第2話 来訪

少し時が過ぎ、梅雨入りした6月。


登校してからずっと、教室が騒がしい。何か事件でもあったのだろうか?


「なあ、何か皆、落ち着き無くね?」


斜め後ろの亮太に聞いてみる。


「知らねぇのか?何か転校生が来るらしいぜ。」


テンプレだったら、美少女なのにな。何て思っていると。


「それじゃHRを始めるぞ。」


勢い良く扉が開き、担任が入って来た。しかも、その後ろには、、、、、美少女がいた。ブロンドの髪を長くのばし、緋色の瞳を持つ美少女が。


「ゴフオゴフオッッ」

「大丈夫か?瞬一。」

「ああ、少し咳き込んだだけだ。」


なぜ、あいつがいる?あいつはアルティミア学院にいたはず。


「まあ、見てわかる通り。転校生を紹介する。」


「錦宮《にしきみや》アリサと申します。アルティミア学院から来ました。これからよろしくお願いします。」

「おい、アルティミア学院だってよ。」

「日本一の偏差値じゃないか。」

「てか、めっちゃ可愛くない?」

「めっ女神、女神が降臨した。」


美少女転校生は、色々と騒がれていた。


「なあ、瞬一。俺、あの子めっちゃ好みなんだけど。」

「、、、、そうか、、、お前には、高嶺の花だ。、、」

「どうした、瞬一。放心状態みたいだぞ。ま、まさか、一目惚れか。」

「いや、違う違う。マジでヤバい。」


そう言って俺は少し、顔を隠す。アリサに見られたら、どうなるか分からない。


「恥ずかしがんなって。顔出せよ。」

「おい、やめろって。」


それでも亮太は離さない。


「おい、お前ら静かにしろ。」


先生に注意されて、反射的に顔を上げてしまう。

その瞬間、アリサと目が合った。


「瞬ちゃん?」


(やべ、バレた。)


「先生。あそこの生徒って天河 瞬一君ですか?」

「そうだが、知り合いか?」

「瞬ちゃん!なんで、学院から居なくなるの。」


いやいや、質問ストレート過ぎんだろ。


「えーっと、人違いじゃないっすか?」

「いいえ、確信をもって言えるの。だって瞬ちゃん、私と目が合った時、気まずそうな顔してたもん。」

「いや、それは、先生に注意されたからで。」

「そんな意地悪しないの。じゃないと、、、(虫をくっ付けるわ

よ)。」


イヤだイヤだ虫怖い。


「わ、分かったから。これでやめてくれ。」

「ふふっ。ありがとう瞬ちゃん。けど、なんでそんな格好しているの?眼鏡なんて掛けてなかったじゃない。」

「まぁ、色々とあってな。」

「で、お前らは友達か?話を聞くと天河も学院s、、」

「まぁ、そんなことはどうでも良いでしょう。もうすぐ、1時限目ですし。」


先生の言葉を遮るように俺が言った。


「そうだな。じゃあ錦宮の席は、、、」

「瞬ちゃんの隣が良いです!空いているじゃないですか。」

「ここは、不登校だけどいるので。」

「不登校は居ないのと変わらんだろ。」


俺の必死の抵抗も泡になった。てか、生徒の存在を否定して良いのか?


「そんなもんで大丈夫だな。それじゃ今日のHRを終わりにする。1時限目に遅れないように。」


不幸中の幸いか、すぐに1時限目が始まったので、質問攻めには、会わなかった。


◇ 休み時間

「おい、瞬一。錦宮さんと知り合いなのか?」

「てか、錦宮さんの話だと、天河君もアルティミア学院にいたって言ってなかった?」

「もしかして恋人?」


亮太を筆頭にクラスメート達が一気に質問してくる。


「まぁ、幼なじみみたいなもんだ。」


そう言って、曖昧に答える。しかし、次の瞬間


「私は瞬ちゃんと同じアルティミア学院 高等科で、クラスメートだったの。瞬ちゃんは学院トップだったの。しかもあの、伝説の第7世代の中で。」


クラスメートが凍ったように固まった。


「第7世代って言ってたら、最高偏差値を記録した世代じゃないか。」

「はっ!マジかよ。確か、フェルマーの最終定理を証明したって。」

「いや、冗談だよな、、、、」

「えっ、うそ、、」


いやいや、反応ひどくないか?最期に言ったやつなんか、あからさまにショック受けているじゃん。

俺が断固として守って来た秘密が一瞬で壊れた。


「アリサ、ちょっとこっちへ。」


そう言って俺はアリサを廊下へと連行する。


「あ、逃げるな~」 「待てよ、瞬一。」


クラスメート達が追って来るけど、関係無い。


「おい、アリサ。ちょっと静かにしてくれ。」

「なんでなの?威張ったって良いじゃん。」

「俺は目立ちたくないんだ。」

「でも、もう充分目立っちゃったけどね。」


(アリサ、可愛く言ったって許すわけないだろう。)


「もういいや、次の授業始まるし。」


俺が望んだものは何だったのだろう。跡形も無く吹き飛んでしまっていた。

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