第11話 潜入
「じゃあ、潜入は西側の裏口からね。」
「はい、分かりました。」
「清雅君が、先行しているから少し待機していてね。」
◇ 柳さん視点
(あんまり敵がいないような、、)
「おっと、危ねっ。」
引っかかりそうになった、赤外線センサーを避ける。清雅自身も監視カメラに映らないようにしているが、実際映ったところでよほど注意して見てないと、見つかることはない。
「もしもし、姫野さん。あらかた、カメラの位置は把握したし、センサーも大体無効にしてきたよ。一応、そっちにデータ送っとくよ。」
「はいはーい。了解しました、ありがとうね。もうすぐで、隊長君も来るよ。」
「分かった。」
柳さんは、いつもはあまり話さないが、任務の時は快活に話すのである。
◇
「もしもーし。瞬一君、もうすぐで入って来ていいよ。」
もうすぐって曖昧だな。
「戦闘していいですよね。」
「いいよー。てか、君が隊長なんだから許可を得なくてもいいのに。」
「あ、そう言えばそうですね。」
「うにゃ。清雅君から連絡あったから、ちょっとマイク代わるね。」
「あ、ちょ、夏稀さん?」
てか、うにゃってなんだよ、うにゃって。
「ん、もしもし。」
電話を代わったのは、花梨だった。
「おう。もしもし。出撃まであとどれくらいだ?」
「ん、まってね。」
カチカチとキーボードを打つ音が聞こえてくる。
「あとね、2分23.7秒。」
「刻んでくるなぁ。ああ、サンキュー。」
「ん、無茶しないように。」
「金剛さん、あと2分ほどで突入しますよ。」
「ああ、了解した。」
うーん、簡素な返事だなぁ。このまま2分待つのもあれだしなぁ。どう会話を作ろうか?
そんな事を考えていると、
「なあ、隊長。天河師範とは、どんな関係なんだ?」
「へ、聞いてませんか?俺の爺ちゃんです。」
「そうなのか。知らなかったよ。」
「逆に質問するんですが、爺ちゃんとは知り合いなんですか?」
「え、いやいや。天河師範は、俺の憧れのような人だ。よく、新人警察官をしごきに来ているよ。」
「あー、よくどっか行くと思ったらそんな事、してたんですね。」
案外、話してみるとなかなか話しやすい人だった。
てか、爺ちゃんそんな事してたのかよ。
「ああ、力の使い方がとても上手い人でね、筋肉さえついてれば良いと思っていた昔の俺は、とても驚かせられたよ。」
「そうだったんですか。」
「お、もう時間だ。行こうか。」
「そうですね。」
◇
「なんだお前ら。」
そう言って、ドミニオンの連中が攻撃してくる。話す余地なんてねーじゃねーか。
「警察だよ。」
そう言って、反撃する。
相手の武器は鉄パイプや、ナイフ、メイスなど、不揃いだった。
銃を持っている奴がいない、どこかに集まっているのか?
「なに、ぼーっとしているんだぁ。」
鉄パイプを振りかぶりながら、男がそう叫んだ。
もちろんそんな攻撃が当たるはずもなく、簡単に受け止められる。
「あ、なんだ。」
いきなり動かなくなったパイプの感触に、不信感を抱いたのだろう。
「な、なんで素手で止められるんだよ。」
男の顔が恐怖に歪む。
「さあな、鍛えたからだよ。」
お返しとばかりに、顔面に拳を叩き込む。
男は、仰向けに倒れたまま、動かなくなった。
「金剛さん、大丈夫ですか?」
振り返って確認すると、相手の武器をねじ曲げているところだった。
全然大丈夫でした。力強すぎだろ。
「もしもし、花梨。次はどこへ行けば良い?」
「ん、次は、2手に分かれる。瞬一が右手の通路で、金剛さんが左手の通路。」
「分かった。何かあったら連絡してくれ。」
「ん、瞬一も。」
「金剛さん、ここから2手に分かれるそうです。俺が右に行くので、左をお願いします。」
「分かった。無理をするなよ。」
◇ 柳さん視点
「やっぱり、敵が少ない。前に潜入した時よりも圧倒的に。」
そして、その事が柳さんの経験則からして、、、
(やな予感がする。)
◇
分かれたけど、敵さんが少ねえな。
倒れた敵を背に、走りながら思っていた。ちなみに、敵は1人も殺していない。しかし、再起不能にはしてある。
「どこかに、かたまっているのか。」
にしても、やっぱり。
「嫌な予感がするなぁ。」
柳さんと同じことを考えていた。
◇ 柳さん視点
(もうすぐで工場の中心部につく。)
「もしもし、姫野さん。もうすぐで到達目標地点に着きますが、瞬一隊長達の方はどうですか?」
「うん、順調だよ。怖いほどに。」
「、、、、そうですか。少し不吉ですね。」
「そんな事言わないの。フラグ立つでしょうが。」
「ははは、、! すみません。会話している余裕は無さそうです。」
前に銃を持った人影が見えた気がしたのだ。
「どうしたの?」
追跡すれば何か得れると思ったのだ。
角を曲がった敵を見逃さないように追跡していく。
中心部付近の部屋に入った事を確認し、報告しようとした瞬間。
ゴンッと音がして視界が揺らぐ。
殴られたと分かったのは、意識を失うほんの少し前だった。
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