第24輪 再 会 偶 像

「うぐっ! …………ん、もう朝か…………」


 私は鈍痛とともに目を覚ます。


 ちらっ、と隣を見ると、ミーニャが床で寝っ転がっていた。


「…………かかとおとしー…………むにゃむにゃ…………」


 …………どうやら、隣のベットで寝ていたミーニャのかかとおとしが私のみぞおちに決まったらしい。…………いや、どんな寝相?


「さて、顔でも洗うかしら…………」


 私はベットから起き上がる。


 あれから私たちは無事マグニアの街にたどり着き、宿も見つけることができた。


 そして、歩きっぱなしで疲れた私とミーニャ(私はミーニャにマッサージした分余計に疲れた)はすぐに眠りについてしまったんだ。


「…………まあ、ミーニャ起こすのは後でいっか」


 ミーニャを踏まないようにしつつ部屋を出ようとドアを開けた瞬間。


「おはよう二人とも! さっそく情報を得に商業ギルドに向かうぞ!」


 キリヤがドア前にスタンバっていた。


「起き抜けの乙女の顔を見るな変態!」


「ぐはっ!」


 零コンマ数秒で正拳突きを繰り出す。


「支度するからしばらくそこでうずくまって待ってなさい!」


「…………理不尽だ」


 私は正拳突きでぼんやりした頭を覚醒させ、すっきりした朝を迎えたのだった。


***


「あれがこの街有数の商業ギルドらしい。きっと有益な情報があるに違いない…………腹が痛い」


「う……まあ9:1でキリヤに非があるとはいえ私も少し強く殴りすぎたわ、ごめんなさい…………そして私もお腹が痛い」


「ごめんねリミア、私寝相悪くて…………夢の中で魔物と戦ってたのは覚えてるんだけど…………ちなみに私は朝ごはんいっぱい食べてお腹いっぱい!」


「…………それはよかったな。ほら、着いたから中に入るぞ」


 キリヤが扉をがちゃりと開けて、私たちはギルドの建物に入る。


 中は人で溢れかえっていて、いろいろな商談がなされているようだった。


「情報屋はいるか!? 知りたいことがあるんだが……!」


 キリヤが声を上げると、奥から中年…………だけど鍛冶屋の親父と比べたら若そうな見た目をした男が歩いてくる。


「お、兄ちゃん情報屋をご所望かい? 俺はこのギルドのオーナー、ギルバートだ、よろしくな。今情報屋を呼んでくるから待ってな!」


 そう言うと男はすぐに奥へと戻っていった。


「…………なんだか軽そうなオーナーね。まあ、とりあえずはお手並み拝見といきましょうか…………ん? あれは…………」


 椅子に座って物思いにふけっている少女がいた。間違いない、昨日の剣士だ。


「は、ハロー! 昨日振りね。こんなところで会えるなんて、私たちきっと運命ね! どう? もう一度私たちのパーティに入ること、考えてみない?」


「リミア……お前も人のこと言えないくらい軽いぞ、ノリが…………」


 私たちを確認した少女は、明らかに不機嫌そうな顔になる。


「はあ、またあんたたち…………何度言われても答えは変わらないわ、これで最後にしてちょうだい」


 少女はスッと立ってその場から立ち去ろうとする。


「なあ、別に俺たちのパーティに入る必要はない。だが、ひとつ聞いてもいいか? アイドルとして活躍したいなら、アイドルにジョブチェンジすればいいだろう。どうして剣士として戦っていた?」


「……………………」


 少女は悲しそうな、そして悔しそうな表情を浮かべる。


「いろいろ、事情があるのよ。もう、あたしに話しかけないで」


 少女はそう言うと、ギルドを出ていってしまった。


「…………」


「兄ちゃんたち、クリスティーナと知り合いなのかい?」


「…………きゃあ!」


 奥に行っていたはずのオーナーがいつの間にか背後にいた。


「あんたはあの子のことを知っているのか?」


 キリヤに尋ねられたオーナーは、口の端を歪める。


「ああもちろん。なんたって、クリスティーナは俺の娘だからな」


「……………………」


「「えーーーー!!」」


 私とミーニャは時間差で驚きの声を上げる。

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