第6話 たからの しまへ!

あさになったら いちばんに ふねに クレイが やってきた。


「船出の準備をさせて頂きに上がりました、キャプテン・ジャヌアリー」


ひくく あたまを さげる クレイに おかしらは ただ めを まるくした。


「え、ちょ、待って! うちの船はまだ荷の依頼は……」

「ご依頼は、あちらの紳士より」


そういって クレイが みぎてで さししめした その さきには。


「おじいさん!」

「ギュート公!?」


しつじさんに つきそわれて くるまいすで おじいさんが! 


ぼくが かけよると おじいさんは めをほそめて ぼくの あたまを なでてくれた。ぼくは くすぐったい きもちになって きゅっと めをとじて えへへと わらった。


おじいさんの かたわらには いくつもの タルや きばこや ニワトリたち。おかしらは おじいさんに あゆみよると たくさんの にもつに めを やった。


「ギュート公、これは」

「何、これくらいの支度はさせてくれ。貴公らの旅に、良き風が吹くことを」

「ありがとう おじいさん!」


ぼくが おじいさんに だきつこうと したら だれかに くびねっこを つかまれた。ふりかえれば オーガストまでもが ふねを おりてきていた。


「オーガスト はなして。ぼく おじいさんに ぎゅって したい」

「禁止」


オーガストは ひとことだけいうと ぼくを おしのけて おじいさんの まえに でた。そうして しんけんな めで おじいさんに たずねた。


「グランドパイレーツ・ギュート。貴方はひょっとしたら、『リドワーンの冠』を手にしたことがあるのでは?」


その ことばに おかしらが はじかれたように ふりかえる。けれど おじいさんは しずかに ほほえむ だけだった。


「ひとつだけ願いが叶うという伝説の宝……貴方が狙わない訳がない」

「昔の話だ」


おじいさんの へんとうに オーガストが ごくりと つばを のんだ。


「それならば何故、冠がここに、貴方の手に無い?」


おじいさんは ふっと めをほそめて とおく うみを みつめた。しおかぜが ぼくらの かみを ゆらして すぎる。そうして やっと おじいさんは ひとこと こう こたえた。


「……あの冠を手にした者が願うのは、ただひとつだ」

「ひとつ?」

「貴公にもわかる。あの島に辿り着けたのなら、な」


そういって いみありげに おじいさんが わらうと オーガストも それいじょう きくことは できなかった。




「荷積み完了!」

「了解、出航の準備するよ!」


ナナイの ほうこくに こたえて おかしらは くるり クレイに むきなおった。

かぜに ながい かみが なびく。


「……じゃあね」

「お気をつけて」


おかしらは うなずくと せいいっぱい げんきな かおをして わらった。


「今度来る時はお宝いっぱい積んで来るからね! 楽しみにしてて!」


クレイは おかしらの てをとって てのこうに キスすると ふわり ほほえんだ。


「私が最も望む宝はジャヌアリー、貴女の無事な帰還です」


とたんに おかしらが リンゴみたいに まっかになる。みんなで それを ふねの うえから みていたんだけど おかしらが こしから ピストルを ひきぬいたから ミストも マイクも あわてて くちぶえを ふくのを やめた。



おかしらは ふねに あがると かんぱんに あつまった ぜんいんを みまわした。


「さて、これからの航路だけど……モラ」


え ぼく!?


「黒曜島への案内を頼みたいんだけど、オッケー?」


えと えと。


「ぼくは ばしょ しらない。でも きっと ともだちの なかの だれかが しってる」

「友達?」


ききかえした ユーリに こくんと うなずくと ぼくは こばしりで へさきへ よった。へりから みを のりだして うみを みおろす。なみは おだやかで おひさまを はんしゃして きらきら ひかってた。


ぼくは すうっと いきを すうと おもいきって こえを あげた。



「みんなー!」



みんな きこえるかな。



「おねがい ぼくを たすけて!」



ぼくの こえが みなとに ひびく。

どうしよう ちゃんと とどいたかな。



ぼくの うしろから マイクや ジュンたちが あつまってきた。みんな ぼくの そばへきて おなじように うみを みおろす。


「……? モラ、何してんだ?」

「一体誰に……って、ちょ、なに、あれ!」


ジュンが おおきなこえを あげて ゆびを さす。その ほうこうに いっせいに しせんがあつまる。


なみが ざわついてる。


ううん なみじゃない。

みんなだ!


「うわぁああ!」

「な、なんだなんだ!」



クマノミ、エイ、ハリセンボン、カジキ、ブルーエンゼル、バロニア、チョウチョウウオ、ターポン。

ほかにも たくさんの たくさんの なかまたち。

とどいたんだ! ぼくの よぶこえ みんなに とどいたんだ!



「すっげー! すっげー!」

「しばらく食材には困らないぞ、これ!」


あみを もって はしってきた ミストと テルモを けれど オーガストが すっと おしとどめた。そうして ぼくの かおを みた。


「……お前の『友達』なんだろ?」


ぼくが こくんと うなずくと ミストは あみをもつ てを ゆっくり おろした。テルモも ふっと わらって「わかったよ」と いってくれた。


「で? コイツらが、島の位置を知ってるのか?」


オーガストに いわれて ぼくは また うみを のぞきこんだ。


「だれか くろい さんごの しまの ばしょ しってる?」


と ぴしゃんと はねた ぎんの うろこ。

タイ!


「タイ しってるの?」


タイは ぴしゃん ぴしゃんと げんきに はねると おきに むかって およぎだした。


「あの魚を追うんだよ!」

「アイアイ、キャプテン!」


おかしらの ごうれいに みんなは いっせいに はいちに ついた。

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