第32話 「夢の中。」
「危ないっ」
そう聞こえた気がした。
だんだん意識が薄れていく。
視界が揺らぐ。
走馬灯が走る。
死ぬ。
直感でそう思った。
体の感覚が無くなっていく。
体が動かせない。
俺は、俺は⋯⋯死ぬんだな。
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(今井七海視点)
遅かった。
「危ない」と言った時には既に俊は車にはねられていた。
車の中から中年の男性が青い顔をして出てきた。そして俊の体を揺すり、救急車を呼ぶ。
十分程しただろうか。救急車のサイレン、パトカーのサイレンがけたたましく響き渡り、あたりは騒然となった。
私も当然親とそれから俊のお母さんにも連絡を入れ、学校にも電話した。
俊のお母さんは涙を流して何度も「俊。お願い⋯⋯。」と言っていた。
私のせいだ。
お願い。
そう思う。だけど、私が俊に頼ったから。だからこんなことに⋯⋯。
そんなどうしようも無い後悔をしていた。
そして俊は病院に搬送された。勿論私も同行した。
おばさんはずっと俊の手を握っていた。
「幸い、命に別状はありません。あとは本人次第と言ったところでしょう。」
お医者さんはそう言った。私は一先ず安心した。それは、おばさんも同じだったようで胸をなでおろしていた。
俊ははねられた時の衝撃で右腕と肋が二本、右足の骨が折れてしまった。それに今は意識を失っている。目を閉じ静かに息をしている。
大怪我。ひと目でわかる。頭にも包帯を巻いて包帯には血が滲んでいる。
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(霧野俊視点)
一人の少女がフェンスに足をかけた。
「何をしてるんだ」
俺はそう声をかけた。
「イジメられているんです」
だから、死のうとしていた。と少女は言った。
俺はこの少女をどこかで見たことがある。誰か、今の俺にとって仲がいい、大切な数の少ない友達。誰だろう。透き通るように綺麗な肌。サラサラな髪の毛。人間離れした美しい顔。
「お前は⋯⋯。誰なんだ。」
俺はそう問いかけた。
「私は⋯⋯」
そこから先は聞こえなかった。
雑音が入ったようにその部分だけ聞こえなかったのだ。
場面が変わった。
今度は俺の通う高校だ。
「俊くん! 頑張ってよ!」
俺は⋯⋯。何を頑張ればいいんだよ。愛海。
「頑張って。俊くんなら出来るよ。だから⋯⋯」
また、先のように雑音が入ったように音が聞こえなかった。
これは、何なんだよ。
意味がわからない。
「助けて⋯⋯。」
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こんにちは!麝香いちごです!
本当にすいませんんん!
これが本当にあげたかったやつです!
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