第19輪 武 器 奪 還

「くそ、固くて攻撃しても弾かれる……!」


 チャクラムでの攻撃は、ゴーレムにことごとく弾かれていた。


「うー……。この固い体、殴ったらこっちが怪我しそうだよ……」


 ミーニャは反撃の機会を伺いながらゴーレムの攻撃をかわし続けていた。


「となるとやっぱり、ゴーレムにダメージを与えるためには……」


 ミーニャの爆弾しかない。隙を見つけて叩き込むしか……!


「俺が隙を作る! 頼むぞミーニャ!」


「りょうかい!」


「おおおおお!」


 キリヤはチャクラムを操ってゴーレムの注意を逸らす。


「今だミーニャ!」


「うん、任せて!」


 ミーニャが爆弾を取り出そうとしたその時だった。


「ウオオオオオオオオオオ!」


「きゃあ!」


 ゴーレムはチャクラムを振り払い、ミーニャを殴りつけた。


「ミーニャ!」


「うう……」


 私はすぐにミーニャに駆け寄る。…………よかった、このくらいの怪我なら、私の魔法……で…………。


 そうだ、私いま、杖持ってないんだった!


「……っ! ヒール!」


 ミーニャのお腹に両手をかざして回復魔法をかける。でも…………。


「そんな…………だめだ、杖が無いと上手く魔力がまとまらない……!」


 ここで、私は改めて武器の大切さを思い知らされる。…………いつもの半分の力も出せないなんてっ……!


「リミア……だい、じょうぶ。私はもう動けるから……!」


「ミーニャ!」


 そう言ってミーニャはゴーレムに向かって走り出す。


 ミーニャ……まだ痛みがあるはずなのに…………。


「…………私の杖、探さなくちゃ!」


 私は積みあがった武器の山から私の杖を探し始める。


「くそっ! どの部位に攻撃すれば弾かれずにダメージを与えられるんだ!」


「オマエノコウゲキ、ゼンゼンイタクナイナ!」


「ぐはっ!」


「キリヤ!」


 今度はキリヤがゴーレムの攻撃を受けているのが見える。早く! ……早く杖を探し出さないと!


「ソッチノオマエガナニカヲタクランデルノハワカッテイル! ナニモサセナイ!」


「ああもう! ぜんぜん爆弾投げるチャンスが無いよ!」


「くそっ! このままじゃ負けてしまう! 何か打つ手は無いのか!?」


「オワリダボウケンシャ!」


 ゴーレムの腕が、キリヤとミーニャの体を捉える。


「ぐあっ!」


「ううっ!」


「モウ、オキアガッテコレマイ…………」


「なんてな!」


 キリヤとミーニャは地面から勢いよく起き上がる。


「ナニ! イッタイドウヤッテ……!?」


「ふう…………間に合ったようね!」


「マサカ、オマエガ!?」


 私は杖を天に掲げ、二人に魔法をかけていた。


「オート回復に防御バフ、攻撃バフ。それにスピードアップのおまけ付きよ! やっちゃいなさい、キリヤ、ミーニャ!」


「ああ!」


「うん!」


 私たちの逆襲が始まる。


「はあ!」


 キリヤのチャクラムは攻撃バフの効果でゴーレムにダメージを与える。


「やあ!」


「グオオオオオオオオ!」


 隙を見て放り込まれたミーニャの爆弾はゴーレムに大ダメージを与える。


 ああ、そうか……。私は忘れてた。いつだって戦いの時は、私は杖とともに在ったんだ。


「ラスト! どかーん!」


 ミーニャの爆弾がゴーレムの頭に直撃し、ゴーレムはズウウウン……と音をたてて倒れる。


「…………俺たちの勝ちだな、ゴーレム」


 キリヤはゴーレムに近づいて話しかける。


「…………ソウカ、オレノマケ、カ…………イイダロウ。オマエノブキニタイスルカンガエカタヲ、オレハミトメヨウ…………」


 そう言い残して、ゴーレムは消え、後には固い土の塊が残った。


「これが新しいチャクラムの素材、か……。安心しろ、俺はお前の想いを無駄にはしない」


 キリヤは土の塊を優しく手に取る。


「それじゃあ、帰るか。この部屋に集められた武器のことは、街の掲示板にでも張っておこう」


「ねえ、キリヤ?」


「なんだ? リミア?」


「…………全部の武器をちゃんと元の持ち主が取りにくる、なんてことは、きっとないわよね…………」


「まあ、そうだな…………。でも、元の持ち主が取りにこなくても、また新しい持ち主が見つかるはずさ。きっと、誰かがここにある武器たちを必要としている」


「…………そっか、そうよね!」


「ふっ。でもまさか、リミアからそんなことを聞くとはな。それを含めて、ここに来て正解だったというわけだ」


「う……まあ、ね。武器のありがたみも分かったしね! もう抱きしめて離さないわ! 私の杖…………」


 その瞬間、バキッ、と。嫌な音が鳴る。


「…………え? いやあああああ! 私の杖が真っ二つに!」


「…………今までの冒険でだいぶ痛んでいたんだろうな…………」


「だ、大丈夫だよリミア! 鍛冶屋のおじさんに直してもらおう? ね!」


「そうよね? 直るわよね? 早く帰りましょ! 早く!」


 こうして私たちは、新しいチャクラムの素材と、それ以上の大切なものを得た。


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