明日あの子はどの車両に乗っているのだろうか
警察が来た日から何が変わったかといえば、普段飲んでいる薬の量と通学の方法、そして神崎渚が別のクラスに移動になったぐらいだ。僕は普通に学校に行っているし、サルは僕が話しかければ話に乗ってくれる。
僕が写真部で軽いいじめにあっていた時には、学校は誰一人僕のために動いてくれなかったというのに、こんな時だけ対応が早い。彼女が僕よりも圧倒的に魅力的なのは人外生物が見ても明らかなのは認めるが、これほどまでに大切にされていないと思うと空しい。
姉が運転する車の後部座席に乗り、僕は窓から外を眺める。
電車で汗臭い中年男性たちと、おしくらまんじゅうをするよりも快適だし、何より座りながらスマホをいじれるのが素晴らしい。現在位置が分かるような子供向けのスマホに機種変させられてしまったが、特段不自由はしていない。ただ、人前に出すのが恥ずかしいので、携帯を持っていないと公言している。
駅前の交差点に差し掛かると、運悪く赤信号に引っかかる。
リクルートスーツを身にまとった、一人の女性が駆け足で駅から出ていくのが見えた。
少し急いでいる様子だったが、すれ違ったら誰もが振り返るほどの美貌の持ち主だった。
ああ、あの人は美しい。
神崎渚がかすれてしまうほどに、きれいだ。
あの人を眼中に収めたい。
永遠に僕の手元に置いておきたい。
これぐらいの時刻の電車に乗れば、あの人の近くに行けるだろうか。
あの人の色を、形を、データとして残せるだろうか。
欲求を抑えきれない自分に、自分自身ですら驚いている。
心臓の鼓動が益々激しくなっていく。
あの人は。
――明日どの車両に乗っているのだろうか。
今日あの子は第三車両に乗っている もぐら @mogura_level16
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます