第2話 旅の途中で
神滅の騎士団に出会ってからまだ数時間しか経っていない。
今の俺は旅の途中だ。所詮は奴隷の身分。だれも見送りにこなかった。
だが今はそれどころじゃない。唯一無二の妹の安否が先だ。
本当にイリアは死んだのだろうか、白髪になっておきながらだが。
え? なんか知らないがだれかが倒れている? なんでだ?
「あ! そこのお方! 助けてください!」
う。見つかった。はぁ。俺としてはもうさっさとムーンブルグ城に行きたい。
でももう見つかった以上は仕方がないしこのまま放置するのもあれだ。
という訳で俺は若い女の近くまで行き立ち止まった。
「あんた。大丈夫か」
まずが怪我がないかの確認をと。
「イタタ。ああ! それより大切な蜂蜜が取られたよ!」
と思ったら怪我はなく元気なようだ。ただ足を鈍器で殴られたようで鈍そうだ。
「だれに取られたんだ?」
なんだか凄く面倒なことに巻き込まれそうだ。ただの人間の方が厄介だ。
「ゴブリンよ! あいつら最近になって縄張りを広げたんだ!」
ああ。そう言えば噂は耳にしたな。奴隷の俺たちは魔物に襲われる確率が高い。
「ゴブリンか。少数なら大したことない筈だが多数になるとやばいな」
思わず口からなんか変なことを言ってしまった。ま。とにかく依頼主だな。
「確か出来たてじゃないかな? 三匹だったから。確かアレム洞穴に向かった筈」
アレム洞穴か。マタギのときによく行ったな。そこなら俺でも行けそうだ。
「分かったよ。俺が探して持ってくるよ」
じゃないと可哀想だ。このまま打撲の痛みが引くまで放置になる訳だが。
「有難う! 私の名はムニカ。貴方の名前は?」
「俺の名はサイラス。んじゃ行ってくる」
「はい! 私はここで待っています!」
これは多分だがゴブリンは物目当てで人目当てでは滅多に襲わない筈だ。
だからここは放置しても安心の筈。それを思い出した俺は依頼主を後にした。
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