第11話 運命の出会い ピアーチェ姫

「勇者様?」

 俺が揉めていることにアリカが気づき、続いてカリンとシオンもこっちへやってくる。マズい、非常事態だ。

「あんた何やって……アリエッタ様!? どうしてこのような場所に」

 カリンとシオンはペチャパイ女を見るなり慌てて膝を付き、名を聞いたアリカも頭を下げた。曰くこいつは水の精霊らしい。世界を設定し直す時にこいつらの信仰度合いは下げていたが、この大陸では根強い信仰が残っていたようだ。打ち捨てられるくらいにしておけばよかった。


「し、知らないよ。勝手に言いがかりをつけられているんだ」

「まだそんなことを! 早く彼らを元に戻しなさい」

 うわ、最悪だ。せっかくいい気分で楽しんでいたのに。小学生の頃、気の強い女教師に怒られていた時のようだ。みんなだって虫を潰して遊んでいたのに、俺だけ何故か命の尊さがどうとか、知ったこっちゃない話を延々とされた。ああ、嫌な思い出だ。


「アリエッタ、何事ですか」

 移動魔法で逃げようにも仲間に説明ができず、かといって素直に魔族に変えた盗賊共を元に戻して、ペチャパイ女に従うのも嫌だ。口を閉ざしじっと地面に視線を落とすしか出来なかった俺に、助け舟がやってきた。


 長い波打つ金髪に、どこか憂いを秘めた潤んだ瞳、体を優しく包み込むような真っ白なドレス、天使のようなふんわりとした表情。この子だ! 俺は直感した。これは運命の出会いだ、俺はこの子が欲しい。愛らしくて清楚で可憐で無垢な少女に俺の初めてをぶっ込みたい! 胸は平たいけど全然OK! 小さい方が感度良いって聞くしな。


「ピアーチェ姫。お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 ペチャパイ女が頭を下げて意識が逸れた隙に時間停止魔法を使い「疑いが晴れていることにして」と願った。


「この勇者エルメスが……ええと、民を脅かす盗賊を討伐し、盗まれたものを取り戻したのです」

 魔法を解除すると瞬時に願いが叶い、勇者一行は討伐クエストの成功を精霊から感謝されている。ということになっていた。ふう、危ない危ない。来てくれなかったら俺の地位が危うくなるところだった。


 それにしても、あの子はピアーチェ姫というのか。世界を再設定する時にチラッと見た情報だと、神の娘だったかな確か。眠りについた神に代わり世界を見守っているとかなんとか。とすると父親は今や俺の手の中、願い一つで俺のものに出来るってことか。俺は迷うこと無く魅了スキルを使用した。


「どうかされましたか?」

 なんと効いていない。マジか、ちょっとでも接点があれば発動するのに。

「い、いえ。姫がお美しいので、見入ってしまいました」

 内心チッと舌を打ちながら、顔を背けた。おもしれー女じゃん、即落ちするアリカやシオンとは比べようもないほど魅力的だ。落ちないSSRほど射幸心を煽るものはない、絶対姫を手に入れてやりたくなってきた。


「それでは参りましょう姫様。勇者たちよ、貴方達の行く先に水の加護を」

 ペチャパイ女はそれっぽいことを言って姫と護衛を連れて街へ戻っていった。ようやく緊張が解けて、安堵のため息が出た。


 ここまで目的もさして無いまま流されてきたわけだが、ようやく俺の人生にも目標が持てた。つまらない冒険なんてさっさと終わらせて、俺はあの子を手に入れる!

 異世界といえば目指すものは金! 地位!! 女!!! ラノベを100冊読んだら95冊にそうはっきり書いてある。そして俺は勇者、魔王を倒せば金と地位は飽きるほど手に入る。つまり、世界に平和をもたらして全部手に入れようと、そういうわけだ。世界を守る使命を持つ神の娘が、英雄を無視するわけにはいかないはずだろうから。


 俺は魅了スキルを発動しアリカたちを抵抗できないくらいメロメロにすると、上書きオーバーライトでステータスとスキルを最大値に書き換えた。魔法も火力が高いものや回復量が大きいものに変えた。これで魔族が襲いかかってきても、安全に戦える。装備はその辺の石や草を適当に取ってきて、創造で守備力の高いものに作り変えた。スキルレベルも上がってきたので、頑張れば石を金に変えられるくらいになっている。


 像に願って魔王城の場所と戦力、玉座を把握して、攻める準備は万端だ。

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