トラックにひかれて神様に異世界転生を持ちかけられたんだけど転生先がおかしい件

あいざわあきら

トラックにひかれて神様に異世界転生を持ちかけられたんだけど転生先がおかしい件

 車道に飛び出した猫を助けようとしてトラックにひかれた。

 ふと、気づくと真っ白い光につつまれた場所に居た。目の前にはちゃらそうな男が一人軽薄そうな笑みを浮かべて立っている。

「えーと、ここは一体? あなたは?」

「ぼくは神だよー。分かってるかも知れないけどキミは死んだんだ」

 あー、まあ、ひかれたのは覚えてますが。

 にしても神様……こんな感じなんだ。なんか残念。

「まあ、神って言っても八百万柱いるからね」

 やばい、こっちの思考はダダ漏れみたいだ。

 さすが神様。えーと、えーと……。まずい、というか、なんで私は神様に呼び出されてるんだ。

「普通はボクが直接対応することなんてないんだけどねー」

「私はこれからどうなるんでしょうか? なぜ特別扱いされているのでしょう?」 

「今さぁ、神々の間でいろんな世界を作るのが流行っているんだよ。

 どんなウケる世界を作るかで競い合っててね、ボクも自分で考えた世界を作ってみたんだけど、みんなつまんないっていうんだよ。

 でね、思いついたんだ。人気の神がやってるネタをそのまま真似たらいいんじゃないかって」

 それってパクリ……。

「今ね、人間の世界のゲームを元ネタに世界をつくるのが流行ってるみたいだから、それを試してみようと思ってさ。

 正直、何が面白いのかよく分からないんだけど、取り敢えずキミの世界のゲームを再現した世界を作ってみたんだ。

『いいね』がいっぱいつくといいなぁ」

「はぁ」

 やっぱり何で私がここに呼ばれたのはさっぱり分からない。

「うん、ここで本題だ。キミには今選択肢がある。 

 そのボクが作った世界に転生するなら、記憶とかそのままで人間として転生させてあげる」

「えーと、断ったら?」

 おそるおそる顔色をうかがう。神様は無邪気な笑顔を浮かべている。

「デメリットはないよ。ボクは悪魔とか邪神とかじゃないんだから。この世界に普通に転生させてあげるよ」

「そうなんですか」

「もちろん、魂をクリーニングするから、記憶はなくなるし、」

 へえ。

「ま、人間に転生するとは限らないけどね」

 え?

「安心してよ。キミ、いいかんじに善行カルマをつんで死んだから、ミミズとかミジンコになる事はないよ。哺乳類以上は保証できるかな」

 え? え?

「キミの自由意志に任せるよ。普通にこの世界に転生するか、ボクが試しに作ったゲーム世界にキミとして異世界転生するか」

「……異世界転生でお願いします」

「えー、いいのー? 悪いねえ、ボクの趣味に巻き込んでー」

「あ、いえ、私もそういうの嫌いじゃないんで」

 うん、死んでしまった事はしょうがない。

 ここは割り切って、異世界転生を満喫するしかない。

 異世界チートで成り上がり、いいじゃないか。

「んじゃ、転生させるねー」

 やっぱり軽いノリの神様。


 ……今朝けさトイレで転んで頭を打って、そんなやり取りの記憶を取り戻した。

 私は当年5歳である。

 確かに、前世の記憶がある。転生したのは間違いないだろう。

 けど、おかしい。

 ゲーム世界に転生したはずなのに、現代日本としか思えない。

 前世基準で見て、ごくごく一般的なアパートの一室であり電気ガス水道もきちんとある。父親が何してるか聞いたことなかったが、スーツを着て毎日平日出社しているところから見て普通にサラリーマンだろう。

 試しに唱えてみる。

「ステータスオープン」

 すると、目の前に、光を放つ半透明なステータスボードが開かれた。

 一気にテンションが上がる。

「おぉぉぉぉ、夢や妄想じゃないな。ここはゲームを元に作られた世界だ!」

 目の前には私のステータスが空中に並んで表示されている。

 DEXとか、STRとか数値がならんでる。

 よし、異世界チートで無双するぞー。

「……ん? このSAN値・・・・ってなんだろうな……太陽?」


それはSun。

転生したらクトゥルフTRPG世界だった件。たぶん、無双は出来ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トラックにひかれて神様に異世界転生を持ちかけられたんだけど転生先がおかしい件 あいざわあきら @Aizawa_Akira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ