お隣さんとゲーム交流
翌日の朝、自分の部屋に籠りながらスマホを使って寝転んでいると扉が壊れる勢いで思いっきり開かれてミオ姉が入って来た。
「ねえねえ!今日は何したい?」
「今日は家でゆっくりしていたいですね」
「分かった!デートだね!」
「ねえ?俺の話聞いてた?家で休みたいって言った訳、分かる?」
若干興奮してるミオ姉は留まる事を知らずにそのまま無視して話を続ける。いや本人も一応は分かってるだろうとは思うが。
「お家デートでしょ?それで御両親に挨拶するの!」
「いやウチ両親一緒じゃん。ってそうじゃなくて、そもそもなんで挨拶?」
「ん?だから事後報告」
「ちょっと待った、まだ俺何もしてないんだけど」
よく分からないやり取りに疑問を感じながら話をしていくが、なんだか冷や汗らしきものが溢れていく。
「うん。だから今からするの」
「いや、何を?」
「既成事実」
その瞬間、俺の思考は一瞬だけ停止した。
「いや!ヤメロォ!俺は平和に暮らしていたいんだ!そんなことをしたら将来がトン↓デモ↑ナイ事になる!」
「大丈夫!全て私に任せて!」
「危険過ぎて無理です!」
「必ず最高の快楽に颯太を導くわ!」
「そっちの話じゃねぇよ!」
何か怪しいとは思っていたけど、まさか家の中で貞操の危機を感じる事になるとは思わなかったのでついリアクションが大きくなってしまう。
「あ、もちろんに関しても私が外に出しても全く恥じる事の無いヒモにしてあげるからね!」
「いやヒモの時点でそれはもう立派な恥なんですが!」
「ウチに婚姻届なんて壁ないから。名前一緒だし」
「なっ!まさか身内の近さがこんな所で仇になるとは」
「ふっふっふ〜、勘弁しなさい」
まさかこんな事で逃げ道を失っていくと思わずいたのでかなり声が焦ったものに変化していくが同時にここで名案を思い付く。
「あっ、そうだ。広太と遊ぶ用事があったんだったわ」
「なっ!それはズルい!ダメだよ!」
「なんでだよ、弟に構ってあげてる優しいお兄ちゃんの構図だぞ」
「丁度良い口実があっただけじゃん!」
ちっ、やっぱりそりゃあバレてらぁ。
予想外の逃げ道があった事にミオ姉は慌ててしまうが考えてみれば最初から構ってあげる道理が無いので布団からそろうと出てドアに向かう。
「今気付いたけど別にミオ姉に構ってる理由別に無かったわ。まっ、そういう事で」
「あ、待って!待っててば〜!」
腰にしがみ付くミオ姉をそのまま放置しながら隣にある広太の部屋の扉を開く。
「おーい、広太。遊びに来たぞ〜」
「あ!フウ兄!と………美織お姉様。こんちには、ご無沙汰しています」
それまで元気だった広太が腰に満足顔でしがみつくミオ姉を見て突如として敬語に変わったのに明らかな違和感を覚える。
「どした広太?」
「颯太兄さん。ヤッパリキョウハイイヤ」
「広太偉い!じゃあ、颯太は責任持って私が預かるからね」
「美織お姉様、颯太兄さんのこと大好きだもんね。ならしょうがない。ショウガナイ」
変になってる弟の原因を突き止める為、仕方なく嫌々ながらミオ姉に視線を合わせる。
「オイ、ちょっとそこの姐さんよ?アンタ広太に一体何をしたのかな?」
「べ、別に?何もしてないよ?」
じっと見つめれば白状するかと思ったが意外に計画的なようだ。
「じゃあなんで広太の目が狂ってんだよ。グルグルだよ?螺旋入ってるよ?片言だったよアイツ?」
「酔ってるんじゃないかな?」
「な訳あるか!ったく、いつの間に大事な弟に酷い事しやがって」
やはり原因はミオ姉だったらしく、少し怒ると申し訳なさそうな悲しそうな顔をする。
「だって颯太。最近、全然構ってくれないから」
それで弟にこんな事すんのか、もはや末期症状だな。というか
「なあ、俺の記憶が正しければミオ姉にはつい昨日構ってやった筈なんだけど?」
「あんなの違うもん!私が求めてるのはセッもっと昔みたいに『ボクお姉ちゃん大好きー!』とか『大きくなったらお姉ちゃんと結婚する!』とか言って抱き付いて来てよ!」
「本音がダダ漏れな上に俺は昔にそんなことは一言でも言ってない」
「ちっ、計画の進行はまだまだね」
「計画って何!?怖いよ!」
たまに本気で詰めに来てる時があって恐怖を覚えてしまうが本当にどうしようもない時は兄に助けて貰うとしようと決意した。
「まあまあそんな事より、何がしたい?」
「そんな事どころじゃねぇだろ」
でも怪しいのはいつもの事なのでもはや放って置く他ないのも事実。仕方がないのでこれからする事を言っておく。
「あ、新シーズン入ったから今期のアニメそろそろ消化したいんだけど」
「じゃあ、一緒に見よ?」
「うーん?どうしてそうなった?嫌だよ俺アニメは一人で見たい派だし」
「ナニィィ!?そんなバカなぁ!嘘だぁぁあ!」
「うるさいZE☆」
「まだ私のバトルフェイズは終了してないぜ!」
「おいやめろ」
「まだまだぁ!」
★
結論から言うと、断れなかった。なんだかんだ言ってミオ姉には甘いところがあるのかもしれない。
「颯太とアニメ鑑賞〜」
今もそういいながら後ろから俺に抱き付いて来てるミオ姉を俺は拒まないでそのまま放置してリモコンを弄っている。
ミオ姉は女の子らしい良い香りを漂わせているのは言わずもがな、肌も白くサラサラなので少し興味本位で顔の頬に触ってみる。
するとミオ姉は急に変な声を出しながら俺との距離を取る。
「だ、ダメだよ颯太!そういうのはちゃんと手順を踏んでからじゃないと!」
「アンタさっき俺にセクハラガッツリとしてたくせに何言ってんだよ!?」
「自分から攻めるのと颯太から攻められるのは違うの!」
「何だそりゃ」
恥ずかしくなったのか隣に座るという形に落ち着き、新しいアニメを見てく中で少しだけ心境を吐露した。
「にしても、なんか複雑な気分だよ。ミオ姉と一緒にアニメ見るなんて」
「そう?私は嬉しいよ?」
「いや女子と一緒にこういうのを見るってのがいかんせんなんか抵抗が、な?」
「エヘヘ、彼女扱いされちゃった」
「そこまでは言ってないんだけどなー」
やがてアニメを二、三本見た後に一話切りはしないでクソアニメ認定してお母さんに呼ばれたので昼ご飯を食べにリビングに降りていく。
テーブルに座ると後ろからお父さんが後ろを通って自分の席に座る。
「あ、お父さん居たのか」
「颯太、頼むからお父さんの存在を消さないでくれ」
このorz ポーズでいるのが俺の父親の神近従吾である。
「いや普通は平日って仕事に行くじゃん?有給とかもこんなどうでもいい日に取ることはないし………何してんのニートなの?」
その疑問に対する答えは当然のように横に座るミオ姉から飛んできた。ちなみにそこは広太の席である。
「違うわよ、34歳以上の大人だからパラサイトシングルよ」
「じゃあスネップでいんじゃね?」
「ぐはっ!違う!在宅勤務だよ!颯太も知ってるだろ!」
メンタルがボロボロにされたお父さんは俺に訴えかけてくる。精神攻撃を食らった格好もしっかりと決めて。
「ゴメンゴメン、別にそんなつもりはなかったんだ」
「しっかし、随分と名称があるんだなぁ」
何事も無かったように立ち上がると自分には関係ないものと安心して父は席に座った。
「まあね、でも一番可哀想な名称はやっぱりLITSだな」
「リッツ?何それ?」
「英語でLiving Together Single ってまんまそのまんまイジメみたいな名前の名称だよ」
「まるで昔のお父さんみたいだね」
「言っとくけど、今まで話やつ全部お父さん該当してないからな?」
ウチの家では最近、お父さん弄りが流行っている。原因はお父さんからのお母さんへの愛情不足らしい。こちらとしては良い迷惑である。
「大体引きこもりの定義って何なんだよ」
「それなら確か厚生労働省が明確に定めてたわよ」
「え?何してんのさ厚生労働省」
ミオ姉はスマホでインターネットから新しいページを立ち上げると厚生労働省の公式サイトを俺に見せながらその内容を読み聞かせてくれた。
「仕事や学校に行かずに且つ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態で時々は買い物などで外出することもあるという場合も引きこもりに含めるんだってさ」
「俺、なんかなりそうで怖いわ」
「大丈夫だって、私が貰うから」
「だからそれはヒモだってば」
少し遅めの食事が始まると、お父さんがツマミのネタのように俺の話を聞いてくる。
「そういや、颯太は新しく高校始まったけどどうだ?上手くやっていけそうか?」
「大丈夫!任せてお父さん!颯太の新生活を邪魔する奴は全て私が消すわ!」
「消すなよ、問題になるだろ」
「おお!それは安心だ!」
「親父もノリノリ!?まだ初日だからよくわかんないよ。もう少し様子見ないと」
「そうか。まあ、颯太の事を脅かす奴がいたら全て俺が撃☆破!しとくから」
「もうこの家族イヤァ」
確かに邪魔して、脅かしてる奴なら早速今日居たけども。あいつとはもう関わる事はないだろう。
昼食も食べ終わり、お母さんの片付けの手伝いをしていると、ふと家のインターホンが鳴る。
『k』
なんか今一瞬だけでも喋ってっぽい声が聞こえなくなった。そこにはご近所さんが映っていたような気がする。
「なあ、今間違いじゃなければ知り合いが写ってたと思うんですけど?」
「ヤダナー、間違いピンポンだよー」
「間違いピンポンって何!?電話ならまだしもそれはあり得ないでしょ!まだピンポンダッシュの方が信用出来るよ」
「ヤダナー、全くお姉さんはうっかりさんですねー」
「あ"?」
ミオ姉が物凄い凶悪な顔をしながら向いた先を見ると、ものの見事に俺の知り合いが。
「おま、どっから入って来た!」
「え?普通に玄関だよ?」
「え?普通に玄関閉めてた筈なんだけど」
「愛鍵だよ?私と颯太のね」
「合い鍵のニュアンスが違う気がするんですけど」
そう、コイツは俺の幼馴染的なポジションの桜木美奈である。正確には元幼馴染といった所か。
小学校高学年くらいの頃まではガッツリ関わっていたのだが、それ以降は引っ越して殆ど顔を合わせる事は無くなったのだが最近になってからまたこっちに戻ってきてから関わりを持つようになった相手である。
「オイ、その鍵寄越せ」
「え?嫌ですよ?」
「殺す」
「いやー、怖いー」
身内から見てもあまりに怖すぎるそのミオ姉から逃げてワザとらしく俺の背中に上手く隠れる美奈。
「コイツ!?」
俺の後ろにいる美奈だけに綺麗に殺気をぶつけてくるミオ姉。天才かよ、そして俺には笑顔とか秀才かよ。
「なんでいんだよ帰れや」
「まあまあ、なんか用事があったから来たんだろ?」
そこに最早棒人間のレベルの存在感と化していた兄が来て周りを落ち着かせると、美奈は目的を話してくる。
「今日は、颯太君に会いに来たの」
「ごめん、やっぱ帰ってくんない?」
ここだけの話、兄は美奈の事が好きな節がある。だから俺目的だと速攻で落ち込む。なので黙って帰ろうとする美奈を俺は慌てて止めに入る。
ここまでしてまでの作戦か、上手いな。してやられたよ。
「分かった。分かったよ、とりあえず話は聞くから。何しに来たの?」
「デートのお誘い?」
「ゴメン、録画して番組消化しないといけないんだ」
「何でそれに負けるの私!」
「いやー、何でっても面倒だしな」
確かに意地悪過ぎたかもしれない。今度外出た時にでも誘っておこう。
「ハッ!甘いな小娘!」
「それ、あなたも充分な小娘なんじゃないですかね?私と一歳しか変わんないし」
「颯太は忙しいの。これからお姉ちゃんと一緒に一生いないといけないの」
「勝手に人生のスケジュール決めないでくれないかなー?」
すると上手くいかないのか、美奈は拗ねるようにグチグチと喋り出す。
「折角颯太君と一緒の高校入ったのに、クラスも離れちゃったし」
「お前、俺と同じ学校だったの!?マジでかよ、やめとけやめとけ?てか俺なんも知らねぇな」
「正直、自分が行きたい高校はなかったし颯太と一緒の学校なら良いかなって思って」
「マジかー」
なんていうか、そんな為に一緒になったと思うと何か居た堪れないので俺は美奈に少しだけ優しくなる。
「今日は多分、俺は家に居るから大丈夫だと思うよ。外出るの面倒だし」
「じゃあ何して遊ぶ?」
食い掛かるように聞いてくる美奈に対して俺は自慢気に答える。
「そりゃあ勿論、ゲームだろ」
「うんわかったゲームだね!じゃあ………オイ、そこの。参加しろ」
ミオ姉が服従レベルで速攻俺に従うのに対して、ミオ姉は実の兄にそこのって。
「お前仮にも兄だぞ。言い方がもはや他人じゃねぇか。まあ暇だから良いけどさ」
「兄さん、あんたそれでいいのか?」
「奴に人権などない」
「あるよ!」
ギャアギャアと言い合ってる中で隙を見たのか今度は美奈が俺に仕掛けてくる。
「相変わらず、仲良いですね。私ももっと颯太君と仲良くしないと」
「何してんだお前」
それまで兄さんと話をしてたミオ姉が一瞬で美奈の方に詰め寄る。
「忙しいなミオ姉」
「じゃあ慰めて」
★
相変わらずのリビングで据え置き型のゲームを使って遊ぶ事になった俺達はソファーの上に座っていた。
親父?親父は部屋というなの巣に帰っていったよ。
「じゃあ新作ゲームをすんのもアレだと思ったからここは人気のゲームをやろうかなと」
「じゃあ、やりますか」
俺たちが遊ぶ事になったこのゲームは昔のバージョンの某レースゲーム。ルールは皆さんが御存知なので敢えて伏せておこう。
して、ワンゲームプレイしてその結果だいぶカオスな事になった。
「よっしゃあ!一位だぜ!」
「ほんとCPUが良い迷惑だろアレ」
「チッ、潰せなかった」
「コレそういうゲームじゃねぇから」
「颯太君とゴールインしたかなったなー」
「あ"ぁん?」
兄が一位ではあったのだが、一位と二位の差がなんと三十秒以上もあり、その原因は全てミオ姉が起こした妨害である。煽り運転でも言ってしまえば全てが片付く。
「なあ早く次のステージ行こうぜ?」
「もう疲れた。精神的に保たない」
「じゃあ次は颯太以外の奴は全員潰して回るから」
「いやそういう問題じゃねぇから。まあいいか、じゃあ次始めるぞー」
カウンドダウンが始まりレースが始まると早速ミオ姉の半端ない妨害が始まり、そして画面が急に黒くなった。
「あーあ、処理落ちしたよ」
「なんてこった!折角一位だったのに」
「姉さん一体何したのさ?」
「いや何も?」
「その割にはあなためちゃくちゃ手動かしてたよね?」
するとそれまで落ち着いていた美奈が苛立ち始め。
「あなたは、いっつもいっつも邪魔ばっかりして今日という今日は許さないわ!」
「あんたが邪魔してんでしょうが!」
「もうアッタマきた!お淑やかなんてドブに捨ててやるわ!」
「言ってなさいメスガキ!颯太には指一本触れさせやしないわ!」
「さっき秘密で思いっきり抱きつきましたぁー!」
嘘である。
「この、やろっ!」
「女の子やぞ」
「さて部屋に戻って新しく出たゲームでもするか」
胡座から立ち上がり、ゲーム片付けをしてから部屋に戻っていく。
後ろでは凄い言い争いが起こっていたが、すぐに部屋でゲームをしていた俺が巻き込まれた事はもはや言うまでもなかった。
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