第237話 設定資料 異世界チート知識で領地経営しましょうの世界 騎士階級
本稿は本編ではありません。
今回は本作における「騎士」について補足解説を行っていきたいと思います。
毎度のことながら本編内でやれよってお話なんですが、本作はエリックと江梨香の視点で進行する性質上、細かく解説するのが作品の流れ的に難しいです。
申し訳ございません。
あと、騎士ってめっちゃややこしい存在ですので、ここでその設定を確定しようと考えた次第でございます。
それではスタート。
・騎士階級ってなに?
普通「騎士」と言えば、馬に乗って戦う戦士の事ですが、本作においては明確に身分階級の一つとなっております。
ちなみに王国における階級は上から順に
・王家
・貴族
・騎士
・平民
・国内の外国人
・奴隷
と、明確な線引きがなされており、階級が上がると権利(権力ではない)が強くなっていきます。平民までが王国の市民権を持っています。
この階級制度は、王国が都市国家だったころに施行していた税制の名残です。
王家を除いて上から順に高額納税者となります。また戦争になった時の役割も表しています。
かつての王国では、王様が総大将で貴族が指揮官。騎士は騎兵。平民は歩兵の役割が与えられていました。
騎士階級の人間は平民よりも資産があるので、戦いになったら手間暇がかかる馬を準備しなければなりませんでした。
その後王国が巨大化するにつれて、都市国家から封建社会へと舵を切った結果、様々な種類の騎士が現れることとなります。
ここからは本作の登場人物を例に解説していきたいと思います。
・エリックの場合
いわゆる封建社会における騎士階級の典型例です。
王国から封土と呼ばれる領地が与えられます。
封土を与えられた騎士は、所有権と統治権と継承権が認められ、その見返りに軍務や各種雑役につくことが義務付けられます。
日本風に言えば「御恩と奉公」の関係の軍人騎士です。
全ての騎士は名目上王家直属ですが、エリックの場合はレキテーヌ侯爵を介して王家に奉公する形となりますので、王家から直接命令が来ることは"基本的には"ありません。
千人長のダンボワーズ卿や、ヘシオドス家のイスマイル卿も同様の分類となります。
・江梨香の場合
正式に叙任された騎士ですが、アルカディーナの称号を持っている為、王家と教会の両方に所属する立ち位置です。
エリックと違い、王家や将軍様の命令だけではなく、教会の言う事も聞かなけねばなりません。
ただ、教会は江梨香に対する軍事指揮権や封土への統治権を保持しておりませんので、教会の意向で戦争に駆り出されたり、税金を納めろとか言われる心配はありません。
要請ぐらいはあると思いますが命令はありません。その他の雑役は追々。修道会を作れってのも雑役の一種です。
江梨香への軍事指揮権は、彼女が所属する第五軍団 軍団長である将軍様が有しています。それも交渉により、彼女にとって有利な条件で妥結されており、かなり特殊な立場を享受しています。
それ以外はエリックと同等の権利と義務を有しております。
第一章に登場した神聖騎士団「神々の恩寵により守られし騎士の集い」は、将軍様の命令ではなく教会の命令によって動く軍事組織になります。
こちらは完全に教会所属の騎士たちです。
・コルネリアの場合
王家直属「ガーター騎士団」の騎士ですので、王家から直接命令が下ってきます。
この騎士団は魔法使いだけで構成された特殊な騎士団です。魔法の才能を生かして王国に仕えます。
封土は無く、毎年二回(春と秋)に分けて給金が支払われるサラリーマン型の騎士です。
エリックと同時期に叙任された、ワルドーナ・エメリッヒ百人長もコルネリアと同じサラリー制の騎士になります。
コルネリアは北部戦役では第五軍団の指揮下で戦いましたが、本来の指揮権は王家にあります。
北部戦役には「義によって助太刀致す」って感じで参加いたしました。これは騎士団の規約的にも違反性はない行動です。
彼女の活躍は第五軍団を通して王家にも報告が上がっていますので、何かしらの褒美をもらっています。
・アランの場合
元は王家直属の独立騎士。
アランの実家であるトリエステル家はセンプローズ一門の一角を占めていますが、主家であるアスティー家によって推挙叙任された家ではなく、元々は独立した騎士階級の家柄でした。
封土もセンプローズ一門を介して与えられたものではなく、先祖代々領有している自前の領地です。彼のご先祖様がアスティー家に臣従したため、今の立場に居ます。
同僚のオルヴェーク卿も同じです。
この人の場合は、「セルドア・オルヴェーク・アナイケ」がフルネームでして、一門の名前であるセンプローズすら名乗っていません。ですがセンプローズ一門のクリエンティスで、アナイケ一門のクリエンティスではありません。
ややこしや。
アスティー家との地縁血縁関係が無い為、一門の中ではやや外様扱いされる立場です。
ただし、自力があるので侮れない存在です。
この人たちは、日本の戦国時代で例えるのであれば地方の「国人領主」、もしくは畿内の「寄子」と言った立場の家でしょう。
毛利元就とか家康とかは独立した領主ですが、守護職を持つ大内家や今川家に臣従していました。
・アスティー家の場合
元は王国に隣接する地方豪族。
将軍様や若殿のアスティー家は、元々王国の外縁部に居住していた地方豪族が発祥です。
その昔、勢力拡大政策を実施していた王国の誘いを受けて臣従し、騎士の位を与えられました。
分類上はトリエステル家に似た独立騎士という扱いですが、実力が違いすぎます。この家は複数の村や町を支配する、地方の独立勢力でした。
それだけの実力がありますので、臣従してしばらくした頃に大きな武功を上げ、早々に貴族階級に昇格しています。
貴族階級への昇格時に、王国で断絶した名門一族「センプローズ」の門地を与えられました。
日本風に言えば「入り苗字」ってやつです。銀英伝風に言えば、ローエングラム家の名跡を継いだラインハルトと同じ境遇です。
将軍様は王国外縁部出身の子孫ですので、王国の貴族社会では田舎の成り上がり者扱いを受けています。
・ナセルの場合
オルレアーノの参事官を務めているナセル卿は官僚型の騎士です。
封土どころか軍務に就くことすらありません。ホワイトカラー騎士。デスクワーク・オンリーのお仕事です。
エリックのような封建騎士とは真逆の近世タイプの騎士になります。収入はコルネリア同様にサラリー制。
彼らは王都やオルレアーノといった都市部で、行政部門を担当しています。
・お金で騎士の位を買った場合
騎士の家の養子になって騎士階級に入り込む方法です。
生活が苦しい騎士の家ではお金と引き換えに、平民出身の人物を自家の跡取りとすることが見受けられます。第一章で将軍様がチラッと話していました。
王国の法律の隙間を狙った手法です。黒よりのグレーゾーンと言ったところでしょうか。養子が必要な場合、普通は同じ騎士階級から貰いますんで。
外国人の養子は完全にアウト。ただ王国は多民族国家ですので、どこからが外国人かの線引きはこれまた微妙。
確か勝海舟のお爺さんは旗本株を買って武士になったはずです。幕府は見て見ぬふりをしていたとされています。
この手法で騎士の位を手にした人物は、騎士社会の中では馬鹿にされがちなので、江梨香は騎士の位を金で買う作戦を放棄しました。
・騎士階級ではないけれど、それに準ずる力と権利を持った人たち
ドーリア商会のドーリア一族のような、都市部のブルジョワ階級がここに当てはまります。
封建社会における身分制度上においては騎士階級ではありませんが、高額納税者ですので王国の古い序列で言えば騎士階級になります。
その為、平民とは一線を画した扱いを受けます。場合によっては騎士を飛び越えて貴族階級に近い人もいます。
異世界と言えども、お金の力は絶大。
軍団兵を満期(25年)まで務めた百人長も、騎士ではありませんが騎士階級に準ずる敬意を受けます。
エリックの父ブレグや、将軍様から派遣されたバルテンがここに該当します。
この人たちは地方の行政職が優先的にあてがわれます。
彼らの親族から本当の騎士階級に昇進する人は多いです。エリックの騎士への叙任は、王国での王道の昇進パターンでした。
・没落騎士
何らかの理由で、職や封土などの経済基盤を失った騎士です。
その後の選択肢は、帰農したり傭兵になったり役人になったり、どこかの貴族や騎士の家に仕官したりと様々。
知的水準が比較的高いので、職業選択の自由度も高い傾向にあります。
経済的基盤を回復する事が出来れば、元の地位に戻れることもありますし、そのまま消えてなくなることもあります。
江梨香の領地の住人である メルダー・モンテューニュ・アクアロイナ なんかはその典型例です。
・叙任の方法
平民階級の人間が騎士になるためには、王家か爵位を持った上級貴族からの推薦がなくてはなりません。
エリックや江梨香の場合は、レキテーヌ侯爵たる将軍様が、王都の紋章局(人事局)に推薦状を書き、紋章局長官が王様の代わりに決裁して騎士になりました。
推薦されると、よほどのことが無い限り認可されます。たまに揉める。
中国の九品官人法に近いシステムです。
・騎士になる方法
本編でエリックも言っとりましたが、一番手っ取り早いのは、軍団兵(志願制)になって武功を上げることです。
王国の上級貴族は軍団長を務めていることが多いので、彼らの配下になって活躍すれば道が開けます。命がけですけど。
実際にエリックと江梨香はこの方法で騎士となりました。
王国では共同体のために血を流せる人が優遇されます。
もう一つの道は、魔法、医療、建築、弁護、財産管理のような専門職で、抜群の功績を上げるて取り立ててもらう方法です。こっちはハードルが高めです。
評判の名医とかになって、偉い人の病気を治せば叙任されたりします。
コルネリアやナセルが通ったのが、この道です。
・騎士の収入
①封土を貰って自給自足。
②サラリー貰って生活。
③称号だけだよ。自分で稼いでね。
この三種類です。
・騎士の位の相続
封土を授かっている騎士には、騎士の位と封土の継承先を決める権利があります。普通は子供。
封土が無い場合は、ケース・バイ・ケース。
英国の「サー」や「レディ」の称号の様に、一代限りの場合もあります。
コルネリアやナセルの様に、特殊な技能で騎士の位を授かっている場合の相続は難しいのが現状。
この人たちは、今のうちに騎士階級の人と結婚すれば、配偶者側で権利を残せるでしょう。養子でも可。実際、跡取りのいない騎士家への養子の供給先としても優秀です。
コルネリアにお見合いの話がたくさん舞い込むのも、彼女の実力と立場が優良物件のためです。
以上。
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