第7話 休暇2

「おーい。そっち行ったぞ~。」


「えいっ。」


アリサが、ビーチボールをこっちへ送ってくる。


「ほいっ。亮太。」


「うおわっと。」





体勢を崩した亮太が、海面に倒れた。





「あはは、亮太君だっさ~。」


「う、うるせーよ。」


「あれ、そう言えば颯太君は?」


「ああ、あいつはあっち。」





そう言って、砂浜の方を指差す。


その先には、大人達と混ざってビーチバレーボールをしていた。





「うわー。あれは、ガチの奴じゃん。」


「凄いね~。大人達の中でも活躍しているよ。」


「暑くなってきたから、かき氷でも食べるか。」


「いいね。賛成。」


「うん、いい。」


「俺に奢ってくれよ、瞬一。」


「奢るわけねーだろ。」






かき氷のメニューを見たのだが、





「高っ。450円だと!」





思わず口にしてしまった。そしたら、店のおばちゃんが睨んで来た。ああ、怖い、怖い。





「なにこれ、シークワーサー?これにしよ。」


そう言って亮太は、いかにもマズそうな味をえらぶ。





「私はメロンで。」


「コーラ。」


「じゃあ、ストロベリーにしよっかな。」





「はい、まいど。」


出てきたのは、値段に似合わず普通のかき氷だった。なんか、損した気分だよ。まあ、本当に損なんだけど。





「なんだ、この味。夏っぽい味がする。」


「ん~美味しい。」


「うう、冷たい。」





みんな、思い思いにかき氷を味わっていた。てかなんだよ、夏の味って。


俺も美味しいと思ったけど、やっぱり高い。





「瞬一、交換しよっ。」


「む、私も交換。」





そう言って2人はのかき氷を差し出してきた。





「ほい、やるよ。」




差し出されたものは受け取らず、俺のかき氷を2人に渡す。




「はい。」 「ん。」


「いいよ俺は、知覚過敏ちかくかびんだし。」





魅力的だが、断っておいた。2人が残念そうな顔をしたのは、見なかったことにしておこう。





「なあ、瞬一。これから、どうするんだ?」


「皆が各自好きなことをすれば。」


「私は、シュノーケル使ってブロックの方に行こうかな。」


「じゃあ俺は颯太の方、見てくるよ。」





アリサと亮太は、すぐに居なくなってしまった。忙しい人だね。





「じゃあ、俺はパラソルの下で寝とこうかな。」


「私も。」





いや、付いてくるんかい。まぁ、良いけど。





「瞬一。ドミニオンの倉庫場所が分かった。」


「本当か!それは、どこだ!今すぐni、、」


「待って、データは送るから。けど、今日だけはその事を忘れて。、、この時間、好きなの。だから、お願い。」




悲愴な表情が瞬一の心に突き刺さる。


いつもの花梨と違って、話が長い。必死になっているからだろう。





「、、、、ああ、分かった。」





花梨の悲痛な叫びは、瞬一の心に届いたようだ。





「ちなみに、瞬一の妹っぽい人はそこに見つからなかった。ゴメン。」


「そうか、、、、、。大変な思いをさせてごめんな。」


「ん、大丈夫。」









「花梨は泳がなくて良いのか?」


「ん、そんな好きじゃない。」


「そうか、なんかするか。」


「んー、砂の城造りたい。」


「俺が手伝おうか?」


「ん、ありがとう。」


「じゃあ、どこに造ろうか。」


「波が届きそうで届かないところ。」





何だその微妙なところは。





「じゃ、あっちらへんに造るか。」


「ん、。」





そう言って、バケツとスコップを装備して建設予定地へ移動する。





「で、最初どうするの?」


「まずは、土台造るの。」





と言って、作業に取りかかる。てか、思ったけどいつもより、口数が多くね。夢中になっていると、口数も多くなるのか?そう言えば、仕事モードの花梨も口数多いな。





「次は、何をするんだ?」


「次は、堀と外壁を造るの。波に耐えられるような大きいの。」



花梨は城に似合わない巨大な城壁を築く。


あー、だからか。波が届きそうで届かないところにしたの。


てか、見た目より実用性ですか、現実主義ですね。ちょっと共感出来るわ。





どんどん外壁が造られ、その周りに堀が掘られて行った。


さっきから、周囲の人の目が集まっている。まぁ、しょうがねーか。こんなことしているの、俺らだけだし。





「ん、出来た。こんどは、土台の上に造るの。」





その後は、黙々と城が造られていった。





「出来た!」 「完成だ。」


城と言うか、要塞みたいな物が完成した。





パチパチと拍手が起こった。周りを見ると、多くの人が集まっていた。





「すげー、ナニコレ。めっちゃ細かっ。」


「砂で造れるレベルじゃない気がするんだけど。」


「精巧に出来ているわね。」





戻ってきた3人が、口々に感想を言う。





「ほとんど造ったの花梨だけどね。」





そう言うと、花梨は誇らしげに胸を張った。


いちいち動作が可愛いな。





「グ~~」と誰かのお腹が鳴った。





「あー。腹がへってきたな。」





どうやら、さっきの音は、亮太のものらしい。





「確かにね。もうすぐお昼だし。」


「じゃあ、昼食でもとりますか。」





アリサの提案により、俺たちは昼食を食べることになった。






(やっぱ、高ぇ。)


さっきの店とは違う店に来たが、想像した通りやっぱり高かった。


(具の無いカレーか、味の薄い焼きそばどっちにしようかな。)





「私、バジリコパスタ。」


「サンドイッチ。」


「俺は、塩ラーメンで。」


「じゃあ、僕は冷やし中華にしようかな。」





みんなが、高額商品を選んでいく。





「焼きそば1つで。」





究極の決断の末、30円安い焼きそばになった。






「そう言えば、颯太ってビーチバレーどうなったの。」


「ああ、なんか練習をしてから。試合をしたよ。21対15 21対18でどうにかなったよ。」


「勝ったの。おめでとう!」








「やっぱ、味薄い。」


「パスタに対してのバジルの量が、、、」


「うん、うめーな。」


「タレが、薄いな。少し。」


「ハムが、無い。」





みんな、文句を言いつつも味わっていた。






「ふぃー。お腹がいっぱい。」


「なんかやり残したこと、あるか?」





みんな特にないようだった。それぞれ、遊びきったようでなによりだ。





「じゃあ、今日はお開きにしますか。」


「了解。」


「ん、楽しかった。」


「楽しかったぜ。」


「ああ、僕もだよ。」





こうして、楽しかった1日が幕を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る