7話 プレゼント

「お姉ちゃん」


「どうしたの?」


「この建物は何ですか?」


「これはね。ホテルって言うの」


「ホテル?」


「人が泊まれる場所。今日はここに泊まるの」


「凄い」


「そうね! 凄く豪華だと思うよ」


 自動で開く扉を抜け、ホテルに入った。


「綺麗」


 自然で見る景色とは違う。


 キラキラしてて、華々しい。


 自然ではない人工的な景色。


「サクラバ・グレーベンです」


「グレーベン様ですね。どうぞこちらへ」


 よく分からないのでひたすらサクラバさんに着いていく。


 すると、大きな扉の前で止まった。


「これはエレベーターって言うの。自動で動くのよ?」


「凄い」


 箱型になっている。


 扉が開き、中に足を踏み入れると。


「わっ!」


 勝手に動き出した。


「グレーベン様はエレベーターは初めてでしょうか?」


「は、はい」


「お恥ずかしながら大きな町へ妹を連れ来るのも初めてなんです。だから見たことのない物で溢れていて楽しんでいるんですよ」


「初めて、ですか。珍しいですね」


「ええ。このホテルに泊まれたのも町の長のおかげなんですよ」


「そうなのですね」


 縦揺れや横揺れするエレベーターが楽しかった。


「こちらでございます」


「ありがとうございます」


 サクラバさんは小さな紙のような物を扉に翳した。


「カードキーって言ってね、これがないと部屋に入れないの」


「なるほど」


 知らないことばかり。


 初めての経験が今は、凄く楽しい。


「わーー!」


「綺麗な景色」


 窓の外から見える大きな、綺麗な景色。


「私達は山の向こうから来たのよ」


「凄く、凄く遠いですね」


「そうね」


 あまり大きくはない山の向こうにあの小さな町がある。


 想像ができないぐらい、美しいことだと私は思った。


「さて、外にお出かけに行きましょうか!」


「はい!」


 小さな鞄を持ち、部屋を出た。



「ここから行きましょう」


「ここ、ですか?」


「アクセサリー屋さん。アムネシアの髪飾りでも買おうかなって」


「え」


「遠慮しないで! 初めてのプレゼント!」


「ありがとうございます」


 私はサクラバさんと離れ、一人で店を見て回った。


 中には綺麗な装飾品が沢山あった。


 そこには髪飾りなどもあった。


「綺麗」


 ある1つの装飾品に目を惹かれた。


 それは指輪だった。


 白いリングに翠色の小さな宝石がついていた。


 決して安くはない金額だった。


「やめよう」


 私は諦め、安そうな髪飾りを見つけるために再び店を見て回った。





「ありがとうございました」


「いいっていいって!」


 飾りがついている髪ゴムを買ってもらった。


「大切に着けます」


「うん! それと、これも」


「これ……」


「ずっと目を惹かれてたでしょ? 指輪なんて滅多に見ないから気になってみたらアムネシアに似合いそうだから買ってみたの!」


「ありがとうございますっ!」


「もう、泣かないの!」


 初めて涙を流した。


 凄く嬉しかった。


「大切に、大切にします!」


「うん。でも着けてよ?」


「は、はい」


「あ、着けないつもりだった?」


「……はい」


「もう! 絶対に着けてよ!」


「必ず着けます」


 私はその場で箱をあけ、指輪をつけた。


「うん。思った通り似合う!」


「ありがとうございます」


「あっ。右手の中指に着けてくれない?」


「ここ、ですか?」


 私は右手の中指に貰った指輪をつけた。


「そうそう! 意味があるの」


「意味?」


「邪気を払うって意味」


「邪気……」


「悪い物とかからアムネシアを守ってくれるようにってこと!」


「っ」


「アムネシアは不運が強そうだからできる所から払っていかないとね?」


「そう、ですね」


「よし! そろそろお昼の時間だし、どこかに入ろうか」


「はい」


 少し、泣きそうになったけど我慢し、サクラバさんに着いていった。

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