第17話 対応

「、、て、、瞬i、、おき、、一。起きて!瞬一。」

「う、ん。」

「瞬一!目が覚めたの。」

「いや、まだ寝てる。」


病院のシーツを深々と被る。


「起きなさい。」


まるで、母親のようにアリサがシーツを引きはがす。


「ここは誰?私はどこ?」


少しふざけてみる。


「ばか、心配したんだから。」


涙ぐみながら、瞬一に抱き付くアリサ。


「むう。」


後から、花梨も抱き付いた。


「痛てて、」

「あ、ごめん。痛かった?」

「いや、大丈夫。」

「ちなみに、ここは病院の集中治療室。」

「あの後、搬送されたって事か。」


痛む場所に手を当てると、包帯が何重にも巻かれていた。他にも、身体の至る所にガーゼや包帯などが、貼られたり、巻かれたりしていた。

まだ、相当痛むな。あいつ、無駄に皮膚を抉りえぐ  やがって。


「ところで、犯人はどこへ行ったんだい?」


病室の入り口に立っていた本田さんが尋ねてきた。


「多分、逃げられました。俺、貧血で意識を失ったので。」


ポーカーフェイスを保ちつつ、そう答えた。


「そうか、君は良く頑張ったよ。皆がパニック状態に陥っている時に、冷静に正確な指示を出したんだから。しかも、行方不明になった生徒はいなかったよ。」


何も知らない本田さんはそう褒めた。


「それは、良かったです。」


少しだけ罪悪感を抱いたいだ    が、妹のためだと振り払った。


「そいつは、ドミニオン8幹部だったのかい?」

「分かりません。何も言わずに攻撃してきたので。」

「じゃあ、ぞいつの人相はどんな感じか?」

「アリサ達も知っているだろうけど、長身で痩せていました。あと、特徴的なナイフを持っていました。」


ここは本当の事を言っておく。アリサ達と齟齬そごがあってはいけない。


「特徴的?どんなのだ。」

「刃渡りがひどく湾曲していて、鋭い返し刃が付いていました。」

「そうか、ありがとう。まだ、身体は治っていないため、ゆっくりと休養すると良い。」


そう言い残して、本田さんは出ていった。


「あの時、瞬一が床をドンッてしたのってなんなの?」


アリサが興味津々に聞いてくる。


「あれは、〈震盪衝戟しんとうしょうげき〉っていって、本来なら相手を気絶させるための技なんだ。だけど、応用することによって振動を伝わらせる技にも出来る。」

「ん。振動がすごかった。震動と言って良いほどに。」

「読み方は同じでしょ。」

「でも、みんな止まっていた。」

「今思えば、あの時めっちゃ目立ったな俺、、、、最悪だ。」

「なに今更言ってるの?随分と目立っているわよ。」

「ん、事実。」

「うわー。しかも、俺の台詞超痛い。」


頭を抱えたまま、丸まる瞬一。


「うぐっ。腹も痛い。」


今度は、包帯の巻かれたお腹をさすった。


「どうしたの?瞬一。」

「自爆による精神的なダメージに苦しんでいると推測。」

That's  その right.通り あー死にたい。」

「ふふっ 面白いね、瞬一は。」

「滑稽と言うべき?」


その後、アリサ達は病室から帰っていった。


「もしもし、本田だが。今から、君の学校に来れるか?」

「はい、看護師さんに連絡しておけば大丈夫です。」

「なら、来てくれ。今後の学校の対応などについて話し合う。」

「それって、俺が必要ですか?」


正直言うと、かなり面倒くさい。


「君を目的に現れる敵もいるだろう。」

「確かに、否定出来ないですね。」

「じゃあ、早いとこ頼むよ。」




「よう。」


校門にもたれかかるように、本田さんが待っていた。


「だらしないですよ。」

「誰かに見られてるって訳じゃないから良いんだよ。」

「僕が見てますけど。」

「君は別に良いんだよ。」

「まぁいいや。それより、早く行きましょう。」


校長室には、校長と教頭それに教育委員長が座っていた。


(威厳が凄い。)

しかし、本田さんは関係無しとばかりに進んで行く。


「どうも、こんにちは。本田です。で、こっちは部下の、」

「天河です。こんにちは。」

「こんにちは。さあ、こちらへ座って下さい。」


老齢の校長が対応する。


「さて、先日の事件についての報告と今後の対応についてですが、まず報告からですね。」


仕事モードに入った本田さんが、体育館の損害と負傷者数を報告する。


「生徒の治療費は必要ないと思いますが、万一の場合は学校保険という形でよろしいでしょうか?」

「はい、問題ありません。」

「また、体育館の補修費ですが、そちらは我々が用意させて頂きます。」

「ありがとうございます。」

「また、生徒のメディカルケアについては学校カウンセラーに頼みます。」


校長は教頭の方を向くと、教頭は頷く。


「はい、了解しました。確認をします。」

「メディア等の対応はどうするのでしょうか?周辺他校とも連携をとった方がよろしいのですか?」


静観視していた教育委員長が発言した。


「それについては、大丈夫です。ここにしか奴らは来ないと思うので。」

「それは信頼性のある情報ですか?」

「はい。もし心配なら、こちらで対応策でも思案しますが。」

「なら、大丈夫です。」


その後も長々と難しい御託ごたくの並んだ、面倒くさい話が続いた。


「結論として、先日のような事態が起きたらここにいる天河隊長が対応するので、心配ありません。また、問題が発生した場合は逐次ちくじ対応しますので、よろしくお願いします。」

「はい、了解しました。」



はーやっと終わった。疲れた疲れた。




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