第14輪 新 生 出 発
「ミーニャ、忘れ物は無い?」
「うん、ばっちりだよ!」
「それじゃあ、出発するか」
そうしてミーニャの家を出た私たちを待っていたのは、村の人たちだった。
「み、みんな! どうして揃いも揃って私の家に……?」
「決まってるだろ。ミーニャを盛大に送り出すためだよ」
中年の男性が前に出てきて言う。
「おじさん……。でも、なんで?」
「見てれば分かる。今度はしばらく帰って来ないんだろ? 新しい仲間を見つけて、一体どこまで行くのかは知らないけどな」
「おじさん……」
そして今度はミーニャの前に、二人の少年少女が出てくる。
「アット! イズ!」
「がんばれよ、魔法の使えない魔法使い!」
「私たちは、たとえ魔法が使えなくてもミーニャならすごい魔法使いになって帰ってくるって信じてるからね!」
「うん、二人ともありがと……って、え!? どうしてそのことを……」
アットと呼ばれた少年と、イズと呼ばれた少女は顔を合わせて笑う。
「はは! 知らないとでも思ってたか? ……実は見てたんだよ。お前が秘かに何かを作ってるところを。まさか爆弾とは思わなかったけどな!」
「え、ええ!? じゃあ、村のみんなは私が魔法使えないってこと……」
村の人たちはうんうん、と頷く。
「そんなあ! じゃあ、必死になって隠そうとしてたのも、ぜんぶみんなには筒抜けだったの!? ……は、恥ずかしいよお……!」
「あはは。でもね、魔法が使えないミーニャを、みんな恥ずかしいだなんて思ってないよ。だって私たちは、ミーニャの努力を知ってるから……。ミーニャはいつだって、爆弾作りや体術の練習なんかより、魔法を使うための努力に時間をかけてた、って」
「えへへ……結局魔法は使えなかったけどね……」
「『まだ使えない』、だろ?」
「え?」
「まだまだこれからじゃねえか。努力を続ければきっと、魔法が使える日だって来るさ!」
「アット……」
「そういうわけだから、期待してるよ! 未来の最強魔法使い!」
「イズ……」
私は、またミーニャが泣いてしまうと思ったけど、ミーニャは泣かずに、その代わりに満面の笑みで答えた。
「うん、任せてよ! みんなが自慢できるようなすごい魔法使いになって帰ってくるから!」
村の人たちの激励を受け、ミーニャ、そしてキリヤと私は村を発つ。新生・勇者キリヤのパーティの冒険が幕を開ける。
***
「それじゃあ、タールズに向けてレッツゴーだよ!」
村を出た私たちは、ミーニャを先頭に目的地・タールズに向けて歩を進める。
「ミーニャ、ずいぶん元気だな」
「うん! 村のみんなに嘘をついてたことが心残りだったから、それが解消されてすっきりしてるんだ! ……みんなの励ましももらったし、これで私はもう、すごい魔法使いになるしかなくなっちゃったよ!」
「ミーニャ……大丈夫? 無理してない?」
「……あはは。……ほんとはちょっと寂しいかな。村のみんなは私にとって本当の家族みたいなものだから」
「それなら、帰った時の喜びは一層だろうな」
そう言ってキリヤは笑う。
「キリヤ……そうかもね! むしろみんなとまた会うのを楽しみにしてなきゃだよね!」
「ああ……俺も初めてチャクラムを見た時から、この世界に来て実際にチャクラムを手にするまで相当な時間が経っていたが、それゆえにチャクラムを手にした時の感動はすばらしいものだった……!」
「チャクラムといっしょにしてあげるのはやめなさいよ」
「なんだと! それじゃあまるで俺のチャクラムへの愛がミーニャの村の人たちへの気持ちに負けるみたいじゃないか!」
「はいはい。変態さではあんたは誰にも負けてないわよ」
「あはは! キリヤは本当にチャクラムが大好きなんだね!」
ミーニャはからからと笑う。
「もちろんだ! チャクラムの魅力なら24時間余すところなく語り続けられるぞ! ミーニャにも今度話してやろう!」
「えへへ、それは遠慮しておくよ!」
「そう遠慮せずに!」
「えへへ……。大丈夫だから、ほんとに」
こうして、ミーニャを加えてにぎやかになった私たちのパーティは、目的地・タールズにたどり着く。
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