影の末路

Meg

影の末路 脚本形式

○パソコンの画面

   zoomが起動し、ウィンドウが現れる。表示された名前は『モネ』。

   笑ったマネの顔が映る。


マネ「こんにちはぁ〜! 私の名前はマネ! アイドルのモネのファンでした」

 

   マネは唇に人差し指を当て、甘えるような声を出す。

 

マネ「実は私、ずっとモネになりたかったの。(憂い)私と違って誰もに愛されるモネに。え? 名前の表示がマネじゃなくてモネになってる?」

 

   マネは両手を組み、うれしげな表情を浮かべる。


マネ「そうなんですぅ。実はただ見ていただけの私は、ついに今日からモネになる夢を叶えます! 見た目は完璧。性格も催眠術で完璧にトレースしました。そう、私の名前はモネ。アイドルですっ!」

 

   画面に、もう一つウィンドウが現れる。暗い部屋で倒れたモネ(18)が映っている。表示された名前は『モネ』。

  

マネ「今日は雑誌の撮影です。そしてこれから元モネへ弔いの挨拶をします。新しいモネを見せつけ、古いモネには死んでもらうのです」

 

   マネはしのび笑いをする。

   倒れているモネが目を覚ます。

   起き上がり、後頭部をさする。

   

モネ「いてて。ここどこ? これから撮影なのに」

 

   もう一方の画面のマネが、

 

マネ「(全く同じ調子で)いてて。ここどこ? これから撮影なのに」

 

   モネはマネの声にハッとし、周囲を見渡す。

 

モネ「誰かいるの? 私誰かにいきなり後ろから殴られて、気づいたらここにいたの」

マネ「誰かいるの? 私誰かにいきなり後ろから殴られて、気づいたらここにいたの」

 

   zoomに気づくモネ。 

   顔を近づける。

   

モネ「これズーム? あなた何してるの? 私と同じ格好?」

マネ「これズーム? あなた何してるの? 私と同じ格好?」

モネ「ふざけないで答えてよ!」

マネ「ふざけないで答えてよ!」

モネ「頭おかしいんじゃないの?」

マネ「頭おかしいんじゃないの?」

モネ「もういい! 一人で何とかする!」

マネ「もういい! 一人で何とか……」

 

   モネの画面が、プチッと暗くなる。

   電話の鳴る音がする。マネが電話を取る。

   

マネ「モネちゃん、何してるの? 早く来てよ。もう撮影始まっちゃうよ?」

 

   沈黙。

   

マネ「ふざけてるの?」

 

   沈黙。

   

マネ「あんた誰? あんたモネじゃねぇだろ!」

 

   沈黙。

   

マネ「モネをどこにやった。警察に電話するぞ?」


   沈黙。電話が切れる。

   マネは画面に向かって、

   

マネ「私は誰? 私はモネ? ええ私はモネ。でも私はマネ? いいえ、私はモネ」


   遠くから届く、パトカーのサイレンの音。

   

マネ「(早口で)私はモネ。私はマネ。私はモネ。私 はマネ。私はモネ。私はマネ。私は……」

 

   大きくなるサイレンの音。

   マネがズームから退出する。

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影の末路 Meg @MegMiki34

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