第2話

「空様、エシルです。」


机の上に置かれた黒い水晶を僕が眺めているとノックとともにエシルの声が聞こえた。


入っていいよと言うと扉が開きいつものように銀の色のふさふさ耳をピンッと立たせたエシルが立っていた。


「準備が整いました。」


「よし、じゃ行こうか。」


僕は机の上に置いてあった水晶を持ち、エシルを連れて部屋から出る。


「どう?ここも広くなったでしょ。」


「とても広くなっていて驚きました。最初の洞穴がここまで広くなるとは、、」


「ビーツが頑張って大きくしてくれたんだよ。」


松明が照らす廊下を二人で歩く。


「ダンジョンの成長の早さを侮っていました。ダンジョンマスターは伊達ではなかったのですね。」


ダンジョンとは魔物の一種で、ダンジョンマスターとはテイムスキルの一種である。

今僕たちはダンジョン内にいる。


「今もビーツはダンジョン強化に励んでるよ。」


「先ほど、準備のために顔を合わせましたが、相変わらずでしたね。あの根暗は。」


「そんなこと言わないであげてよ、ビーツのおかげで快適に住めてるわけだし。」


僕がそういうとエシルは渋々の表情でうなずいた。


「エシルって思っていること顔に出やすいよね。尻尾はそれ以上に出やすいけど。種族の特性なの?」


エシルは恥ずかしそうに顔と銀髪の尻尾をいじりながら頬を赤く染める。


「狼の獣人にそのような特徴はないのですが、、」


エシルと話しながらダンジョン内を歩いていると広い空間に出た。

そこは奥まで300Mほどありそうなドーム状の部屋で、高さも相当あり、部屋というには大きすぎる空間だった。


その空間に規則正しく並ぶドラゴン。


「こう見ると圧巻だね。これはどのくらいいるの?」


「外にいるものを含めて100匹ほどだそうです。」


「こんなにだしてダンジョンは大丈夫なのかな?」


「ビーツが言うには元々生んでいた数も多いらしく、2.3日休ませないといけなくなる程度らしいです。」


「そんな程度でいいんだ。やっぱりダンジョンマスターはずるだよねー。」


並んでいるのは10M程のワイバーンという名前のドラゴンだ。

ドラゴンの中でもワイバーンは弱い部類だが腐ってもドラゴンだ。それに加え、この数だ。

ワイバーンの脅威は測り得ないだろう。


「アイテムもすべてそろってますが、私とワイバーンだけでいいのでしょうか?ほかの暇してる奴らを呼んだほうがいいのでは?」


「大丈夫だよ。挨拶をしに行くだけだし。」


僕がワイバーンの背中に乗ると続けてエシルも乗り込んだ。




「それじゃあ、帝国最強に会いに行こうか!」

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