第5話 サンダルでおさんぽ!

 夏だ、暑い、目の前に広がる。陽炎がゆらゆらしてる道路。サンダルは地面からの熱を遮ってくれるけど、前をぐんぐんと歩くマルコは肉球だ。そりゃ猫よりは厚いしプニプニしてないけれど、あれはかなり熱いんじゃないかな。何て考えながら歩く。

 マルコは私が中学生くらいの頃、知り合いから譲り受けた子犬だった。幼なじみのあいつも子犬を見に来たし、一緒に散歩することもあった。今じゃ私は一人暮らしだけど、実家に戻ってきたら必ずマルコの散歩をする。もうマルコは疲れやすくて、距離が少しずつ短くなっているらしい。まあでもまだまだ元気に、郵便屋さんのバイクに吠える。


 マルコはオスだけどみんなからマルちゃんと呼ばれ、時にはマルマルーと呼ばれる。近所の人も名前を覚えてくれて、



「あらーマルちゃん、今日はお姉ちゃんとお散歩よかったねー」



 なんてシルバーカーを押すおばあちゃんに声をかけられたりする。のどかな町のさらに外れの通り、軽トラくらいしか通らない。そんなマルコ散歩コースに彼氏の実家がある。彼氏もそこに住んでいる。最近子どもの頃の楽しかったり、バカやったり、転げ遊んだ頃の記憶がよみがえる。あそこはしょうた君の家、さっちゃんの家ももう少し先にある。


 好きとか嫌いじゃなくて特別な仲良しだと思っていた。私が自分の気持ちに気づいたのは彼の告白を聞いてから。このままどこかにいなくなる前に言っておく、そう前置きしてあいつは私をひきとめた。

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