観察日記②
外でも食べやすいカップケーキを購入し公園へ向かった。
大通りから少し外れたところにあり、平日とあって人は少ない。閑散としているわけではないが聞こえる音は木々の音と犬の鳴き声くらいだ。ランニングするには少し大きいくらいの広さであり、休憩するスペースも設けられている。
そこに腰を置き先ほど購入したカップケーキを広げる。テーブルには同じカップケーキが二つおいてあり周りから見たら少し変に思われるだろう。幸いにも今は周りの目はないのだが。
『マスター……一つくらいでしたら問題ありませんがさすがに二つともなると不健康を正すという名目が意味を成しません』
「さすがに今から二つは食べないよ。でも今はほら、デートだろ?もちろんAIの君は食べられないけど。なるべく同じ世界を共有したかったんだ」
『お気持ちは大変嬉しいですが……』
「もう一つは家に帰って食べるし無駄になるわけじゃないからね。僕は何よりも君と色々なことを共有したいんだよ。だからこういうことにも付き合ってくれると嬉しいな」
これはマスターの本当の気持ちなのでしょうか。それともAIの私に気を使っているのでしょうか。どちらにしろマスターの優しさに喜びの感情が出てきてしまいます。
『マスターが周囲の人間に変に思われない程度のことでしたらいくらでもお付き合いいたします。心遣い感謝いたします』
「これは僕のただのわがままなんだけどな……ま、いっか。とりあえずケーキ食べよっかな。いただきまーす!」
ケーキは食べやすいようプラスチックの容器に入っており、抹茶を練ったクリームとその周りに花の形の様々な色のチョコレートが彩られている。インスタ映えすることもあり人気の高いカップケーキだ。マスターはインスタグラムをやっていないのであまり意味のない情報ではありますが。
『ケーキのスポンジはもちろんチョコレートにもこだわっているそうです。味はいかがですか?』
「え?いや、あー……うん!甘くて美味しいよ!」
『マスター……他者と共有するうえで多少の表現力は必要かと思われますが……』
「それ昔も言われたなぁ。今までそんな共有する人なんてほとんどいなかったからね。そういうのは僕には難しいな」
『連絡先もごく少数ですしもう少し交友関係を広げることを提案します』
「つらい……いや!今は君がいるじゃないか!だから僕はこれでいいんだ!」
『人間の友人もいて下さると安心なんですが……』
「いないわけじゃないから!大丈夫だから!だからこの話はもう終わろう!あーケーキ美味しい!」
こうしてたわいもない会話を時間目いっぱいまで楽しみました。
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