第6話 かいぞくの ふね
あさ いちばんに ぼくは オーガストに あいに いった。
でも オーガスト どこに いるんだろう?
きょろきょろ うろうろ していたら かんぱん そうじを している ミストを みつけた。
「あ、おはよう、えーと……そっか、名前ないんだったっけ。ちょっと不便だね」
にがわらいする ミストに ぼくも わらいかえすと ミストの そばに あるいて いった。
「ねぇ オーガストは どこに いるのか しってる?」
ミストは ちょっと うなってから ひょいっと かおを あげて マストのまんなかの みはりだいに たつ おとこのひとに おおきなこえを かけた。
「おーい、ユーリ! オーグどこにいるか知ってる!?」
ユーリと いうひとは てにしていた かみのたばを くるくる まるめて そこに くちを あてて おおきなこえを ミストに かえした。
「今日は操舵の当直じゃないし、おそらくまだ自室では?」
ミストは「サンキュ」とユーリに いってから くるっと ぼくの ほうを むいた。
ぼくも できるだけ おおきなこえで ユーリに「ありがとう」と いったら ユーリは スッと しなやかな しぐさで てを ふってくれた。
せんちょうしつと はんたいの はじっこにある オーガストの へやを ノックすると すこし かすれた オーガストの へんじが かえってきた。
そおっと ドアを あけると オーガストは あさ はやいのに もう くろくて おおきい うわぎを しっかり きていて あさひのなか くっきり たっていた。
「お前か。どうした?」
ぼくは ごくんと いきを のむと おもいきって こう いった。
「ぼくを この ふねに のせて ください!」
オーガストは めを ぱちりとさせて ぼくを みた。ぼくは てのひらを ぎゅうっとして あしに ちからをいれた。
「……お前、自分の言っている意味がわかってるのか? この船が海賊船だと知ってるだろう?」
「かいぞくせん?」
ぼくが くびを かしげると オーガストは こまったように あごを かいた。
「つまりだな、えーと……他の船を襲って金品を巻き上げる、そういう船だ」
「おさかなを とる ふねじゃ ないの?」
「あ? ああ、違うよ」
なんだ! ぼくや ぼくの ともだちを つかまえる こわい ふねじゃ ないんだ!
「じゃあ いい ふねだ!」
うれしくなって そういったら オーガストは こしに りょうてをあてて がくりと したを むいた。
「……お前、絶対わかってないだろ……」
オーガストの ほそい まゆげが まんなかに よって しわが できてた。
「第一、お前、家族はいないのか? どんな目に遭ったのか知らんが、せっかく助かったんだ。家族の元へ帰った方がいいんじゃないのか?」
「ぼくの かぞくは うみの なかにいるんだ。だから いつも いっしょだよ」
そう こたえると オーガストは ちょっと かなしそうな めになって しずかに「そうか……」と つぶやいた。
そうして それきり だまって しまったので ぼくは どきどきが はやく なってきた。
と オーガストが ながい ながい いきを はいた。
「……俺の一存じゃ決められないからな。お頭にかけあってみるよ」
え。それって。
くびをかしげる ぼくに オーガストは すこし おおきな こえで はっきり いった。
「とりあえず、俺は……俺個人としては、お前がこの船の乗組員になることに反対はない。そう言ってんだよ」
わ。
うわぁ。
ほんとう? ほんとう?
「ありがとう オーガスト!」
うれしい うれしい! ほっぺたが ぽかぽかする。
そんな ぼくに オーガストは ただわらって ぼくの あたまを かるく ぽんぽんと たたいた。
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