第9話「王城での対話」

 ピット族という種族がいる。大人でも120センチ程度にしかならない非常に小柄な種族だ。

 寿命は男女ともに200年くらいで、40歳で成人する。

 魔術の素養は低いものの、非常にすばしっこく、隠れ潜むのが得意。温厚な種族だが、仲間のためなら命を惜しまない勇敢さを持っている。

 その体格や性格などから、歴史の表舞台には出てこないし、何度かの大きな争いの中でかなり数を減らしてしまった珍しい種族である。


 グランク王国の使者であるピルンはそのピット族だった。

 見た目は茶色い癖毛の、人懐っこい顔つきをした少年だ。フィンディよりも背が低いが、手足は意外にも太い。それは彼が大人のピット族である証明だ。

 大国の使者を任せられるということだから、とても優秀なのだろう。言葉使いや態度も丁寧で、高度な教育を受けていることがわかった。


「ピット族か。久しぶりに見たな」

「おお、同族に会ったことがあるのですか?」


 私の言葉に喜ぶ彼は拘束されていなかった。窓には鉄格子が入っている、入り口の扉の前には常に誰かがいれば大丈夫とでも思われていたのだろう。

 ピルンの見た目だけで判断するならば、それで十分脱出不可能に思える。

 しかし、ピット族は隠密行動が得意な種族だから、簡単に抜け出せた可能性は高い。特に、特別な役職に上り詰めるような優秀な者ならば尚更だ。


「昔、ピット族と少しだけ縁があっただけだ。捕まっていたようだが、体の方は大丈夫なようだな」

「乱暴な扱いは受けませんでしたから。この見た目で油断したのでしょう。監禁が長引いたら逃げ出すつもりでした」

「ほう、逃げおおせるつもりじゃったのか」

「戦うのは無理ですが、逃げることなら可能な相手でしたから」

「流石、大国の使者殿は違うな」


 涼しい顔で言うピルン氏。

 今の台詞を脳筋派の人達に聞かせたらどんな顔をするだろう。

 命がけの行動が、実はいつ失敗してもおかしくなかったと思うと、少し気の毒になる。


「ところで、助けてくれた恩人二人のお名前を伺いたいのですが」

「これは失礼した。私はバーツ。冒険者をやっている者だ」

「ワシはフィンディ。同じく冒険者じゃ」

「フィンディ……。たしか、この国に住む神世エルフと同じ名前ですね」

「本人じゃ」

「なんと! それはそれは、恐れ多い方に助けていただき、感謝の言葉もありません!」


 平身低頭するピルン。腰の低い人だ。

 しかし、やはりフィンディは有名だ。大国の使者に名前を覚えられているとは。私とは大違い。いや、別に名声が欲しいわけではないが。


「頭をあげるのじゃ、ピルンよ。今のワシはこちらのバーツと同じただの冒険者。身分で言えばお主の方が上じゃ」


 偉そうな物言いで、そんなことを言っても説得力がない、と言いかけたがやめた。

 彼女はこの口調で相当の年月を過ごしているので修正不可能なのだ。


「おっと、しまったな。敬語を忘れていました」


 慌てて私は敬語にする。魔王時代に少しだけピット族と過ごしたこともあってか、何となく馴れなれしい言葉使いをしてしまった。


「いえ、私の方が身分が上などということはありませんから。命の恩人ですし。気安いほうが楽です、敬語はやめてください」

「そうか。助かる」


 本人がそう言ってくれるなら、ここでは敬語はやめておこう。国王あたりの前で切り替えれば良いだろう。


「私を捕まえた人たちはどうなりましたか?」

「無謀にもワシらに戦いを挑んできたので返り討ちじゃ。殺しはしておらんがのう」

「下でラナリーという者が監視している。それで、ピルンは私達と一緒に王城に向かってもらう」

「え? すぐに王城で良いのですか? 下の人達が目覚めてしまうのでは?」

「ワシが魔術で眠らせた。一週間は目覚めんよ」


 そして、目覚めても満足に体は動かない。かなり強力な睡眠の魔術をかけていたし、怪我でボロボロだ。

 なんにせよ、ピルンが王城に戻るのが再優先だ。大国の使者殿が不在の期間が長いほど、この国にとって不利益になる。早く状況が解決したことを国王と大臣に伝えるべきだろう。


「私達が魔術で城まで送る。この国にとって貴方が見つからないのは非常に不味いようだ」

「ああ、そうでしょうね。しかし、私をここに閉じ込めた人達はどうなるのでしょう? 手荒なことはされなかったのですが」

「ま、処刑じゃな」

「えっ……それはちょっと……」

「そう思うなら、国王陛下と大臣に口添えしてやってくれ」


 どうやらピルンという人物は殺生を好まないらしい。平和主義のピット族らしくて、安心した。ここで「皆殺しにしてください」とか言われたらどうしようと心配していたのだ。

 ちなみに、実はラナリーも脳筋派の処刑は望んでいない。殴られたりしたが、深い考えあっての行動でないこと、彼らが全滅すると国の戦力的に不味いことが主な理由だ。

 私やフィンディからの減刑が聞き入れられれば、対処法をエティスと相談するつもりのようだった。


「わかりました。私は荷物もありませんから、すぐに送っていただけるなら助かります」

「安心せい。ワシとバーツの魔術でひとっ飛びじゃ」

「一応、ラナリーに話だけは通しておこう」


  ○○○


 その後の流れは早かった。私達は魔術で王城まで移動。ピルンをエティスに引き渡した。

 エティスはピルンに対して平謝りだったが、ピルンはあまり気にしていないようだ。

 そこは大国の使者なんだから気にした上で何らかの便宜を引き出すべきだろうと思ったのだが、私は何も言わなかった。そもそも、ピルンがどんな役割を持ってこの国にやってきているか知らないし、口を挟む事柄でもない。

 

 王城にフィンディを残した上で、私は魔術でもう一度飛んだ。屋敷に一人残るラナリーと脳筋派の回収のためだ。

 飛行魔術で20人以上を運ぶのは面倒なので、フィンディに王城側に使い捨ての転移魔術陣を用意してもらった。一回きりしか使えない上に、出発側と移動先側の双方に術者が必要で、使い勝手の悪い魔術だが、そのおかげで悪用されにくいのが特徴の魔術だ。

 当然、術は無事に発動し、脳筋派の全員を王城に運びこむことに成功した。


 こうして、私とフィンディはグランク王国の使者行方不明事件を即日解決したのだった。

 朝、王城を出て、夕方には解決。我ながら見事なものだと思うが、頑張りすぎたかもしれない。リッティとエティスが報告を聞いて驚いていた。


 とはいえ、流石にこれから先はスピード解決とはいかない。この国の者達で色々と判断が必要な局面だ。

 関係者ではあるが、あまり政治と関係したくない私とフィンディは、昨日与えられたのと同じ部屋で寛いでいた。

 

 のんびりお茶などを飲んで寛いでいると、部屋のドアがノックされた。

 現れたのは、ピルンだった。


「む。ピルンではないか。こんなところに来て大丈夫なのか」

「お二人がこちらの部屋に滞在と聞き、改めてお礼を言おうと思いまして」

「別に気にすることはないのじゃ。冒険者としての仕事じゃよ」

「報酬も貰えたしな」


 室内に入るなり深々と頭を下げるピルン。大分感謝されているようだが、私達は仕事をしただけだ。

 それに、ピルン自身も自力で抜け出せると言っていた。ここまで感謝されるようなことではないだろう。


「先ほど、エティス様からフィンディ様とバーツ様が旅に出ることと、その理由を聞きました」

「ふむ。それがどうしたのじゃ?」


 なるほど、本題はそちらか。旅立ちの別に知られて困ることでもないし、大国の使者なら色々便宜を図って貰えそうで、むしろ助かりそうだ。


「私はこう見えてグランク王国の役人です。貴方がたに役立つお話が出来るかもしれません」

「おおっ、それは助かるのじゃ!」

「うむ。私もグランク王国のことは知りたいと思っていた」

「良ければお話したいのですが、一つ、条件があります」


 打って変わってピルンは神妙な顔になった。なんだろう、機密を漏らすなとかそういうレベルの話しでもするつもりなのだろうか。

 私はともかく森の大賢者フィンディの名声は高い。フィンディの神世の知識と交換で重要情報を話すとか、そんなところだろうか。


「条件? なんじゃ、いくらワシでも無理なものはあるぞ」

「いえ、バーツ様に質問があるのです」

「私に質問? フィンディではなく?」


 質問される理由が思い当たらなかった。私とピルンは今日が初対面。フィンディと違って有名人でもない私に対して、彼は何を聞こうと言うのか。


「はい。回答によっては、私の知る情報を全て開示しても良いと思っています」

「なん……じゃと……。おい、バーツ。いったい何を隠しておるんじゃ。使者がそんなことを言うなんて相当じゃぞ」

「私にも見当がつかない……」


 頭を振りながら、私は言った。そのまま、私とフィンディは視線でピルンに言葉を促した。

 さて、何を質問するつもりなのか。


「単刀直入にお聞きします。バーツ様、貴方は『北の魔王』ではありませんか?」


  ○○○


 室内が完全に沈黙した。

 いや、危うく「何故わかった!」と叫びそうになったのだが、我慢した。表情も変えなかった。ポーカーフェイスは得意だ。

 しかし、この場合の沈黙というのは肯定ととられかねない。何か言わなければ。


「…………」

「……む。なんのことやらわからぬな」


 剣呑な目つきで沈黙するフィンディに対し、私は精一杯とぼけてみせた。


「バーツ様は北の魔王ではないかと伺っているのです。私の想像に間違いが無ければ……」

「ほう、ピット族というのは面白いことを言うのう……」


 フィンディの目つきがマジだ。「ここで消すか?」と言っている。いつの間にか杖も出してるし。

 気持ちはわかるが、決断が早すぎる。もう少し話を聞いてからでも遅くないだろう。


「フィンディ、目が怖いぞ。あと杖をしまえ。……ピルン殿、なぜそう思ったか教えてくれないか?」

「おお、これは失礼しました。フィンディ様も怖い顔はやめてください。別に害意があるわけではないのです」

「ふん。どうじゃか。いきなり人を魔王扱いなど……」


 警戒を解かないフィンディに対して、頭を下げながら言うピルン。

 本当に腰が低いなこの人。大国の使者なのに。


「ちゃんと御説明致します。かつて、私達ピット族は、バーツ様に救われた歴史があるのです」

「そんなことがあったかな?」


 記憶に無い。ピット族と過ごした記憶はあるが、そこまで大それたことをしたつもりはない。


「お忘れですか……。いえ、バーツ様にとっては些細なことだったのかもしれません。しかし、ピット族にとってはとてもとても大切な出来事だったのです」

「面白い。そこに座って聞かせてくれんか? ワシが茶を準備する。そこのテーブルじゃ」


 興味が出たらしく、態度を軟化させたフィンディが茶の用意を始めた。


「森の大賢者にお茶の用意をして頂けるとは……。光栄です」


 安堵の表情でテーブルに向かうピルン。同時に、私も安堵した。どうやら、今すぐ物騒なことになる心配はなさそうだ。

 ちなみに、彼女のお茶を断った者は、何故か大体不幸になるので、ピルンが逃げ出したりしなくて良かったとも思う。


「それだけお主が面白いことを言ったということじゃ。それで、詳しく教えてくれ」

「はい。それは……450年程前のことでした……」


 フィンディが手ずから淹れたお茶のカップに口をつけながら、ピルンが話を始めた。

 内容は以下のようなものだった。


 500年前の戦争の後、力の時代がやってきた。強いものが支配する、弱者に厳しい時代だ。

 戦う力の少ないピット族は全滅寸前だった。

 最後の生き残りであるピルンの祖先達は、海を渡り、北の大陸に逃れ、更に北へ。最終的に、北の果てにある魔王山脈に到達した。

 あまりに険しい山に絶望したピット族だが、幸いなことに、魔王山脈の南側も周囲に人はいなかったので居住を試みることにした。

 しかし、北の果ては辛い場所だ。冬が近づくにつれて生活は厳しくなる。彼らはこの地に到達するのが少し遅すぎた。冬への蓄えが十分出来なかったのだ。

 冬が本番になり、寒さが厳しくなり、種族の全滅が徐々近づいてきた。

 ピット族が全滅を覚悟した時である。

 魔王山脈の向こうから『北の魔王』が飛んできたのだ。


「そして、バーツ様は私達ピット族を魔王城に招いてくださったのです」

「ああ、そんなこともあったな。魔王山脈までやってきたピット族が全滅しそうだと配下が報告してきたので、様子を見るついでに助けたんだ」


 ピット族を救った理由は同情もあったが、それ以上に労働力の確保が目的だった。

 当時は魔族の数があまりにも少なかったのだ。


「私達ピット族は、150年程、魔王城でお世話になりました。そして、数がある程度増えた段階で、外の世界に偵察に行った者などからの報告を聞いて、城を出たのです」

「ふむ。一族全員で引っ越したのか。なんでじゃ?」

「魔王城よりも良い土地を、魔族の方が見つけてくれたのです。そして、魔王様が問答無用で移住させたと聞いております」


 フィンディがこちらに話を促す。今更だが、話の流れで私が北の魔王であることを肯定している気がする。

 まあ、いいか。どうやらピルンは私達に害意が無いようだし。万が一、そういう素振りを見せたらフィンディに記憶でも消して貰おう。


「ピット族は魔族ではない。ずっと魔王城にいると、勇者が現れた時の戦争に巻き込まれたりする可能性があるだろう。それに、戦う力も弱いのに魔族扱いされて迫害されたりしたら不味いと思ったのだ……」


 あと、思ったよりもピット族の数が増えて手狭になったというのもある。魔族の城なのかピット族の城なのかわからなくなりかけていたのだ。


「そのお答え。やはりバーツ様が魔王様なのですね。そして、私の思った通りでした! 北の魔王様は私達のことを考えて、移住させたと!」


 ピルンは椅子から立ち上がり、ひれ伏しながら感動していた。

 もしかして、ピット族の中で移住の理由について議論でもあったのかもしれない。全部こちらの都合だから好きに言ってくれて構わないのだが。


「今更じゃが、魔王じゃったと認めて良いのか?」

「こちらに害を与える気はなさそうに見える。ピット族を知らないわけでもないしな」


 ひれ伏すピルンを見ながら私は言う。このように、一度受けた義理を忘れないのがピット族だ。戦闘力は期待できないが、信頼の出来る相手である。


「ところで、お主はなんでバーツが魔王だとわかったのじゃ?」

「これです!」


 ピルンは懐から勢い良く一枚の紙を取り出した。

 その中には、100倍くらい美化された私が描かれていた。なんか、妙に爽やかな感じの美形だ。

 これはお前の肖像画だ、と言われたら私は首を横に振ると思うのだが。ピルンはどういう想像で、これから私の素性を推測したのだろうか。


「我らピット族は、いつ魔王様に会っても間違えぬように、常にこの肖像画を携帯しているのです! 一目見た時から確信しておりました!」

「これ、私に似てるのか……」

「実物の方が素晴らしいと思います! ああ、なんと光栄な! 大国で頑張って役人をして来た甲斐がありました! 我らの救世主に会えるとは!」

「そ、そうか。私も嬉しいぞ」


 信じられないくらい喜んでいるので、そうとしか答えられない。

 フィンディの方は何やら肖像画を物凄い不可解な物を見る目で凝視している。気持ちはよく分かる。


「魔王様、このピルン。いえ、ピット族一同、貴方の配下です。どうか、お役立てください」


 再びひれ伏しながら、ピルンが言った。

 気持ちはわかるが、今の私は配下が必要な立場にないのが問題だ。


「あー、それなんだがな、ピルンよ。実は私は、もう魔王ではないんだ」

「は? それはどういう?」

「今度はこちらが説明する番じゃな」


 面白い話をしてくれた礼とばかりに、フィンディが私の境遇について説明してくれた。ついでに、この世界の魔王と勇者の関係にも触れていた。世界の根幹に関わる情報なので、おいそれと話さないはずなのだが、サービスということだろう。


「つまり、こやつはもう魔王ではなく、元魔王。ただのバーツになったということじゃ」

「なるほど。そのようなことが……」

「うむ。だから元魔王の私に忠誠を誓うことはない。旅に出る理由も、個人的な感傷だからな」

「ふむ……ふむ……。決めました」


 私の言葉を噛みしめるように、頷きながら聞いていたピルンは何かを決めたらしい。


「なにを決めたのだ?」

「私をバーツ様とフィンディ様の旅に同行させてください!」


 ピルンは土下座した。

 わけがわからない。むしろ、彼が諦めて帰る流れだったはずだが。


「な、なんでだ。私はもう魔王ではないぞ?」

「私達ピット族を救ってくださったのは北の魔王バーツ様です。故に、この忠誠は、正体のわからない新しい魔王ではなく、貴方に向けられるべきかと」

「あーたしかにのう。普通の魔王じゃったらピット族など見殺しにしとるからな。こやつの情け深さのおかげじゃな」

「そういう考え方もあるのか……」


 フィンディの言葉もあり、ちょっと納得してしまった。確かに、他の魔王なら普通に見殺しにしていたと思う。


「話を聞いて、是非同行させて頂きたく思いました。こう見えて、大国の役人として大陸中を飛び回っております。ピット族の中で最も貴方がたのお役に立つ男かと」

「ふむ……しかしな、危険が……」


 私は新しい魔王を探す。場合によっては、新魔王やかつての配下と戦うこともあるだろう。そこにピット族を連れて行くのはいかがなものか。


「よし、同行を許可するのじゃ!」

「フィンディ!」

 

 注意しようとした私に対して、勝手に許可を出したフィンディは悪びれもせずに言う。


「こやつはきっと断ってもついてくるじゃろ。それに、ワシらが今の世界に疎いのも事実。案内役として、最適じゃろう」

「確かにそうだが……」

「お役に立たないと判断したらすぐに切り捨て頂いて結構です!」


 渋る私に対して、ピルンは更にアピールしてくる。2対1、状況は私が不利だ。それに、フィンディのいうことも一理ある。

 大国グランク王国の使者まで務めるピット族のピルン。現在の世界に関する知識は、間違いなく私とフィンディよりも豊富だ。


「……ピルンよ。お前の仕事は大丈夫なのか?」

「ご心配なく。この国で仕事を果たした後は、のんびり母国に帰る予定でした」


 どうやら仕事は終えていたらしい。あまり好きな言葉ではないが、これも運命というべきか。


「わかった。同行を許そう。ただし……」

「はい! 足手まといになったらすぐに見捨ててください!」

「私はそんなことはしない。危険だと思った場所には連れて行かない。そこは了承してくれ」


 自分の命を粗末にする者は、私の配下にいらない。魔王になった時に決めたことだ。

 その方針は、今後も継続していこうと思う。

 私のそんな気持ちを盛り込んだ提案に対して、ピルンは満面の笑みで答えた。


「……はい。喜んで! 私はお二人に出来る限りの奉公を致します」


 こうして、魔王を引退したはずの私に、配下が出来たのだった。

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