなる前からチートホルダーと戦って培ってきたキャリアがある。リリィの本能に従った野性的な攻撃も、無数の動物やモンスターを相手にしてきた俺には読めてしまう。

 もちろん今のリリィからはどんな予想外が飛び出すかわからないから油断はできないが。それが楽しみだから困る。


「お、次は否定魔法か」


 周囲の魔力の変化から、自分に使用された魔法を分析する。どうやら対象の存在をなかったことにできる悠斗第二の必殺技に頼ることにしたらしい。かなりの距離が開いたが互いの視界内だから否定魔法の射程は届いたということなのだろう。


「残念だけど、魔法は諦めとけ」


 問答無用でレジストすると否定魔法の効果が打ち消され、俺の周囲に光が散った。

 確かに異世界魔法はただエネルギーを消費するよりも強大な効果を及ぼせる。だが、魔法はレジストされれば効果が減退されてしまう。俺の場合レジストした魔法は問答無用で無効化できるので、俺の魔法抵抗力を抜けないなら無意味な行為だ。最低でも抵抗不可チートを持ってきてから、俺の次の防御手段の突破に挑戦してもらいたい。


「さて」

「にゃにゃっ!?」


 次元転移して目前に立ってやると、リリィが必死に飛び退いた。


「で、次は?」


 俺に催促されたリリィは四つん這いの姿勢を取り、うなり声を上げ始めた。その肉体が変化していく。


「お、いいねぇ……そういうのを待ってたんだよ」


 なんだっけ……えーと、アルカナイカとかいうやつに俺が株分けした変身能力だな。

 全身が金色の毛皮に包まれ、さらに巨大に。顔つきも完全に虎のような獣になった。

 俺が株分けしたアル……なんとかよりもはるかに強く、凛々しい姿だ。

 俺を睥睨できるほど大きくなったリリィが威嚇するように咆哮した。それだけで大地が裂け、天が稲妻を轟かせる。


「そう怖がるなよ。俺とお前は仲間みたいなもんなんだ。もっと……もっともっと仲良くしようぜ」


 我ながら本当に邪悪な笑い声をあげながら、魔力波動を解放していく。

 こちらの肉体の変化は一瞬だ。俺の体は途方もなく巨大な狼のような四足獣へと変貌を遂げていた。

 もともと悠斗たちに見せる予定だった破滅獣形態フェンリルスタイルである。もっとも、第一の封印を解いた状態で使うのは初めてだから、手加減できる保証はないが。


 って、リリィが脱兎のごとく逃げ出してるんですが、なぜに……。

 確かに大きさも十倍ぐらい違うし、どうやら本能的に勝ち目なしと理解してしまったか。


 仕方がない。

 もうひとつ、理解してもらおうか。

 俺を倒さない限り逃げ場などないのだと。


 おもむろに天を仰ぎ、視界に入った太陽に向かって大きく口を開き、そのエネルギーをすする。太陽が輝きを失うギリギリまで命の熱を拝借してから、リリィに向かって吐き出した。

 太陽のブレスは巨大なエネルギーのうねりとなって、俺たちの戦いのために作られた大地ごと粉みじんに吹き飛ばしたのだった。




「さぁて、どこ行ったかな……」


 破滅獣形態を解いてから、俺は砕け散りバラバラになった大地が浮かぶ空間をさまよいながら、獲物を探していた。

 当然、あのリリィなら再生ができるはずだ。もっと遊ばなきゃ、元が取れない。


「……そこか!」


 まだ見えないが、力の気配は限りなく小さくなっていた。

 俺から隠れるために弱ったフリをして身を隠し、チャンスを伺っているのだろう。

 そうはさせるか。お前にはもっともっと強くなってもらわなきゃいけないんだ……。


「すとーっぷ! そこまでだよサカハギくん!」


 そこに。

 嫌と言うほど聞いて絶対に忘れることができない声が響いた。

 自然と動きが止まり、聞こえた方を振り返る。


「お前は……」


 その姿を見間違えようがない。

 シルクハットに燕尾服。きらびやかな輝きを放つステッキ。


「クソ神ぃ! ここで会ったが一万二千年目!」


 視認した瞬間にまず殴り殺し、肉体を分解し、魂魄繊維に至るまで徹底的にいたぶり抜いた後、偏在する可能性分岐に至るまで二度と再生できぬよう破砕した。


「あいたたた。まったく、レフェリーを殴りつけたら選手の反則負けだよ。まあ殺したらそれ以前の問題だね。あはははは!」


 あっさりと別の代行分体ナウロンを出現させながら、クソ神が俺をあざ笑った。

 その後も何度も何度もクソ神をぶち殺しまくる。


「やめてよね。神の位が最高であることを除いてあらゆる分野で最弱たる、この僕が! 最強であるキミにかなう訳ないだろ!」

「どんな威張り方だ!」


 かつてのように滅びの痛みに喜びながら無邪気にはしゃぎ続けるクソ神を見て嫌気がさし手が止まった頃、ようやく再びクソ神が意味のある台詞を吐いた。


「やあやあサカハギくん。通報を聞きつけて駆けつけてみれば、案の定キミだったんだね。まあ、このレベルの破壊が何の前兆もなく発生したら、キミぐらいしか有り得ないとは思ってたけどね!」

「何の用で来やがった、テメェ!」

「言ったじゃないか! ここの神から通報があったんだよ。自分の可愛がってた作品が壊された挙げ句、管理していた世界まで滅ぼされたってね。そもそもこんなことになったら僕が動くしかないでしょ」


 まるで子供を諭す慈父のような口調が余計に勘に触る。いや、クソ神がすることならどんなことにだって理不尽に怒れる自信はあるが。


「それにしても自分で救った世界を結局自分で滅ぼしちゃったねぇ。あ、知ってたとは思うけど今回は別の可能性分岐から並行世界ができることはないよ。もともとキミがハザード=ディストリウスを滅ぼさなかったら、あの世界は存在しなかったんだしね。今回もハマってたからてっきりすぐに滅ぼすと思ったけど、キミにしちゃ結構もったほうかな。でも結局は遅いか早いかだけの問題だった。滅びるしか道はなかったってことだね。かわいそうに」


 これっぽっちも哀れみなど感じていないくせに。

 むしろひん曲がった性根がはっきりわかる笑みを浮かべていやがった。


「おっと、キミとじゃれ合いたいのはやまやまだけど、そろそろ仕事しないと怒られるから、もうやめてね」

 

 もう何度か殺してやろうかと魔力波動を励起れいきした頃には、既にクソ神を能力の対象に取ることはできなくなっていた。

 ちっ、時間を与えすぎたな。俺の結界をすり抜け、肉体の幻影だけ遺して別の世界の位相に逃げ込みやがった。これだと召喚と誓約に縛られた俺に手出しはできない。でも、俺相手にわざわざ世界の壁を張るってことは、本当に執行のために来たってのか?


「でも困ったね。他の何かならともかく、僕じゃキミを削除することはできないし。何かいい手はないものか」


 まあ、そうだよな。

 それができるなら、俺はとっくの昔に消されてしかるべきである。


「あ、そうだ! せっかくだからキミ、この世界の宇宙から出て行きなよ。そうすれば晴れてキミが言うのところのクズラッシュから抜け出して、別の世界に行けるでしょ」

「そういうわけにはいかねぇよ。俺には一度この異世界を復活させた責任がある」

「それが癇癪を起こさず今まで頑張ってた理由かい? キミにしちゃずいぶんと殊勝だね。いや、ある意味じゃあ今のキミらしいって言えるのかな」

「うるさい」


 クソ神の露骨な挑発にも不思議と冷静でいられた。

 自分にかけていた封印をいくつか解除して暴れたおかげか、あるいはクソ神がそこまで見越してサンドバッグになりにきたのか。なんだかんだでクズラッシュで溜まっていた鬱憤が晴れたのは確かだ。

 今となってはどっちでもいい。

 むしろ、俺が驚いたのは直後のクソ神の行動だった。


「すまなかったね」


 世界の壁の向こう側で、クソ神が突然頭を下げたのである。

 俺が知る限り、初めて見る光景だった。


「この数百年、キミに合わす顔がなくて雲隠れしてたことは謝る。アルとんのことは本当に残念だった。宇宙を管理する神として、心からお詫び申し上げるよ」

「……お前が謝るなんてな。思いもしなかったよ」


 もちろんクソ神のことだ。九割九分九厘、演技の可能性も高かったが……それでも頭を下げるような立場の存在じゃないことは、誰よりもよく知っていた。


「だがキミに世界を巡る運命を課したことは謝らない!」


 突然ガバッと頭を上げて謎のポーズを取り、笑いを取りに来るクソ神。ああ、むしろ逆に安心してしまう自分が心底嫌だ。


「ああ、それはいいよ。いずれ地球に戻ったら、テメェの本体を破壊して、それでチャラにしてやる。首を洗って待ってな!」

「あはは、楽しみに待ってるよ……」


 キュッとシルクハットを深くかぶり直しつつ、優雅に一礼し。

 今度こそクソ神はその姿を消し……。


「って、じゃなーい! なんで去ろうとしてるんだ僕は!」

「ちっ……」

「あっ、わざと仕向けたね! 雰囲気に流されやすいこの僕の習性を利用して!」


 さすがにバレたか。

 このままうやむやにできるかもと思ったんだが……。


「さすがに仕事をほっぽりだしてはいけないよ。各方面からお叱りを受けちゃう」

「仮にも至高神様がずいぶん腰が低いこって」

「内情知ってるくせに、そういうこと言うのやめてよね!」

「言っておくが、俺とリリィの戦いに口を挟もうってんなら、そいつはなしだぞ。久方ぶりにガチで殴り合っても死なない相手なんだ。そう簡単に……」

「えー、あー、うん。えっとね。とりあえず、リリィちゃんのことをもう一度落ち着いて見てみようか、サカハギくん」

「あぁん?」


 時空の地平の彼方に立つリリィの姿を改めて全能感覚で知覚する。


「そもそも僕とキミの会話に一度も割り込んて攻撃を仕掛けてこないこと、おかしいと思わなかったのかい」

「それを言うなら、せめてテメェの存在感を無視できるレベルにまで下げておけよ」


 憎まれ口を叩きつつも、俺もようやくクソ神が俺を止めた理由を理解し始めていた。


「おいおい……なんで崩壊しかかってるんだ、あいつ」


 まるで真っ白に燃え尽きたボクサーのように、完全に沈黙しているリリィ。その存在が少しずつ内側から破けていくように視えるが……。


「言うまでもないことだと思ったけどね。彼女はキミとは違ったってことさ」

「ああ……そういうことか」


 つまり、俺が一人で先走ってしまったということか。

 挙げ句、世界を崩壊させてちゃクソ神の一柱も駆けつけてくるってわけか……。


「あれ、意外と落胆してないね?」

「まあ、もともとが無理な話だしな」


 たぶん、リリィは俺やアルトリウスの近似体アポロキシメイト……限界がないのではなく、限りなく限界値が高い存在だったのだろう。

 どうも俺と相対し、限界を超えた状態で戦っていたようだ。あのまま放っておけば、やがて完全に消滅するだろう。


「じゃあな、リリィ。勝手に俺だけ楽しませてもらったよ」


 このまま消えていける彼女に俺は哀れみや申し訳なさよりも、羨ましさを感じていた。俺に追随し得る潜在性能を持ちながら、終わりを迎えることができるなんて、と。

 しかし。


「まあ、この宇宙については僕がなんとか元に戻しておくし、悠斗くんやリリィちゃんたちについてもあるべき姿にしておくからさ。ここは譲ってくれないかい?」

「……ま、そういうことなら仕方ないな」


 勝手に思いこんで粗相をしてしまったのは俺だし、俺にもメリットがある話だ。そもそも、今回のことがエヴァにバレたらどんな小言を言われるか気が気じゃない。今回の失態をなかったことにできるというなら、何の不都合があろうか。

 そしてどうもリリィ……いや、リリィちゃんは命拾いをするらしい。悠斗も結局、何事もなかったかのように異世界で正義を成し続けるのだろう。まあ、もう俺には関係のない話だが……良かったってことにしておくか。


「いいぜ。俺はこの異世界から出ていく」


 俺の承諾が引き金となったのか、俺の足下の空間に魔法陣が浮かび上がった。即座に召喚されないところを見ると、久しぶりに別の宇宙の異世界へと転送されるようだ。


「じゃあね、サカハギくん。僕の娘によろしくね」

「うっせー、とっとと死ね」


 別れの挨拶を交わした途端、俺の知覚領域からクソ神は姿を消した。


 さらばクズラッシュ。

 こんにちは新世界。

 誰かが喚ぶ限り、俺はすべてを破壊してやんよ。




 そのあと起きたことを簡潔に話しておこう。

 第一の封印を解除していた俺は、次に召喚された異世界に降り立った瞬間、世界を滅ぼしていた。

 何を言っているのかわからないと思うが、俺にも何が起きたか一瞬わからなかった。


 うっかりしていたのだが、今の俺は存在するだけで世界を滅ぼしてしまえるほどの力を解放している。ぶっちゃけ今の状態だとどんな宇宙も俺が召喚されるには容量キャパが足りないんだわ。


 なお、俺の封印リミッターはエヴァにしかかけられないため、封印を解除した事情を話すしかなく……はい、全部バレました。終わりです。誰か助けてください。それだけが俺の望みです。

 一応、今回はクソ神の過失だったということでエヴァ大先生が再度リミッターをかけてくださり、宇宙を時空修復してくださったので何とか丸く収まりました。


「二度とこのようなことがないようようにお願いします」

「はい、超気をつけます……」


 必死に猛省のポーズを取りながら、腰に手を当ててプンスカしているエヴァ大明神様を拝み倒す。


「しかし奇妙ですね。マスターが暴れるまで、お父様がその……リリィさんの存在に気づかなかったというのは」


 エヴァが不思議そうに顎に指を当てる。


「まあ、確かにな」


 普通に考えたら、あのクソ神がリリィに気づかなかったというのは不自然極まりない。俺を異世界放浪の旅という名の牢獄にブチ込んだのは俺の特性があったからだろうって普段からエヴァが言ってたように、あの男はイレギュラーには敏感なのだ。リリィにも俺と同じか、何かしらの対応をしていても不思議じゃないはずだが。


「まあ、あいつのことだから気づいてたけど放っておいたとかじゃねーの?」

「ううん、そうなんでしょうかね」


 実際、リリィが悠斗のハーレムメンバーになってたことも不思議っちゃ不思議なんだが……まあ、その辺も主人公補正なんだろうと納得するしかない。

 どっちみち結論が出ることではないので、エヴァもあっさりと考えるのをやめた。


「さて、マスター。こういうことがあった以上、しばらくは監督させてもらいますからね」

「嘘やん!?」


 俺のリアクションに魂まで凍りそうなジト目を送ってくるエヴァ。


「……いくらなんでも、その反応は傷つきますよ?」

「ああ、ごめん! 許して! 愛してますから!」


 その後、エヴァのゴキゲンを直すためにが邪悪な魔王討伐デートを企画したのは言うまでもない。

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