第3話 てっちゃん、あやと別れるために鬼になります

 あやと付き合ってもう1年。来年は卒業だ。

 

 10月もそろそろ終わりに近づいている。

 学校近くの通学路は紅葉が落ちたことにより赤い絨毯じゅうたんが敷かれている。

 話は変わるがあと1週間で文化祭が始まる。

 また恒例の「自己主張」のイベントもある。

 俺は今回出ることに決めた。

 学校生活最後だから。あやへの思いを伝えようと考えている。

 この自己主張のイベント原稿を主催者側に提出して中身のチェックを受けなければならない。

 主催者側からはといわれた。



 そして俺は自己主張のイベントに備えて着々と計画を進めていた。


                *


 1ヶ月前あやの家に遊びにきた際にたーにーこと太一が聞いてきた。

 あやの家から帰ろうとしてたらたーにーの部屋に呼ばれた。

 たーにーの部屋には作りかけの作品や工具が置いてある。

 この部屋に来ると木の匂いで安心する。

部屋にはたーにーとりなねえがいた。

「そういえばもう文化系近いんだって? なにするの?」

「俺のクラスはタピオカ屋になりました。他のクラスとかぶったんでじゃんけんで・・・」とりなねえの質問に苦笑いしながら答える。

「タピオカ人気だもん。――ところで、あやとうまくいってる?」

「あ、は、い・・・」

 突然りなねえから聞かれ、否定するにもできないでいた。

 否定しようとするために視線をそらした。

「・・・目が泳いでるな。てっちゃん。昔から嘘つくと顔にでるタイプ」

 きょかれて何も言えないでいた。

「てっちゃん、左首に傷がついてるし、右頬赤いし、ローファーも右足だけかなり汚れてるけどどうした?」

「あっ、それは自分の不注意で・・・」

「嘘ね。てっちゃんはおっちょこちょいタイプじゃないけどな。――あやにやられたんでしょ」

 りなねえの目はごまかせない。

「・・・そうです。あやに全部やられたものです」

 何かと理由をつけてはビンタされるわ、ローファーを踏まれるわ、首を爪でひっかけられるわ。しかもあやの爪は休み時にネイルをするために、長くしているのでとても痛い。

 だいたい理由が「なんとなくムカつく」だ「他の女子と喋っていた」「機嫌が悪いので殴らせて」と全て理不尽な理由によるものである。

「ちょっと写真撮らせてー」とたーにーはスマホを取り出して俺の傷がついてるところをパシャパシャ撮影始めた。

上着を脱ぐようにりなねえが言う。

りなねえは気を使ってるのか、上着脱いだ俺を見ないよう視線をそらしている。

肩甲骨けんこうこつあたりにうっすら痣ができている。

それもたーにーが写真撮る。

たーにーから「もう服着ていいよ」と言われたので着替える。

結局撮ったのは上半身と両足。

俺が服を着替えている間、たーにーとりなねえは写真をみて揃ってため息をついた。

「――てっちゃん、よく耐えたね」

 りなねえが一言呟く。

「てっちゃんにこんな思いさせるなんて・・・・・・妹の代わりに謝ります」

 たーにーとりなねえは勢いよく土下座をはじめた。

「あ、いや、そんなことまでして・・・」

 この場合どうリアクションするのがいいのだろうか。



                  *


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る