第17輪 洞 窟 探 検
次の日の朝、私たちはさっそくゴーレムのいる洞窟へ向かうべく、ミーニャの村へ続く、私たちが来た森とは反対側にある森を歩いていた。
「ほら、見なさい! 昨日のことがあって、私もちゃんと杖を磨いたんだから! どう? やればできるでしょ!」
私は、でん! と杖をキリヤとミーニャに見せつける。
「リミア、お前それ、『昨日はちゃんと風呂に入ったぞ、すごいだろ!』って言ってるようなものだぞ」
「そんなレベル!? ……ミーニャは褒めてくれるわよね?」
「え? あ、うん……がんばったね、リミア」
ミーニャちゃん、顔が死んでる。その顔で褒められると逆に心がしんどいんだけど……。
「お、あったぞ洞窟。さっそく入ろう」
「うん!」
「あ、ちょっと待って二人とも!」
うう……昨日から少し疎外感を感じる。
***
「……入って10分。特に変わったことは今のところ無いな」
「ゴーレムは洞窟の最奥にいるっ、て鍛冶屋のおじさんは言ってたね」
「とにかく進むしかない、か……。……! 物音が聞こえる、気をつけろ二人とも!」
「…………? 何の姿も見えないけど……きゃあ!」
私は上から襲ってきた何かに悲鳴を上げる。
「リミア! ……上か! コウモリみたいなやつが何匹かいるな……。ミーニャ、いくぞ!」
「うん! …………あ、でもこんな狭いところじゃ爆弾使えないし、空飛んでるんじゃ私にはどうしようもできないかも…………」
「じゃあミーニャはリミアを頼む! こいつらは俺が倒す! はあっ!」
キリヤはチャクラムを見事魔物に命中させる。
「よし、まずは一匹……って、こいつら逃げてくぞ!」
「まあ、逃げてく分には別にいいんじゃないかな? ゴーレム戦の前に体力無くなっても困るしね…………リミア、大丈夫?」
ミーニャが私に手を差し伸べる。
「ありがとう、ミーニャ。幸い私に怪我は無いわ。さて、先に進みましょ……あれ?」
そこで、私はある違和感に気づく。
「? どうしたのリミア?」
「…………無い」
「え?」
「私の杖が無ーい!」
いくら周りを見渡しても、私の杖が見当たらない。
「なんで? どうして? …………ま、まさかさっきの魔物、私の杖を持ち去っていったんじゃ……!」
「まったく……そういうことは早く気づけ! 今すぐ追うぞ!」
「うう……ごめんなさい!」
***
「とりゃ! …………これで7匹目。またはずれか」
キリヤは倒した魔物を確認する。
「なかなか見つからないねえ、リミアの杖を奪った魔物」
……これ以上、無駄にキリヤの体力を消耗させるわけには…………。
「ねえ。杖は街に戻ったら買えるし、私の杖はもういいから、今はゴーレムを倒すことを一番に考えない?」
「でも、リミア……本当にそれでいいの?」
「大丈夫よ。私は二人と違って武器にそんなに思い入れも無いし、鍛冶屋の言う通り、今までぞんざいに扱ってきたから…………。きっとこれは、武器を大切にしなかった私への、罰なんでしょうね…………」
キリヤはずいっと体を動かして私の前に立つ。
「な、何よ……?」
「そう思う気持ちがあるのなら、絶対に見つけだして取り返せ! ……そして、これから大切に扱えばいい。普段どんなにひどく扱っていても、お前が杖とともに過ごした時間だけは、俺がチャクラムとともに過ごした時間とは比べ物にならないくらい長いものなんだからな」
「キリヤ…………」
「そうだよ! きっとリミアがまっすぐ向き合えば、杖だって応えてくれるよ! …………まあ、まだ魔法を使えない私が言うのもなんだけどね! えへへ……」
「ミーニャ…………」
そっか……。私は冒険者として大切な気持ちを、忘れてしまってたのかもしれない。
「ありがとう、二人とも! 私の杖探し、もうちょっとだけ付き合って!」
二人は、笑顔で頷いてくれた。
「よし、それじゃあ先に進むか!」
「レッツゴーだよ!」
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