第9話 過去2

「結実だけは守るって、誓ったのに。絶対守るって。」


(なんで、なんで、僕だけこんな不幸なんだ。)


「あれだけ頑張ったのに。」


(つらい稽古だって、頑張ってこなしてきた。妹がいたからこそ頑張れた。)


「なんで、なんで、なんで!、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、もう、、もう、、、、、、、、もういいや。どうでもいいんだ!」



その後、瞬一は部屋から出なくなった。


「瞬一、ご飯だぞ。」


祖父の呼びかけにも、応じなくなった。


「こんにちは。クラス委員の錦宮にしきみや アリサです。瞬一君いらっしゃいますか?」

「はい、部屋にいますが、、、」


(ずっと部屋に引きこもっている。)とは、言えなかった。


「妹さんの件は存じています。少しお話をさせてください。」

「わかった。少し待ってくれ。」


「すみません。クラス委員の錦宮です。」


コンコンと瞬一の扉を叩きながらそう言った。

しかし、部屋からの反応が無い。


「少し、お話をさせていただきたいのですが。」

「、、、、、、、帰って、話したくない。」


深い悲痛に暮れた声が、重々と響いた。


「そうですか。今日は確認に来ただけなので。手紙は、お爺さんに渡しておきます。」


そう言って、アリサは去って行った。


◇  1日後

「すみません。錦宮です。」

「また来てくれたのか。ありがとう。しかし、瞬一はまだ、、」

「大丈夫です、私が必ず学校に来させます。」

「ああ、毎度ありがとう。」


「瞬一君。気持ちは、落ち着きましたか?私は瞬一君とお話をしたいのですが。」

「、、、、」

「そうですか。また、明日も来ます。」

「、、、、来ないでくれ、、、もう。1人がいいんだ。」


アリサは返事をせずにきびすを返した。


◇  また1日後

「すみません。錦宮です。」

「毎度毎度ありがとう。瞬一の事頼みます。」

「はい、任せて下さい。」


「瞬一君。気持ちは、落ち着きましたか?私は瞬一君とお話をしたいのですが。」

「、、、、こっちは話したくないんだ。」

「そうですか。また、明日も来ます。」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」


アリサは返事をせずにきびすを返した。




◇  さらに1日後

「瞬一君。気持ちは、落ち着きましたか?」

「もう、来ないでくれって言ったよね。」


嘆息混じりの声が反響する。


「じゃあ、私に話して下さい。なぜ、ずっと部屋にいる理由わけを。」

「、、、知ってるだろ、妹がいなくなったんだよ。」

「でもなんで、引きこもるのよ。」

「お前には、分かんないだろうな。妹を失う辛さが。」


扉を蹴り開けながら、そう放った。


「ええ、分からないわよ。でも、1つだけ言えることがあるわ。」

「なんだよ。」

「あなたの、妹に対する気持ちは、それだけ?」

「どれだけだって言うんだ!」


荒々しく言い捨てた。


「だって、まだ生きているかもしれないのに、諦めているじゃない。」

「そんな可能性なんて、、低いじゃないか。」


パチンと乾いた音が響いた。アリサが瞬一をビンタしたのだ。


「いってえな。」

「バカね。生きているわよ。可能性が低いからこそ、信じるんでしょう。」


アリサは真っ直ぐに瞬一の目を見つめた。その緋色の瞳にはとても強い芯が光っているように思えた。


「でも、信じたって、、、、」

「ええ、そうよ。信じるだけじゃ、何も起こらない希望論だわ。だから、行動に移すのよ。妹への想いを動力源にして。」


1つひとつの言葉が瞬一の心に強く響いた。


「そうしたら、何かなるのかよ。」


アリサの言葉に反駁はんばくした。


「さあ、分からないわ。けど、その想いが結実ちゃんに届くのは確かね。」

「想いが、、、」

「妹を奪われたのなら、奪い返すのよ。分かった?」

「ああ、分かったよ。」

「そう、それなら良かった。」




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