6話 記憶を取り戻すため
「記憶を取り戻すために、町へ?」
「そうなの! 前に一度記憶を取り戻した時に大きな建物が見えたって言ってたでしょ?」
「はい」
「その建物を見てみて、また記憶が戻ったらいいなって思って!」
「……行きたいです」
「よしきた! 町長にはすでに話を付けてあるから明日出発ね!」
「はい」
「アムネシア」
「どうかしました?」
「外では。この町以外では貴方と私は“姉妹”ってことでいいかな?」
「姉妹、ですか?」
「そう! 私が姉でアムネシアが妹」
「妹」
「ダメかな?」
「いえ。構いません」
「それならさ! 私のことお姉ちゃんって呼んでくれない?」
「お姉ちゃん……」
「そう! 町に行く時だけでいいからさ」
「分かりました。お姉ちゃん」
「んふふ」
「どうかしました?」
「ううん。アムネシアからお姉ちゃんって呼ばれて嬉しいなーって思ってね!」
「私も嬉しいです。サクラバさんとの間に新しい関係が出来たことが」
「!」
今までの私とサクラバさんの関係は同居人だったり、親子みたいな感じだった。
それに新しく姉妹が追加された。
嬉しい。お姉ちゃんって呼べることが、嬉しく感じるの。
「アムネシア」
「はい」
「私とアムネシアの間にはもっと沢山の関係が出来ると思うの。もっともっと、親しくなれると思うの」
「私もです。もっとサクラバさんと親しくなりたいです」
「ふふ。町でお揃いの物でも買ってみましょうか!」
「はい!」
―――翌日。
「気をつけて行くんだよ」
「羨ましいなー!」
「俺も行きたい!」
「だーめ! 今日はアムネシアと二人のお出かけなの」
「「えー」」
「こらこら、サクラバを困らせるんじゃないよ」
「今度、私と一緒に町に出かけてください」
「行くー!」
「俺も!!」
「それじゃ、行ってくるね」
「いってらっしゃい」
私は皆さんに手を振った。
「アムネシア。いつの間にあの二人と仲良くなったの?」
「最近です。最近、あの二人と初めてのお友達になりました」
「嘘!!! 私が最初じゃなの!?」
「え?」
「嘘でしょー!!」
「サクラバさんは、私とお友達だったのですか?」
「そうそう! いっちばん最初になった自信があったんだけどな~」
「……すいません」
「いいって! 誰が最初かなんて争うべきじゃないからね。クルミもユズも良い子だから友達になれて良かったね」
「はい!」
隣の大きな町までは約二時間ほどで到着する。
町へは一日宿泊してから帰る予定だ。
「ここ、気をつけてね」
「はい」
少し足場の悪い山道を通り、開けた道に出た。
「ここからは一本道! ひたすら歩くだけ」
「はい」
「大変だけど、頑張ろうね」
「はい!」
ひたすらに道を歩く。
景色が同じだからあまり歩いた気がしなかった。
「ここが……」
「いつ見ても大きな所!!」
「はい」
遠くからでも分かる大きな建物。
町に近づくと楽しそうな声が沢山聞こえてきた。
中には美しい服を纏っている女性。
背筋がピンと伸び、歩いている男性。
楽しそうに笑う、夫婦。
「行きましょう。アムネシア」
「はい。お姉ちゃん」
町を二人で歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます