第36輪 武 闘 女 子
「いいわ。教えてあげる、私が冒険者になった
姉さんは口元を吊り上げて笑う。
「魔王軍の台頭。それに伴う冒険者の地位の向上。異世界から召喚される勇者という存在。それに目を留めたお父さまとお母さまは、私にある命を下した…………。すなわち、勇者のサポート役として魔王を倒し、家の名を王国全土に轟かせること」
「! そう……。じゃあつまり姉さんは、自分の意志で冒険者になることを選んだわけじゃないのね…………」
私は自分でもわからないけど、なぜか少し悲しい気持ちになる。
「なによその顔は! 私は貴族の長子! 将来の安寧が約束されている。それに冒険者としてもあんたより私の方が上! あんたにそんな顔される筋合いはないのよ!」
激昂した姉さんは私に杖で殴りかかろうとする。それを、ティーナが受け止める。
「本来あたしは手を出すべきじゃないけど。あんたが言ったのよ、『冒険者同士の戦いはご法度』、でしょ?」
「…………ちっ」
姉さんは舌打ちすると、パーティの補助に戻る。
「ありがとう、ティーナ」
今の姉さんを見てわかった気がする。私は姉さんを超えたいんじゃない。そうじゃなくて…………。
***
「やあっ! たあっ!」
ミーニャも魔物に奮戦していた。
「はあっ! ……やっぱりあんた、肉弾戦の方が得意なんだね。魔法使いの癖に……!」
リンはミーニャを
「えへへ。肉弾戦が得意っていうか、魔法は使えないっていうか…………とうっ!」
「…………はあ? だったらどうして魔法使いなんかやってるわけ!? とっととうちと同じように武闘家にジョブチェンジしちゃえばいいのに…………たあっ!」
「私はね、魔法使いとして最強になりたいんだ。私が魔法使いでいることに、意味があるから…………」
「は? 意味わかんないんだけど! 魔法も使えないのに!」
「たしかに今は、魔法が使えないかもしれない。でもね、いつかは使えるようになるって信じてるから。私は私を裏切らないんだ。お母さんに会うときまでは!」
ミーニャの言葉を聞いて、リンはミーニャを睨みつける。
「あんたにどんな事情があるかは知らない。でも、うちは本気で武闘家として生きることにすべてを捧げてるんだ! 片手間で武道をやってるあんたなんかに、うちは負けるわけにはいかない!」
リンは加速して魔物を一匹ずつ確実に倒していく。
「リンちゃん。あなたが武道にかける情熱は見てれば伝わってくるよ。でも、私だってここで負けるわけにはいかない! せっかく友達になれたティーナと絶対お別れしたくないし、リミアの勝負も絶対勝たせてあげたい。私たちが勝つよ! この勝負!」
ミーニャは爆弾を使って、周囲の魔物を一掃する。
「魔法!? いや、爆弾!?」
「ここは広いから、爆弾を使うのも気を遣う必要がないね!」
「魔法使いだけど、魔法が使えなくて、肉弾戦が得意で、爆弾を使う!? ……ずるい……いやちがう! うちはそんな戦い方は良しとしない! 信じるのは自分の武闘家としての力、ただそれだけ! あんたには絶対負けない!」
リンはスキルを使って次々と魔物を倒していく。
「だったら勝負だね! 私の思いとリンちゃんの思い、どっちが強いのか! …………え? わあっ! 危なかった…………。一撃で倒せなくなってる。どうして…………まさか!」
リンはミーニャの様子を見てにやっと笑う。
「どうやら、そっちの僧侶はそろそろ限界みたいだね! ……ほんとはお互い100%の力で勝負したいけど、この隙に稼がせてもらうよ!」
リンは魔物を勢いよく倒していく。
***
「! バフの効果が切れ始めた! くそっ!」
「どうやら、僧侶とその上位職であるビショップの間の力の差が出始めたようだね。今まではほぼ五分五分だったけど、これでこちらの優勢……かな?」
「姉に勝つんじゃなかったのか、リミア……!」
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