エネルギーがたまるのを待つ
うつ病は、回復に時間がかかる病気だ。何しろ、精神エネルギーがゼロになってしまうから、まず動けなくなる。気力が湧かない。何をするのもおっくうで、私は、起きあがあがってから座椅子に座って、何をするでもなく、横たわっていた。デイケアで話を聞くと、朝目が覚めても、ゴロゴロしていたという人が多い。
テレビも見れない。新聞も本も読めない。本当に何もできないのである。このつらさはうつ病になったことがある人にしかわからない。
精神エネルギーが0になるほど頑張ってしまったから、うつ病になったのである。うつ病は脳の病気だから、頑張りすぎて脳がショートしてしまったと思ったらいい。そのショートした脳を治すには、服薬と十分な休息が必要である
ここで「自分は頑張りすぎて、脳がショートして、精神エネルギーが0になってしまったから薬を飲んでしっかり休もう」と割り切って休める人は少ない。早く治そうと、やる気のなさやおっくう感をどうにかしようと、精神エネルギー0の脳で考えてしまう。これがぐるぐる思考である。ぐるぐる思考に陥ると、脳がさらに疲れるので、さらに苦しくなって「死にたい」という気持ちが出てくる。そうなると入院するかどうかという話になる。
私は幸い入院せずにすんだ。遠方に住む父親に電話で毎日話を聞いてもらいながら、何とか、その時期を乗り切った。
エネルギーが少しずつたまってくると、少しずつ、やる気が出てくる。家事はおっくうだが、テレビが見れるようになり、本も漫画も読めるようになり、できることが増えた。今では、こうして文章を書くまでに回復した。ちなみに、今私は、ドーナッツショップでコーヒーを飲みながら、この文章を書いている。
外に出かけられるようになると、かなり回復してきたと思う。精神エネルギーがだいぶたまってきたと言えると思う。
何かをしたいという気持ちが起こったことは大きい。家事はおっくうだが、録画したドラマを観たり、本を読んだり、文章を書いたりするのはおっくうではない。好きなことができて、それに熱中できることは、うつ病の回復では、すごく重要だと思う。なぜなら、好きなことをやっている時は、脳からおそらく快楽を感じさせるドーパミンという物質が出ているからだ。ドーパミンが出ている間は脳が快楽を感じる。
逆に、嫌な気分の時は、脳からノルアドレナリンという物質が出ていると思う。
そして、やはり重要なのはセロトニンだ。ドーパミンとノルアドレナリンのバランスを調整する物質セロトニンが出ることで、脳は平常心を作り出す。
好きなことをやって、しっかり脳からドーパミンを出して、楽しいという気持ちを感じて、セロトニンも十分に脳から供給されるようになれば、精神エネルギーもたまり、かなり回復したと言えるだろう。
それを待つことがうつ病を治すということだと思う。脳が薬と自然治癒力の両方で、回復すること、精神エネルギーが十分充電されること、この2つがそろって、うつ病は本当の回復に向かうのだと思う。
今の私はずいぶんと回復したと思う。あとは、せっかくたまった精神エネルギーを無駄に使わないこと、好きなことをすること、焦らないこと、脳の回復を信じて、時間に任せること、それが本当の回復への近道だと思う。
うつ病は「治す」というより「治る」病気だと考えると、しっくりくる。どうすれば早く治るかとか考えるのではなく、脳の不調が回復していくのを待ち、精神エネルギーが充電するのを待ち、時間が解決するのを待つ、そういう病気だと思う。
だから、私は、精神エネルギーがたまるのを待ち、脳の状態が正常に戻るのを待ち、自然に脳が健康になるのを待とうと思う。
今までどうしたら、早く治るのかばかり考えていたけど、そのこと自体が、回復を遅らせる。うつ病は脳の病気なのだから、自分の脳の自然治癒力を信じて、もっともっと、回復するのを待つしかない。
今、こうして文章を書くことが、また、回復への一歩になることと信じたい。
急がず、時間をかけて、この病気と向き合っていきたい。
読んでいただきありがとうございました。
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