第18輪 泥 土 人 形
「さて、あれから洞窟内を
「この扉の奥にある、そういうことだね!」
私たちは洞窟の最奥、ゴーレムがいるという扉の前に立っていた。
「ゴーレムが私の杖を持ってるなら、勝って取り戻す! キリヤ、ミーニャ、行きましょう!」
扉を押すと、ゴゴゴゴ…………という音とともに扉が開いていく。
漂うボス部屋感にゴクリ、と唾をのむ。
「さあ、入るぞ」
キリヤとミーニャに続いて私も部屋に足を踏み入れる。
「…………って、何この部屋!? 武器がいっぱいじゃない!」
部屋にはいたるところに武器が積まれていた。
「ゴーレムは武器コレクターなのかな?」
「さあな。だが、それにしてはずいぶん痛んだ武器が多いようだが?」
その時、地面からグラグラと振動が伝わり、私たちは体勢を崩す。
「な、何!?」
「見ろ! 目の前の地面が盛り上がっているぞ!」
そして、その巨大な体躯が姿を現す。
「……土でできた巨人。こいつがゴーレムか……!」
現れた魔物は、私たちの5倍はあると思われる土で形づくられた巨大な体に、赤い眼光を宿していた。
「ソウダ、オレガ、ゴーレムダ……」
……あ、このゴーレム、喋るタイプの魔物なんだ…………。
「しゃ、シャァベッタァァァァァァァ!!」
「ミーニャ、魔物が喋ったくらいでそんなに驚くな。◯クドナルドのCMじゃないんだから…………。確か、知的レベルの高い上位の魔物は言葉を話すとチュートリアルにも書いてあったはず…………」
「へ? あ、ああごめんね。初めてだったからつい……。ていうか、マクドナル◯ってなに?」
「…………気にするな。それよりゴーレム。戦う前に聞いておきたいことがある」
「そうそう! ここにある武器。きっと洞窟に来た冒険者から奪ったものよね? …………どうして冒険者から武器を奪うの!?」
ゴーレムの赤い眼光が私の方を向く。
「ドウシテ、ダト……? オマエタチガ、ブキヲタイセツニセズ、ヒドイアツカイカタヲシテイルカラダ!」
「…………どういうこと?」
「オマエタチボウケンシャノツカッテイルブキハ、モトモトオレタチマモノカラトレタソザイダロウ? ソレヲゾンザイニアツカウトイウコトハ、オレタチマモノヘノボウトクニホカナラナイ!」
「なるほど。つまり、同胞の素材で作られた武器を雑に扱われるのが許せないってことか…………。これで、リミアの杖だけ取られたのも納得だな」
「タタカイニマケテブキノソザイニサレルコトハカクゴシテイル…………。ダガ、ソレデモブキニナッテヒドイアツカイヲサレテイルナカマノスガタヲミルノハココロガイタム…………」
「で、でも……! 武器は私たち冒険者の物なんだから、私たちが使いたいように使う権利はあるはずよ……!」
「デハ、ギャクノタチバニナッテカンガエテミロ。オレガオマエノホネヤニクヲツカッテツクッタドウグヲザツニアツカッテイタラドンナキモチニナル?」
「…………す、すごいグロいこと言うじゃないこのゴーレム…………鳥肌が立ってきたわ…………」
「オマエタチガシテイルノハソウイウコトダ」
ここでキリヤがゴーレムの前に立つ。
「お前の言いたいことは分かった。だが、武器は常に冒険者とともにある。喜怒哀楽を分かち合い、敵と対峙し、長い時をともに過ごす。…………そして時には、武器の魅力で鼻血を流す」
「…………最後のはあんただけでしょ」
「俺は武器を大切にし、一番武器が輝く状態を維持し続けたいと思っているが、たとえそうでない冒険者がいたとしても、そいつと武器との間にある思い出は消えるものじゃない。酸いも甘いも冒険だ。それに…………」
キリヤは私の方を振り向く。
「当たり前だった日々から、些細なことで武器の大切さに気づく冒険者だっている。そんな人たちから武器を一方的に奪うのは、それこそ武器への冒涜だ!」
「キリヤ…………」
「ソレガオマエノカンガエカ…………ナラバ、オレヲタオシテショウメイシテミセロ!」
ゴーレムはバチィン! と拳を合わせる。
「ああ! いくぞ、リミア! ミーニャ!」
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