レンパリアの千人槍 5
法術を見た瞬間、レイツは丘を駆け下りていた。泥に足を取られて背を打つと、そのまま滑り降りた。泥水の溜まった丘の麓に膝をつき、腰の剣が無事である事を確認すると、無我夢中でレンパリア千人槍がいた場所を目指した。
横から気配を感じ、とっさに跳躍し、前に転がる。直ぐ後ろを
雨が敵味方の識別を困難にしている。個々に自前の武装で参戦している
前線の人が減り、天からそそぐ
「
槍にけつまずく。折れるはずがないと思っていたレンパリアの槍は、無残にひしゃげていた。
「
また何かにけつまずいた。無数の
「誰か!生きてる人は!?」
激しい雨音のせいで、声が響かない。目印となる流血も、雨粒に洗われて消えている。
(たしか
レンパリア千人槍の布陣場所を示す旗が、倒れかけたまま立っていた。その近くには、折れずに斜めに突き立ったままのレンパリアの槍があった。荒縄を巻かれたその柄には、人の手が同じ荒縄で結束されていた。
レイツは駆け寄った。
「
レンパリアの隊長は、最後まで槍から手を離してはいなかった。
「
レイツは、
「レイツか……」
「まだ戦いは終わってねえはずだ。何しにきた……?」
視界が利かずとも、耳には、まだあちこちで上がる騎獣たちの
「助けにきた……でも、どうすれば……」
「勇敢な奴だ……俺が
「そうだ。衛生兵の人たちを……」
「レイツ!」
「兄貴には言ってあるんだ。俺が死んだら、遺産はレイツにやってくれってな……」
「
「こんな時だから話してるんだ!……レイツ、お前はバルサルクになりてえんだろ?なら、少しは学費の足しに」
突然、地面が揺らいだ。地表が吸いきれずにいる雨水が、跳ね上がった。
「来やがったか……」
心臓が高鳴る。レイツは、
二騎の
代わりに、一度崩れ出した陣営が再集結するのを防ぐ為に、残敵を
レイツが振り返ったそこには、3メートル近い体高の
「レイツ、走れ!」
レイツは、震えながら立ち上がった。ただでさえ
逃げなければ殺される。でも、まだ周囲には、生きている仲間が倒れているかも知れない。
獣王公は、
「
冷たい雨に打たれ続けているのに、それに
「
レイツは、獣王公に長柄の斧を突きつけられると、震える手で腰から剣を外した。
「む……」
雨のせいで、後方の陣の様子はよく分からなかったが、立ち上がり、反対側に首を巡らした時、思わず身を
そう遠くない所に、獣王公がいたのだ。
なぜか獣王公は、動こうとしなかった。何か足元……
そこにあったのは、極めて奇妙な光景だった。
黒い重甲冑で身を固め、長柄の
バルサルクは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます