第37話   蝉

今朝、早く目が覚めたので、近所の公園に散歩に行った。


この時期なので、あちこちで蝉が鳴いていて、近くで


よく見ると、鳴いてるだけじゃなくて、おなかの部分を


一生懸命動かしている。


こんなに精一杯生きてたら大変だなって、人間の私は思って


しまうが、そんなのおかまいなしに、「ミーンミーン」と鳴いて


いる。


蝉の事が気になったので、ちょっと調べてみた。


すると、セミは、幼虫の土の中での生活が、種類によるが、


一年~十数年、成虫が一週間から一か月とのことで、圧倒的に


土の中での期間が長いのだが、成虫になるまでの道のりが


すごい。


まず、卵からかえって、土に潜るまでも、鳥や他の虫になどに


見つかる可能性があるし、土の中でも、モグラや、他の菌類など


によって生存できないおそれの中、脱皮を繰り返し、やっと外に


でて羽化できても、羽化の最中は、完全無防備なので、鳥や他の


虫に襲われたり、成虫になっても、雌を呼ぶ為鳴いているので、


人間や他の外敵に見つかりやすい。


そして、実際交尾までして子孫を残せるのは、30%位しか


いないのだ。


そう思ってみると、数々の困難を乗り越えてきた勇者にすら


見えてくる。


目の前の蝉に出会えているという事は、ある意味奇跡だ。


そんな大変だった過去はみじんも見せず、ただ精一杯


鳴いている。


ここにいるのが嬉しいというように。


人間のうちで、生きていることが嬉しい、生ききったと思えて


いる人は、本当に少ないと思う。


蝉は、自分の表現したい事、やるべき事、やってみたい事を、


ただ精一杯やればいいのだという事を、その鳴き声で私達に


教えてくれている。


蝉の鳴き声が染みるのは、そのせいかな。

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