第3話

馬車に乗ること一時間ほどで馬車がとまる。ラルミーイさんがさきに馬車をおり、俺もその後につづきおりる。

俺は馬車をおりると同時に目の前の光景に驚きの声をあげる。

「ええー。屋敷があるんですけど、ここに住んでるんですか」

「ええ、そうよ。さあ、行きましょう。ルーフ」

大きな扉が開かれると同時に、涙を浮かべラルミーイさんに抱きつく、屋敷の人。

「ラルミーイちゃーん、遅いよ~。ルーフ君のことはほっとけばいいのに~」

ほっとけばいいってひどいな、こいつ。活躍は多いって聞いてたのに。

「そんなこと言わないの。ルーフのことをほっとくなんて、できないよ。ここに住めるのはルーフのおかげなんだから。だめでしょ」

「そっそうだけど、でもー」

ラルミーイさんに抱きつく人は俺の方に視線を向けて、すぐに失言を本人に聞かれたことに気付き、口をぱくぱくさせる。

しかし、俺に謝ることはしない。

「この屋敷ってルミさんのじゃないんですか?てっきり、ルミさんが所有してるのかと思ってたんですけど」

「ルーフ君がおかしなこと、言ってる。おかしいよ」

大声で騒ぎ出す人。

「カーミフィナは騒ぎすぎだよ。魔物の討伐はしてきたの?」

ラルミーイさんが聞いたことに、カーミフィナの顔が真っ青になっていき、ラルミーイさんの身体を揺すり、怒らせないように謝る。

「してないの、ごめんなさい。決してさぼってたわけじゃなくて、私だけじゃ無理だったから。ほんとのことなんです。だからっだから、許して。許してください、お願いします。大好物を買ってきますから、怒らないでください」

ひっしだ。ひっし過ぎる、そんなに怖いのか?ラルミーイさんは。

カーミフィナの耳もとに口を近づけるラルミーイさん。

カーミフィナは、「はい。はいはいっ。二度と言いません」と怯えながら言う。

ラルミーイさんは、俺の手を取り連れていく。

カーミフィナはその場で泣き崩れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る