第23話 戦後
戦いの余韻は、
「う~ん。やっぱりすごい造りだね。」
「テンション高いですね。本田さん。」
本田さんは相変わらずの
「それを言うなら、君だってそうじゃないか。1人の隊員を失ったんだよ、隊長くん。」
ぐっ。図星だ。言い返せない。
「こういうのには、慣れているんですよ。」
苦し紛れにそう言う。
本田さんは苦笑で受け止めていた。
「でも、本当に凄い造りだ。」
本田さんは、また同じことを言う。
「あの、さっきから何しているんですか?施設外周回って写真撮っただけで、何か分かるんですか?」
いい加減、疑問に思ったので尋ねる。
「うん、分かるよ。じゃあ、何が分かると思う?」
「逆に問い返しますが、それで分かった事によってメリットは何ですか?」
そう返してみる。さて、反応はどうだろうか?
「質問を質問で返すのか。」
本田さんは、つまらなそうな顔をして言う。
やっぱ、そうですよね。想像してました。
「コペルニクス的展開ですよ。180゜の展開。」
「へー、博識だね。屁理屈っぽいけど。」
「いえいえ、薄識ですよ。」
嫌みで返す。でも、この人が近くに居ると落ち着くな。いつも同じ、テンションでペースだからか?
実際、金剛さんが欠けてから、隊員は皆
悲しみなんて1
「で、話を
「なんだ、分かっているなら最初から言えばいいのに。」
口をすぼめて言う。
「で、この施設はなかなか古いよ。でも、ただ古いだけじゃない。」
おもちゃを前にした子どものように、目を
「建築方法は、最新鋭のやり方だね。でも、この施設は建てられて20年は経過しているよ。」
「え?どういう事ですか?」
「つまり、相当頭がキレるやつがいるって事だな。」
確信したかのような言い方だった。
「でも、俺が
ハウザーは除くけど。
「バカと天才は紙一重って言うでしょ。」
確かに、天才などと呼ばれた偉人達の多くは知的障害者が多いという統計というか法則?が出ている。
IQ180と言われ、相対性理論を提唱したアインシュタインや、天下統一を果たした豊臣秀吉、多視点図法と言う新しい描きかたで、評価されているピカソなどもそうだ。
「確かにそうですね。」
本田さんの考え方を肯定する。
「てか、20年ってギルナとガイナなんて生まれていないじゃないですか。」
「そうだね。そのときはもしかしたら、ドミニオン8幹部自体が無かったかもね。」
それだったら、潰すのも楽だっただろう。
「そう言えば、何で建築日が分かったんですか?」
「ああ、昔建築関係の職に就いていたからね。」
本田さんは、昔懐かしむように、染々と答えた。
「じゃあ、帰ろうか。報告書にまとめなきゃいけないし。」
「そうですね。眠いです。」
率直な意見を言う。
「まぁ、君が元気そうで良かったよ。」
元気?いつもと変わらずだけど。
「いや、金剛さんの死に罪悪感を抱いていないかなって思ってね。」
「自分が気を失わなければ、金剛さんは死なずに済んだって事ですか。」
それを考えて、苦悩して後悔している奴は愚か者だろう。たらればの話は空理空論だ。
「そんな意味の無い事なんてしませんよ。」
「そうか、なら良かった。」
そう言って、本田さんは笑った。
「さあ、戻ろう。」
◇ 1週間後
「こ、これが、紫色の液体、通称
恐る恐る言葉さんが、書類を皆に配る。
「えっと、説明しましゅっ。」
あ、噛んだ。
言葉さんが恥ずかしそうに顔を赤くする。
「私は、ガラス円柱内から紫色の液体を採取し、鑑定しました。」
確かに、細かいデータと実験内容が乗っていて、ちゃんと対照実験で行われていた。
「えっと、まず、DNA鑑定からせ、説明します。素材としては、ひ、人の体液だと思います。しかし、ゲノム構造が根本的に変化していて、未知の物質もありました。」
ここで、ふうっと言葉さんが息を吐く。なかなか緊張しているようだ。
「えっと、紫色の物質は原子から未知の物質で、私達研究者は
デオキ、、、何だって?てか、よく噛まずに言えるな。さっきは噛んでいたのに。
「また、効果としては、脳のリミッター解除。筋力の増強。細胞の活性化による、身体能力の飛躍的上昇。五感の発達。等が挙げられます。」
すっげー強いな、その
「しかし、急激な細胞の老化により、脳及び臓器への重い後遺症が高確率で発症し、摂取量によれば最悪死に至ります。」
やっぱり、ギルナはドーピングの
「あと、実験結果ですが。まず、あの液体のゲノム構成上、非常に酸化しやすく腐食も早いです。なので、あのガラス円柱は真空状態になっていて、注射器にはアルゴンや窒素ガスが充填されていました。」
アルゴンも窒素も共に変質しにくいからな。
「また、沸点が70℃で凝固点が有りません。」
凝固点が無い!?どういう事だ。0
「また、蒸発させた
お、全然噛んで無い。集中しているなぁ。
その後も
「重要な部分は以上になります。他詳細は、レポートか私に聞いて下さい。」
言葉さんは、やりきったかのような達成感を覚えたのか、自信げに言った。
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