第30話 「春よ、来い」

ブログで、辻井信之さんの「 春よ、来い 」を紹介して、

万葉集の歌が響いたので、こちらにも掲載しておきます。


この歌を聴くと、なんとなく、

「防人」のイメージが湧いてきます。


この時代であれば、任務とはいえ、別れれば、もう二度と

会えないという事も多かったと思います。


今みたいに電話やメールがあるわけではないし、

手紙をだしても、届くかどうかわからず、

生死も定かでない。


防人の任務の帰りは、自腹だったようなので、

帰りたくても帰れなかったり、

長い道のリ、待つ人を思いながら

亡くなった人も多かったと思います。


だから、防人の詩は、その思いが伝わって、

心揺さぶられる物が多いのだと思います。

テクニックではなく、伝えたい思いがそこにあるから。


いくつか紹介したいと思います。


「 我が妻はいたく恋ひらし飲む水に 」


私の妻は、とても私のことを

恋しがっているようです。

飲む水に、妻の影さえ映って、

忘れられないのです。


会いたくても会えない苦しさって、

こんなに辛いのかって

悲しくなります。


「 父母が頭掻き撫で幸くあれて

いひし言葉ぜ忘れかねる 」


父母が、私の頭をなでながら口にした、

「達者でいなさい」という言葉が

忘れられない。


この時代、もう会えないかもと思うと、

何かしてあげたいけど、

頭を撫でて、無事を祈る事位

しかできなかったんだろうなって

思うと、切なくなります。


「 唐衣袖に取り付き泣く子らを

置き手ぞ来のや母なしにして 」


裾にすがりついてなく子供達を

置いてきてしまったなぁ。

母親もいないのに。


この現実をどうすることもできず、

子供達を思う事しかできない父親の姿が、

すごく詩から伝わってきます。


長い時を超えても、

彼らの思いを乗せた詩は、

私達の胸をうつ。



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