第2話 マンボウを たべたい!?

おひさま ぽかぽか。

かぜは そよそよ。


けれど おひるね してられない。ぼくは ぼくに くれた おしごとを いっしょうけんめい やらなくちゃ。


ちくちく ぎんの はりで いとを とおしていく。そうすると やぶけてた あみが もとどおりに なっていく。


なんだか うれしくて ぼくは せっせと むちゅうになって つくろっていた。そうしたら きゅうに てもとが フッと くらくなった。


ふしぎに おもって かおを あげたら めのまえで おかしらが あかい ぬのを  おおきく ひろげて たっていた。


「もー! こんなトコで頭丸出しで何やってんの! 日射病になるわよ? ほら!」


そういって その ぬので ぼくの あたまを つつんでくれた。


「よし、なかなか似合うじゃん! ぐっと海賊っぽくなったよ?」


ぼくは じぶんでも あたまを さわってみて その かんしょくを たしかめた。

あたまを つつんだ ぬのは あたまのうしろで  むすばれていて そこから あまった ぬのが はらりと ながく たれさがっていた。


「ありがとう」


うれしくなって そういうと おかしらも わらって ぼくの となりに こしかけた。


「ホント、あんたって可愛いよね」


びっくりして おかしらを みたら おかしらは くちを ふにっと まげて あたまを かいた。


「……可愛いってのは適当じゃないか。顔の造りがいいワケじゃないもんね。目はちんまりつぶらだし、口もぽちっとちっこいし、エラ張ってるし、正直ブサいんだけど、えーとなんて言うの? ブサかわいい?」


ぼくは いわれたことが よく わからなくて めを ぱちぱち させた。おかしらは あたまを かいた まま そらを みあげて ことばを つづけた。


「なんて言うか、しあわせそうなんだよね、あんた。何やってても嬉しそうでさ、にこにこしてて。見てるこっちまで嬉しくなってくる」


よく わからないけど ほめられてる みたいで ほっぺたが ぽかぽか してきた。おかしらは ぼくを みて くすりと わらうと りょうあしを なげだして おおきく せのびを した。


「う~ん、ホントにいい天気!」


うん ほんとうに いいおてんき。こんなひは なみの うえで よこになって ぷかぷか ひなたぼっこしたい。


「いたぞ、マンボウだ!」


とつぜんの おおごえに ぼくは びくっとして はりで ひとさしゆびを さしてしまった。


え え え マンボウって ぼく!?


どうして わかっちゃったの!? にんげんに なれたと おもったのに!


「逃がすな、捕まえろ!」


そのこえに ぼくは ふりかえった。みれば むこうから ミストと テルモが ぜんそくりょくで かけてきていた。


ミストは そのてに あみを テルモは りょうてに いっぽんずつ ほうちょうを ぎらつかせている!


ぼくは おもわず りょうめを ぎゅっと つぶると そのばに しゃがみこんだ。ふたりの おおきな あしおとが ちかづく。もう だめだ。そう おもった とき。


ふたりが ぼくを おいこした。


え え え?


おそるおそる かおを あげると ふたりは かんぱんに かけおりていく ところだった。


え え マンボウって ぼくじゃ ないの?


「いた、あそこだ!」


そういって ミストが ゆびさした さきには なみに ぽっかり うかぶ ぼくの いもうと!


「だめぇ!」


へさきから あみを おろす ふたりに むかって ぼくは むちゅうで かけだした。


だめ だめ つかまえちゃ だめ!


あしが からまって うまく はしれない。


てすりから みを のりだす ふたりに ちかづいた そのとき。


「うわぁ!」

「わあっ!」


あしが すべって おもいっきり ころんで しまった!

そのまま なだれて ミストに どんっと ぶつかって バランスをくずしたミストも よろけて テルモに ぶつかって そうして さんにんして かんぱんに ごろごろ ころがって しまった。


「いてててて……何するんだよ、モラ!」

「ご ごめんなさい」

「マンボウは!? ……あーあ……逃げられた……」


にげた? にげたの?


いそいで てすりに つかまって うみを みおろす。

いもうとは すいすいすいっと スピードをあげて おきに むかって およいでいった。


よかった。

よかった。


ほーっと ふかくいきをつく ぼくのうしろで もっとおおきな ためいきが きこえた。


「ちぇ。今日こそはマンボウ捕まえられると思ったのに」


たちあがって ズボンについた ほこりをはたきながら テルモがぼやく。ぼくは おずおずと そんなテルモの かおをみあげた。


「どうして マンボウ つかまえるの?」


ぼくのしつもんに テルモは まんめんのえみで きっぱり こたえた。


「もちろん、料理するんだよ! オーグの奴が食べたいって言ってたからさ!」


え え え!?


オーガストが マンボウを た た たべたいって!?

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