第4話 準備

 妹がいなくなる前に残した最後の言葉だった。


俺には両親がいない。俺が3歳のときに、交通事故で亡くなった。


とてもほめてくれる優しい両親だった。

それからは、格闘家である祖父に育てられ、徒手空拳や中国拳法を習った。もう誰も失わぬよう、ただひたすら努力した。


しかし、俺の努力は実を結ばなかった。


10歳のときに妹が行方不明になった。3歳差だった妹はいつも明るく、祖父との稽古の手当もしてくれた。

たが、警察の必死の捜索にも関わらず、妹は見つからなかった。



あの事件のあと、騒ぎを聞きつけた、警備の介入によってドミニオンについて聞き出せなかった。また、龍崎はクビになった。表向きには、病気の長期入院ってことになったが、実際には麻薬不法所持で逮捕された。

さらに、アリサの質問攻めに会い、俺にとってとても長い一日が終わった。


「でも、あんなに強いなんて知らなかったわ。言ってくれても良いのに。」

「別に自慢するものではないだろ。」


「そういえば、アリサって顔が広かっただろ。」


アルティメア学院でも、交友関係が多かったはずだ。


「えぇ、一応は。ですが、なんでなの?」

「実は探したいがあって。それを探すのには、コンピューター系に強い奴が欲しいんだ。」

「確かにね。瞬一ってスマホもろくに使えないもんね。うーんっと、確か自作の量子コンピューター愛用している子がいたよ。」

「りょうし?てか、コンピューターって自分で作れるのか?」

「さぁ?私もそんな詳しくないから。」

「そいつとはいつ会えるんだ?」

「夏休み前には、会えるはずよ。」

「ってことは、あと2週間くらいか。」

「でも、あの子って性格に難ありだから。大丈夫かな?」

「どんな性格しているんだ?」

「えーっと、極度の人見知りなんだよね。」

「よく分からないけど、まぁ大丈夫だろう。」


◇ 夏休みに差し掛かるほんの少し前の日


「みなさん。席について下さい。」


龍崎が居なくなってからは、副担任の松下 桃子まつした ももこ先生がこのクラスをもっている。新任の先生らしいが、人当たりも良く、優しいのでなかなか人気だ。


「またまたですが、このクラスに転校生がやって来ます。」


(何か、やべー気がする。)


その予感は的中した。


「じゃあ、自己紹介をお願いします。」

「ん、アルティミアから、、来た。東雲 花梨しののめ かりん。、、よろしく。」


入って来た転校生はそう言った。

まてまて、会うとは言ったけど、別に転校してこいなんて言ってねーよ。

てか、声ちっさ。ギリギリ聞こえるデジベルなんですけど。


「えーっと、席はどこにしますか?」

「はいはーい!私の隣で良いですか?友達なので。」


アリサが勢い良く挙手をする。


「そうなの?東雲さん?」

「、、、、ん。」


いやいや、人見知りって言うか、口数少なっ。


「じゃあ、そこは3人席ね。」

「了解!」


ぴしっ、って敬礼してんじゃねーよ。てか先生、俺の意見は?


「よろしくね。花梨!」

「ん、。」


これが友達どうしの会話ですか。


「で、分かっていると思うけど、この娘が凄腕くんだよ。」

「ああ、よろしく。東雲さん。」


東雲さんの反応は、こくっとうなずいただけだった。

初対面だとこうなんだな。


「どころで、アリサから聞いていると思うけど、探してほしいものがあるんだ。頼めるかな?」

「、、ん。何?」

「えーっと、何を探すのかって聞いているよ。」


戸惑っている俺にアリサが助け船を出してくれた。


「ドミニオンっていうグループのアジト。」

「それって、前の、」

「ん、分かった。」

「危ないよ。止めとこう、花梨。」

「大丈夫。どんな防御網でも潜り抜けられる。」

「悪い奴らのアジトだよ!絶対危ないって。」

「アリサ、声が大きい。」


そう言って、アリサをなだめる。


「大丈夫だ、アリサ。探すだけで、取りに行くのは、俺だ。」

「分かったわ、花梨も大丈夫って言っているし。」

「ん、依頼受諾。時間かかる。」

「ありがとう。」


「おいおい、瞬一ばっか女子といちゃついてんじゃねーよ!」


亮太から怒りの声が上がったので、俺はあいつらのもとを離れた。


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