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あつい。頭がぼーっとする。
目がじわじわして、耳も変な感じ。
だるい体をなんとか起こして布団から出ると、母が忙しそうに動き回っていた。
「あんた、起きたの?なら突っ立ってないでさっさと布団片付けなさい。ほらそこ邪魔」
「あのね、体がだるくて……。今日は寝てちゃだめ?」
「熱?この忙しい時に。昨日はなんともなかったじゃない。これから仕事だってのに面倒見てらんないわよ。ほら、お金やるからあとは自分で何とかして」
そう言って手渡されたのは一枚の五百円玉。
もうこちらには見向きもしない。
仕方がないので着替えを済ませ、お金をポケットに入れると外へ出た。
昨日の夜から何も食べていなかったから、お腹がすいていた。
コンビニでおにぎりとジュース、いつもは買ってもらえないアイスを買って、近くの公園のベンチに座って食べた。
アイスが冷たくておいしかった。
お腹が満たされたら今度は眠くなってきて、そのままそこで眠る事にした。
なんだか騒がしい音がして目が覚めた。
何台もの消防車がどこかへ向かっている。
家がある方向だ。
妙な胸騒ぎがして、急いで戻った。
「え……」
二階建ての小さなアパート。
その二階の端の部屋、さっきまでいた場所からものすごい煙が出ている。
お母さんは?どこにいるの?
辺りを見回して探すと、少し離れた人垣の中にその姿を見付けた。
「お母さんっ!」
呼びかけた声にこちらを向いた。
てっきりそのまま来てくれると思っていたのに。
「なんで……」
こっちを向いてくれたのに。
ちゃんと目が合ったのに。
見慣れた背中が離れていく。
すぐに走って追いかけようとしたけれど、人が多くてなかなか前に進めない。
やっと人の波から出たと思った時にはもう、母の姿はどこにもいなくなっていた。
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