つまらない毎日をそれなりに生きている高校生・杉内竜馬。そんな彼の楽しみのひとつは、同じ通学電車で転校生の神崎渚を見ることだった。なぜか毎日、ちがう車両に乗り込む彼女の姿を。
気になる女子だからこそ引っかかってしまうささいな違和感。実に青春ものの主人公らしい心情ですし、なんでもない日常の謎の開幕にふさわしいきっかけですよね。
そう、この物語は高校生男子のなんでもない王道の青春ものなんですよ。一枚だけふせられたカードがあって、それが渚さんの“理由”の真実を露わにし、一気に物語の形を変えてさえしまわなければ。
どんでんを返すという手法は小説において不変の切り札ですが、それをここまで綺麗に切れている作品はなかなかないものです。たった数百文字で、同じものなはずの毎日が希望から絶望へ塗り替えられてしまう様、なんとも言えない怖さがありますねぇ。
このすさまじいとしか言い様のないどんでん返し、ぜひみなさまにも味わっていただきたく思います!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)