第20話 突撃
◇ 日本支部突撃日
「搭乗の準備は整いましたか?」
騒音と突風をまき散らす大型輸送機に乗り込む。
「高さどのぐらいから落下するのですか?」
「標高1000mくらいだね。」
隊長さんじゃなくて、、えーっと、
あんまインパクトが無くて憶えにくいんだよな。その名前。
「その高さじゃ、見つかりませんか?飛行機の航路じゃありませんし。」
「でも、高すぎると着地のリスクが高くなるし、みんなもパニックになるだろ。」
確かに一理あるが、見つかれば見つかればで、相手だって対応してくる。
1番怖いのはスナイパーによる、空中射撃だな。
しかし、そうも言っていられない。戦争や内紛に関わらず争い事には、怪我や死は付き物だ。
ひどい現実だがな。
◇
「目標地点まで、7.2Km。輸送機出発します。」
とうとう、戦火の口火が切られた。
「あー怖い。これが終わったら飲みに行くか。」
金剛さんが陸軍さん達と陽気に話している。
てか、金剛さんに怖いもの何て無いだろ。
「どうだ天河隊長も行くか?」
話がこっちに振られる。
「未成年だからオレンジジュースで良いなら。行きましょうか。」
なんて返すと、
「がはははっ。」
腹を抱えて笑っていた。
全く陽気な人達だ。
◇
「間もなく目標地点に到達します。各員準備をお願いします。」
パイロットのアナウンスが流れる。
「じゃ、お互い頑張りましょう。柳さんも飲みに行きますよ。」
「分かった。」 「おう。」
「目標地点に到達しました。各員戦闘域へ突入して下さい。」
次々と上空から陸軍さん達が飛び降りる。
やっべー下見るとめっちゃ怖い。そう楽々と飛び降りれない。幾ら訓練したからと言って、死にいくような事を好き好んでしたくない。
「さぁ、行きたまえ。舌を噛まないようにな。」
優しそうな陸軍さんが優しい
「行って来ます。」
覚悟を決めて飛び降りる。
風を切る感触が気持ちいいっていう人がいるが、俺は超高速で落下する重力の感触が好きじゃない。
ああ、死にたくなったらスカイダイビングしよ。
曇っている
下を見れば、狙撃されて落下する兵士達がいた。スナイパーは着地した陸軍さんによって無力化されていたが、死んだ人間の鮮血が戻る事も無ければ、抉れた血肉が修復することも無い。
◇
「よっと。」
山間に無事着地出来た。が、被害は少ないわけでない。こちらは相手を無力化するだけで殺しはしないのに対して、相手は確実に殺意を持っている。
低い姿勢のまま、前の陸軍さん達についていく。中心が近い左翼側から攻める算段だ。
先発隊と敵方が衝突したのだろう。前方で騒乱の音が聞こえてきた。
◇
重い防弾チョッキを羽織りながら、駆け足で進む。
とうとう、左翼側の突入口の北通路までやって来た。
「左翼隊の諸君!
佐藤さんの号令がかかる。俺は突入してから、金剛さんと合流するんだったな。あと3分休憩でもするか。
「総員構え!突撃ー!」
そう言えば、今思ったけどこの声って敵さんにバレないの?
陸軍さん達が入り口のドアを破壊し、進軍する。
この施設はコの字型になっていて、俺らが突入するのが、コの下の棒の先端部分で、中心部はコの下の棒と直角に交わっている棒の交点にあたる。
〈蓋世〉は単独で動くので部隊から離脱し先を急ぐ。目指すは中心部だ。絶対にドミニオン8幹部がいるだろう。
◇ 先発隊のリーダー視点
「構え、、、撃て!」
非殺用に作られたプラスチック製の弾丸だが、当たればひとたまりもあるまい。
「そのまま突撃!」
次々と敵が取り押さえられて行く。
(このままいけば、そう長くはあるまい。)
そう思案していたら、
「ぐうぉ。」「ぐあっ。」「うっ。」
何者かによって次々と部下がやられていく。
「なんだ!何が起きている!」
殺された部下の中心に
「綺麗だな、本当に綺麗だ。この
その青年は両手に持ったナイフに付いた血を舐めた。
「囲め!囲むんだ!」
我に返ったリーダーは指示を出す。しかし、、、、
「無駄だよ。」
奥から出てきたもう1人の青年によって囲んでいた部下が射殺されてしまう。
最初は数十人いた部下も今では数人となっていた。
一方的に
「全員でかかれ!」
「あーあ、馬鹿だ。」 「確かにバカだねぇ。」
後には2人の青年と倒れ伏した死体しか残らなかった。
◇
先発隊の音が消えた。敵を倒したか、はたまた全滅させられたか。どうやら後者の可能性が高そうだ。
ともかく金剛さんと合流しなければ。
「もしもし、金剛さん。今どこら辺ですか?」
〈蓋世〉専用のマイクで尋ねる。少し間を置いて、返答が返って来た。
「あと、200mほどで着く。間に合いそうか?」
「あ、僕の方が遅いです。少し待っていて下さい。」
「了解。」
途中で大量の死体を見つけた。8幹部の仕業だろうか?
もう少しで辿り着くな。前方には金剛さんが周囲を警戒しながら待っていた。
◇
「この奥が中心部だ。」
金剛さんは、いかにも頑丈そうな扉を指さして言った。
「じゃあ、開けますか。」
「どうやってやるんだ?力ずくでは無理だと思うぞ。」
「ピッキングですよ。」
俺は、専用のクランクとピックを取り出した。
「あ、中に敵がいると思うので、注意していて下さい。」
扉の前に立ち、小声で話しかける。
金剛さんは数歩離れた位置で
カチャリ、カチカチとピンが噛み合う音が数度聞こえ、最後にカチンと響きのいい音がなった。
後ろを振り向き、お互いに頷く。
金剛さんと立ち位置を入れ替え、構える。金剛さんは拳銃を片手に扉に手をかける。
次の瞬間、ドゴンと音を立てて、突入した。
その先には、、
「なんだ。お前ら。」 「おもしろそうな客人だなぁ。」
先程の青年が居た。
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