第41話 「天使様の気持ち2」
今日は12月14日。俺の誕生日だ。朝からお母さんにおめでとうを言ってもらって、咲良も手紙と俺の似顔絵を書いてくれたので大満足だ。
俺はルンルン気分で学校に向かい、教室に入った。
「俊くんっ! 今日の放課後、ちょっとだけ時間ちょうだいっ!」
いきなりこっちに走ってきたと思えば愛海がそんなことを言ってきた。
「うん。良いよ。じゃあ一緒に帰ろうか。」
以前。花恋さんから告白された日。あの日に花恋さんが言っていたこと、「もう少しすれば分かる。」ということ。これはそういう事だったんだろう。
この一日、愛海はソワソワしていた。授業中も何かを必死に考えているような。いつもならありえないほど集中出来ていなかった。さすがに心配だったが今、俺が聞いても逆効果になりかねない。だから俺は敢えてそっとしておくことにした。
放課後
(芝田愛海視点)
どうしよう、どうしよう⋯⋯。せっかく色々考えてきたセリフ全部飛んじゃった⋯⋯。なんて言おう。ここで失敗したら絶対に可能性がゼロになっちゃうよ⋯⋯。
今は授業中。だけどこんなことで頭がいっぱいになって授業なんて集中できるわけが無い。今は板書を写すふりをしてノートに思いついたセリフをひたすら書いていって良いのがないかなんとか模索している。
でも、この服で俊喜んでくれるかな⋯⋯。もし俊がチェスターコート嫌いで「趣味悪いな」とか言ってきたら愛海、この先、生きていける気がしないよ? そうなったらもう引きこもるよ? あぁ⋯⋯。
ほんっとに愛海はバカだ。自分で自分が嫌になる。嫌気がさしてきた。どーしよ?
そしていよいよ放課後が来てしまった⋯⋯。
「俊くんっ! か、帰ろっ!」
あ゛ぁぁぁ! 緊張しすぎて語尾が強くなっちゃったぁぁぁ! 引かれてないかな?
「おう。帰るか。」
よかったぁぁぁぁ! 気にしないでくれたぁぁ!
優しいぃぃぃ! 好きぃぃぃぃ!
何してんだろ。私。
「? どうしかした?」
「あ、いや。なんでもないよ。」
なんとか誤魔化して(ごまかせたと思ってるだけ。)
電車に乗り込み、目的の高台までやってきたわけなんですが。やっぱりセリフが飛びました。
「あのね、俊。まずは、お誕生日おめでとう! これ、俊が好きか分からないけど、似合いそうだったから⋯⋯。」
そう言って愛海は紙袋に入ったチェスターコートと、ブーツを渡した。
「! これ! 俺、これずっと欲しかったんだよ! さすが愛海だなっ! チェスターコートってマジでかっこいいと思うんだよな!」
「っ!」
嬉しい。多分、俊よりも愛海の方が嬉しいよ。
「? なんで、泣いてるんだよ。」
「へ?」
気づかないうちに泣いてしまっていた。でも、本当に嬉しい。俊も心から喜んでくれているみたいで表情が凄い幸せそう。
「ははは。もし気に入らなかったら⋯⋯って考えてたから、嬉しくて⋯⋯。えへへ。」
「っ!」
「俊?」
「なんでもない⋯⋯。もしかして、これ渡すためにこんな綺麗なところに連れてきてくれたのか?」
「んっと⋯⋯それもあるけど、聞いて欲しいことも。」
「ん。」
愛海は少し沈黙が流れてから、口を開いた。
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