第20話 突撃

◇ 日本支部突撃日

「搭乗の準備は整いましたか?」


騒音と突風をまき散らす大型輸送機に乗り込む。


「高さどのぐらいから落下するのですか?」

「標高1000mくらいだね。」


隊長さんじゃなくて、、えーっと、佐藤 耀太さとう ようたさんが答えてくれた。

あんまインパクトが無くて憶えにくいんだよな。その名前。


「その高さじゃ、見つかりませんか?飛行機の航路じゃありませんし。」

「でも、高すぎると着地のリスクが高くなるし、みんなもパニックになるだろ。」


確かに一理あるが、見つかれば見つかればで、相手だって対応してくる。

1番怖いのはスナイパーによる、空中射撃だな。


しかし、そうも言っていられない。戦争や内紛に関わらず争い事には、怪我や死は付き物だ。

ひどい現実だがな。


「目標地点まで、7.2Km。輸送機出発します。」


とうとう、戦火の口火が切られた。


「あー怖い。これが終わったら飲みに行くか。」


金剛さんが陸軍さん達と陽気に話している。

てか、金剛さんに怖いもの何て無いだろ。


「どうだ天河隊長も行くか?」


話がこっちに振られる。


「未成年だからオレンジジュースで良いなら。行きましょうか。」


なんて返すと、


「がはははっ。」


腹を抱えて笑っていた。

全く陽気な人達だ。


「間もなく目標地点に到達します。各員準備をお願いします。」


パイロットのアナウンスが流れる。


「じゃ、お互い頑張りましょう。柳さんも飲みに行きますよ。」

「分かった。」 「おう。」


「目標地点に到達しました。各員戦闘域へ突入して下さい。」


次々と上空から陸軍さん達が飛び降りる。

やっべー下見るとめっちゃ怖い。そう楽々と飛び降りれない。幾ら訓練したからと言って、死にいくような事を好き好んでしたくない。


「さぁ、行きたまえ。舌を噛まないようにな。」


優しそうな陸軍さんが優しい表情かおして、めっちゃ怖いことを進めてくる。


「行って来ます。」


覚悟を決めて飛び降りる。

風を切る感触が気持ちいいっていう人がいるが、俺は超高速で落下する重力の感触が好きじゃない。

ああ、死にたくなったらスカイダイビングしよ。


曇っている鈍色にびいろの空は自身の心の色のように見えた。風音によって何も聞こえないが、自身が危惧したことが起こった事は分かった。

下を見れば、狙撃されて落下する兵士達がいた。スナイパーは着地した陸軍さんによって無力化されていたが、死んだ人間の鮮血が戻る事も無ければ、抉れた血肉が修復することも無い。


「よっと。」


山間に無事着地出来た。が、被害は少ないわけでない。こちらは相手を無力化するだけで殺しはしないのに対して、相手は確実に殺意を持っている。


低い姿勢のまま、前の陸軍さん達についていく。中心が近い左翼側から攻める算段だ。

先発隊と敵方が衝突したのだろう。前方で騒乱の音が聞こえてきた。


重い防弾チョッキを羽織りながら、駆け足で進む。


とうとう、左翼側の突入口の北通路までやって来た。


「左翼隊の諸君!一〇 伍〇ひとまる ごーまるより、突撃をする。総員準備せよ。」


佐藤さんの号令がかかる。俺は突入してから、金剛さんと合流するんだったな。あと3分休憩でもするか。


「総員構え!突撃ー!」


そう言えば、今思ったけどこの声って敵さんにバレないの?


陸軍さん達が入り口のドアを破壊し、進軍する。

この施設はコの字型になっていて、俺らが突入するのが、コの下の棒の先端部分で、中心部はコの下の棒と直角に交わっている棒の交点にあたる。


〈蓋世〉は単独で動くので部隊から離脱し先を急ぐ。目指すは中心部だ。絶対にドミニオン8幹部がいるだろう。


◇  先発隊のリーダー視点

「構え、、、撃て!」


非殺用に作られたプラスチック製の弾丸だが、当たればひとたまりもあるまい。


「そのまま突撃!」


次々と敵が取り押さえられて行く。


(このままいけば、そう長くはあるまい。)


そう思案していたら、


「ぐうぉ。」「ぐあっ。」「うっ。」


何者かによって次々と部下がやられていく。


「なんだ!何が起きている!」


殺された部下の中心に佇んだたたず     1人の青年が居た。


「綺麗だな、本当に綺麗だ。この迸るほとばし  鮮血はよぉ。」


その青年は両手に持ったナイフに付いた血を舐めた。


「囲め!囲むんだ!」


我に返ったリーダーは指示を出す。しかし、、、、


「無駄だよ。」


奥から出てきたもう1人の青年によって囲んでいた部下が射殺されてしまう。

最初は数十人いた部下も今では数人となっていた。

一方的に蹂躙じゅうりんされ、こちらの攻撃が効かないとなれば、幾ら訓練された兵士といえど、容易に平常心を失う。


「全員でかかれ!」

「あーあ、馬鹿だ。」 「確かにバカだねぇ。」


後には2人の青年と倒れ伏した死体しか残らなかった。


先発隊の音が消えた。敵を倒したか、はたまた全滅させられたか。どうやら後者の可能性が高そうだ。

ともかく金剛さんと合流しなければ。


「もしもし、金剛さん。今どこら辺ですか?」


〈蓋世〉専用のマイクで尋ねる。少し間を置いて、返答が返って来た。


「あと、200mほどで着く。間に合いそうか?」

「あ、僕の方が遅いです。少し待っていて下さい。」

「了解。」


途中で大量の死体を見つけた。8幹部の仕業だろうか?

もう少しで辿り着くな。前方には金剛さんが周囲を警戒しながら待っていた。


「この奥が中心部だ。」


金剛さんは、いかにも頑丈そうな扉を指さして言った。


「じゃあ、開けますか。」

「どうやってやるんだ?力ずくでは無理だと思うぞ。」

「ピッキングですよ。」


俺は、専用のクランクとピックを取り出した。


「あ、中に敵がいると思うので、注意していて下さい。」


扉の前に立ち、小声で話しかける。

金剛さんは数歩離れた位置で首肯しゅこうした。


カチャリ、カチカチとピンが噛み合う音が数度聞こえ、最後にカチンと響きのいい音がなった。

後ろを振り向き、お互いに頷く。

金剛さんと立ち位置を入れ替え、構える。金剛さんは拳銃を片手に扉に手をかける。


次の瞬間、ドゴンと音を立てて、突入した。

その先には、、


「なんだ。お前ら。」 「おもしろそうな客人だなぁ。」


先程の青年が居た。

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