第3話 躍進

ーーーーーーーーとある日の放課後ーーーーーーーー


「フッフッふーん♪」


瞬一がここに居るって言ってた先輩のことを頼り来たけど、あってたな。でも、なんで瞬一は自分の能力を隠すのかな?学院の時なんてとても格好良かったのに。


「金曜日だし、早く委員会の報告終わらせてかーえろっと。」

(先生は職員室かな?)


そう思って廊下に出る。

すると、いつも閉まっている第2理科室が光っているのが目に入る。

先生でもいるのか考えながら中を覗いてみると...


(龍崎先生と・・・誰?)


柄の悪そうな男が話している。


「おい、ブツはもってきたか。」

「ほらここに。確認してくれ。」


そう言って、男は怪しげな袋を取り出した。


「分かった、きっちり受け取った。亅

幹部にもよろしく言ってくれ。」


(あれは何?良く見えなっっ!)

アリサが背伸びしようとしたところに、後ろからいきなり、口元に布をあてられた。

(なにこの匂い!)

そう思った直後、アリサは息を失った。


「こーんな所に可愛子ちゃんが!」


話をしていた2人の前に、マスクで顔を隠した男が現れた。


「どーした、デゼル。」

「いや〜、話を盗み聞きしている娘がいてね〜。」


デゼルと呼ばれた男は、そう答え背後から、アリサを引きずり出した。


「錦宮じゃないか。」

「な〜んだ、知り合いなの〜。」

「俺の生徒だ。」

「でも、秘密を知ったからには〜。」

「分かっている。」


「あいつ遅いなー。」


どこで油売っているのやら。まだ慣れてなくて、迷っているかもしれない。


「少し見に行くか。」


「うんっ、、」

「おい、こいつが目を覚ましたぞ。」


龍崎先生と話していた男は、アリサが意識を取り戻した事にすぐさま気付く。


「よし、移動するぞ。」

「こっちへついてこい。」

「んん〜〜」


さるぐつわを噛まされて助けを呼べない。


(こいつら私をどこへ連れてくの?)


(!あれは瞬一?)


瞬一っぽい人影がこちらに向かってくる。


(お願い瞬一、助けてっ)


あれは、アリサと先生?

でも、委員会の報告ってわけじゃなさそうだな。しかも他にも変な奴らがいる、あまり良い雰囲気とは言えなさそうだ。


「少し急がねーと。加速アクセラレート。」


そう言うと、大きく踏み込み前へ跳躍した。瞬一が祖父から習った古流中国拳法を応用した技。その名も加速アクセラレート。常人では、ありえないほどのスピードで100mほどの距離を詰め、龍崎たちに肉迫していた。


「なんだ、こいつ!いつの間に」


背後から急迫した瞬一に驚きを隠せないデゼル


「それよりも、アリサをどこに連れて行こうとしたんですか?龍崎。」

「おい、お前ら。早くやれ!」


そう龍崎が指示すると、1人の男が前に立ちふさがった。


「はいはい、わかったよ〜。子供だからって手加減しないからねぇ〜。」


そう言って、デゼルは殴りかかった。


「気持ちわりぃしゃべり方だな。っていうか初対面の挨拶がパンチってやべーな。」


そう言いながら、飛んできた拳をブロックしつつ、右手でカウンターをする。


「あっれ〜。この子強くない〜?」


そう言いながらも防いでいるじゃねーか。やっぱ生半可なカウンターが通じる相手じゃないな。


「なら、これならどうだろ〜。」


左ジャブからの右ストレート。さらに右足から蹴りをくり出して来た。

俺は冷静に攻撃を見切り、威力を吸収して受け止める。こいつは普通の人よりは強いが、型や基本が無いため俺の敵ではない。

左手で攻撃を薙ぎ払い、右手で相手の胸に掌底打ちをする。


「がはっ」


デゼルが余裕そうな表情を崩した。


「デゼル、分が悪い。」


静観していた、もう一人がそう言うと、


「確かにね、しょうが無い、この場を離れよう。」


そう言ってデゼルが立ち上り走り出した。


「待て!逃がすと思うか。」


追いかけようとした途端、カンッと音がして、金属塊が転がった。


「ちっ、スモーク弾かっ。」


モクモクと煙が出て、視界が白く染まった。おっと、こいつは逃さん。どさくさに紛れて逃げようとする龍崎を掴む。


「アリサ、大丈夫か?」


近くでくぐもった声がしたので心配ないだろう。

しばらくして、スモークが晴れると、あいつらはいなかった。しかし、何だったんだろう。


「ん〜ん」

「アリサ、今ほどくから待ってろ。」


さるぐつわを外す。少し、クロロホルムの匂いがした。つまり、眠らせられて捕まったのだろう。


「瞬一!」


そう言って抱きついてくると、そのまま泣いてしまった。よほど辛かったのだろう。優しく頭を撫でてやった。


アリサが泣き止むと、背後で気配がした。後ろを見ると、龍崎が逃げようとしているところだった。


「お前、ホント懲りねぇな。」


そう言って、手足を縛る。


「さて、お前には聞きたいことが山ほどある。質問に答えてもらおうか。」


龍崎が怯えたように頷く。

いつの間にか、龍崎先生に対する呼び方は、『お前』になっていた。


「わ、分かったから、殺さないでくれ。」


(は?何言ってんだ。)


「アリサ、俺が人を殺すようなやつに見えるか?」

「んー、私は思わないけど、なかなか怖かったよ。瞬一。」


マジか。今、めっちゃショック受けたぞ。


「まぁ、んなわけで、俺は人殺しじゃない。で、何であいつらといた?どういう関係だ。」

「えーっと、それは。」

「何か後ろめたいことあるのか。」

「分かったよ。は、話すから。」

「あいつらは、麻薬を売ってくれたんだ。で代わりに金を払ってた。」


怯えつつも、正直に話す龍崎先生。


「マジかよ、クソ教師、いやクソ野郎だな。 まぁいいや、アリサこいつの言ったこと正しいか?」

「分かんない。でも、変な袋もらってた。」

「袋?あぁこれか。」


近くに落ちていた袋を開けてみる。その中には、、、粉末状になった大麻が出てきた。 


「どうやら、本当のようだな。アリサ、他には何か言ってたか?」

「んー、あとはード・ミ・ニ・オ・ン・?って言ってた。」

「ド・ミ・ニ・オ・ン・!」


その言葉には聞き覚えがあった。


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