ヒトガタリ

@ginkaisyoku

第1話

「雨、降りそうだね、、」


「そうですね。」


黒い雲と雨の匂い。

それに混じる血の匂い。


目の前には数千もの鎧を着た兵士がぶつかり合っている。


「雨、降ってきちゃったね、、」


「そうですね。」


ぽつぽつと冷たい雨が黒い雲から落ちてくる。

戦場はガンガンと騒音をまき散らして、赤く土を染める。


血の匂いが強くなるのを嫌うように雨脚が強くなる。


「ありがと。」


エシルが外套をかけてくれる。持っていた水晶を外套の中へしまう。


「今は何人くらいかな?」


「見た感じだと1500人ほどです。あと500人ほどで終わるのではないかと。」


「そっか。それならもう少しここで見てようか。」




周囲に響かせていた騒音も徐々に鳴りを潜め、両軍が撤退していく。


「十分な量も溜まったし僕らも行こうか。」


熱のなくなった戦場に背を向ける。

雨雲を凝縮したかのような真っ黒になった水晶を確認して。




二人がいなくなった戦場は、さっきの雨が嘘のように晴れ渡っていた。

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