第2話

 5時半の電車に乗って、そのまま会社に行くと、6時半に着くことになってしまうので、私が好きなのは、3つ前の駅で降りて、会社まで散歩をすることだ。一番短いルートで行くと、交通量の多い道になるので、できるだけ緑のある道を通ってゆく。途中で、朝ごはんを買う。

 そうすると7時半に会社に着く。就業時間は9時半からなので、まだ2時間早い。早めにやっておきたい仕事がある場合は、この時間にする。人がいなくて、ちょうど良い。仕事が押してない場合、本の続きを読む。

 会社はとても良いコーヒーマシンを持っているので、私は朝一にコーヒーを入れて、カフェテリアで朝ごはんを食べながら仕事をするか本を読む。自分の机にいると、出勤してきた同じ部署の人が就業時間前に仕事の話をしてきたりして好きではないのだ。

 朝早くに出勤する人たちは、他にもいるようで、顔並みは同じである。8時半ごろになると、目力の強い男がやってきて、私をじっと見てくる。私は、気づかないふりをするときもあるが、目力に負けて、つい見てしまうことの方が多い。そうして、朝、3秒間ほど、私たちは見つめ合うことになる。

 つまり私の朝の日課は、会社に到着すると、カフェに行き、コーヒーと朝食を取りながら仕事をするか本を読み、目力の強い男と3秒間見つめ合う。

 ただ、今日、また強い視線を感じて、目をあげると、とてつもなく大きな害虫が私のことをじっと見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る