4話 初めてのお友達

「サクラバさん。散歩に行ってきてもいいですか?」


「もちろん。日が暮れる前に帰ってくるのよ!」


「はい」


 私はいつもの場所に向かった。


 フリューゲルさんにまだ気持ちを話せていない。


 まだ、自分がどうしたいのか分からないから。


「夕焼が綺麗」


 夕方はあまり出かけないから中々見ない夕焼。


「私は、私はどうしたいの」


 自分の胸に問いかける。


 私はこれから何をしたいのか。


 記憶を取り戻したいのか。


 元いた場所へ、戻りたいのか。


 全ての答えが曖昧だった。





「これからのこと?」


「そうです。クルミちゃんとユズくんは何か考えてますか?」


 私は答えの参考にと思い、二人を訪ねた。


 何回も訪問し、遊んでいるから少しは仲良くなった。


「私は大きな町で働きたいの!」


「町で?」


「うん! 綺麗な服着て、いつか素敵な人と結婚することが将来の夢なの!」


「俺はとりあえず働いて、働いてじいちゃんを楽させたい」


「フリューゲルさんを?」


「そう! 俺達親がいないからどうしても書類の親類は全部じいちゃんになるんだ。なら、色々な金は全部じいちゃんが払ってくれてるだろ? なら、返さないと!!」


「私も! おじいちゃんに恩返しはしたいなって思ってるの!」


「二人とも。素敵な考えをお持ちですね」


「アムネシアは? 記憶取り戻したいとかないの?」


「……特にないのです」


「もったいなーい! アムネシア可愛いし、きっと色々な所で働けるよ!」


「俺もそう思うな。小さな町じゃもったいない!!」


「そう、ですか?」


「「そう!」」


 二人とも、自分が何をしたいのか明確な考えを持っていた。


「アムネシアは、自分の親とかきっといるよね」


「そうですね」


「親、羨ましいな」


「!」


 そうよ。


 二人には親がいない。


 でも、私にはきっと親がいる。


 二人には将来、どう頑張っても持てない大切な人を持っている。


 うん、決めた。


「ありがとう。クルミちゃん、ユズくん」


「うん! 何か役に立てた?」


「もちろん」


「なら、じいちゃんの所に行って来い!!」


「うん!」


「行ってくるね」


「「いってらっしゃい!」」


「クルミちゃん、ユズくん」


「「何?」」


「二人のこと“友達”って思ってもいいかな?」


「今まで友達じゃなかったの!?」


「嘘だろ」


 二人は最初から私のことを友達だと思ってくれていたらしい。


 嬉しいな。


 ここの人達は私に色々な物や感情をくれる。


「初めてのお友達。よろしくね!」


「「よろしく!!」」


 私は二人に背を向け、フリューゲルさんに話をしに行った。

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