法悦の緑

藤枝志野

Ⅰ-1

 列車は北に向かうにつれ速度を落とし、数時間遅れで中央駅に到着した。ガラスの屋根に破損した箇所はなく――あるいはすでに補修したのかもしれないが――、その下のプラットフォームでは列車と人々が往来する。大きな荷物を持った者がいつにも増して多いのは、外に避難するのか、あるいは物資を運んできたのか。神妙な顔で揃いのローブを着た集団もあちらこちらにいる。売店や立ち売りが商いを再開しているものの、品揃えはどこも乏しかった。


 駅の外では、大通りの石畳が平坦に整然と並び、街灯も全てにではないが魔力が行き渡って往来を照らしている。もう大方復旧したのだろうかと思いながら、私は辻馬車の馭者に声をかけた。






髭面の馭者に声をかける → 2へ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054914833066/episodes/1177354054917642307


年老いた馭者に声をかける → 4へ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054914833066/episodes/1177354054917642404

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