第9話 過去1

◇ 12年前

俺の両親は交通事故で亡くなった。


「お母ちゃん、お父ちゃん。」


棺に入れられた両親は、どんなに呼びかけても反応しなかった。


「爺ちゃん、僕を強くしてくれ。」


幼かった俺が必死に考えた、答えだった。失った両親は戻らない。だから、妹だけは守ろうと思ったのだ。


「良いのか、お前には、苦労をいるぞ。」

「ああ、絶対に諦めないから。」


しかし、


◇ 7年後

結実ゆみ、帰って来るの遅いな~。」

「学校が違うから、下校時刻も違うんじゃろう。」

「だって、もう5時だぜ。小学校、遅すぎるだろ。」


俺は、アルティミア学院に行ったが、結実は普通の小学校に通っていた。そのため、平日はあまり会話することがなかった。しかし、俺によく懐いていた可愛い妹だった。


「5時30分になったら、学校に連絡してみるか。」


「もしもし、天河です。」

「はい、、はい、そうですか。分かりました。」


「爺ちゃんどうだった?」

「学校からは、とっくに帰ったらしいんじゃ。」

「え、じゃあ、、、」

「ああ、誘拐の可能性があるかもしれん。警察に連絡してみようかの。」

「僕、探してくるっ!」

「おい、待て。瞬一。」


爺ちゃんの呼びかけも気に留めず、走り出していた。


「いない、ここにもいない。」


いつも通っている商店街にも、姿は見えなかった。


「7歳くらいの女の子、見ませんでしたか?」

「さあ、見てないけど。」

「そうですか。見かけたら、警察に連絡して下さい。」


「どうでしたか、さん。」

「いや、手がかりすら掴めなかった。クソッ。」


「本田さん、保護者からの連絡で行方不明の子の兄が、1人で探しに行ってしまったらしいです。」

「分かった、そっちの方も対応しよう。」


(2人とも、居なくならないでくれよ。)


「おばちゃん、結実見てない?」

「さあ、今日は見てないねぇ。」

「そうか、、、、、、」


(どこに行っちっまったんだよ、結実。)


「7歳くらいの女の子見ませんでしたか?」「おっちゃん、結実見てない?」


商店街のお爺さんに2人が話しかける。

クルッと2人が向き合った。


「誰だ、お兄さん。結実、探しているの?」

「君は、瞬一君かい?」

「そうだけど。」

「良かった、君も探していたんだ。早く家に帰ろう。結実ちゃんのことは、警察に任せたまえ。」

「イヤだ、結実は僕が絶対助ける!だって、だって、だって、、その為に強くなったんだ‼」


瞬一の瞳に涙がたまる。


「だから、僕は結実を見つけるまで、帰らないからっ。」

「そうか、だが夜になると君のお爺さんも心配するから、あと1箇所だけなら一緒に見に行こう。」

「、、、、分かったよ。多分、河川敷の方を通ったかもしれないから、河川敷の近くを探そうよ。」

「河川敷か。分かった。今すぐ、部下を手配しよう。」


「結実~おーい。」


「辺りの捜索を頼む。何かしら見つかったら、報告をしてくれ。」

「「はいっ。」」


「お兄さん、結実は?見つからないの?」

「大丈夫、必ず見つかるさ。」


「本田さんっ。川岸にこんなものが、ありました。」


そう言って、刑事さんが持ってきたのは、結実の鞄だった。


「そんな、結実は、結実は居ないの!」


「申し訳ありませんが、それらしき少女を発見することは、出来ませんでした。


「嘘だ、嘘だ、僕は絶対に信じてる。結実は絶対いるんだ‼」


「ああ、私たちが見つけてあげるよ。ただ、もう夜だから君は帰りなさい。深夜徘徊しんやはいかいで補導されてしまうから。」

「、、、、うん、、。」


しかし、数日経っても結実は発見されなかった。遺体も見つからなかったため、手掛かりは残った鞄だけだった。







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