第四章:当たり前の大切さ

第27話 「転校生」

俺は憂鬱だった夏休みを終えて、今日から新学期。今日は課題の提出等が終われば帰宅なので学校に行ったらすぐ帰れる。


《学校にて》


「お前ら〜元気してたか? それより今日は転校生を紹介するぞー。入ってくれ。」

そう言われてクラスがザワザワしだす。そして、入ってきたのは⋯⋯。

「七海?」

「えへへ。来ちゃった。」

「「「「⋯⋯。はぁっ? またお前の脈アリかよ!!!」」」」


そう。転校してきたのは今井七海だった。俺の幼なじみの。前にようやく仲直りをした。あの七海だ。なんで? 俺の頭の中は、はてなマークに支配されていた。多分俺の頭の上には「?」というマークが表示されているだろう。


「お? 今井さんと霧野は知り合いか? ならちょうどいい。今井さんその霧野の前の席に座ってくれる?」

「はい。」


なんでだ? 何故こうなった? 七海はなんでこのタイミングでこの学校に転入してきたんだ? これは、聞いてみるしか⋯⋯。


「七海。話したいことがあるから放課後屋上来て。」

「ふぇ? う、うん。分かった⋯⋯。」

こんなに周りの視線がある所で理由を聞くのは野暮な気がするので、放課後人目の無い屋上で事情聴取をするとしよう。


俺たちは課題を提出して、校長のありがたい言葉を聞いてからクラスで少し話を聞いて解散となった。


「七海。悪いな呼び出して。」

「う、ううん。でも、どうしたの? 俊?」

「いや、なんでこのタイミングでこの学校に転入してきたんだ?」

「へ? それは、俊と同じ学校に行きたかったから⋯⋯。でも、前までだったら俊に迷惑をかけてただろうし、仲直り出来たら転校したいなって思ってた。」

「そんな簡単にできるんだな。てか、おばさんは? おっけーしてくれたのか?」

「うん。俊と仲直りしたって言ったら『改めてお母さんに謝りたいから今度家行く』っていてたし、普通におっけーしてくれた。」

「そうか。」


まぁ、理由がわかってスッキリした。

「なぁ七海。久々に一緒に帰ろうぜ。」

「え、うん!」

こうして俺たちは一緒に帰ることになった。


「ねぇ、俊。」

「どうした?」

二人で歩き始めて十分といったところか。七海が唐突にそういった。それまでは会話らしい会話は無くお互いほぼ無言で歩いていた。


「俊は今、彼女居る?」

「いないな。」

「そ、そっか! じゃあ、好きな人は?」

「う〜ん。いないな。」

「そ、そうなんだ。俊、イケメンだからモテるでしょ?」

「らしいな。」

「らしいなって⋯⋯。まぁ、良いや。」


そんな会話を交わして再び二人の間に沈黙が流れた。そして、家に帰るために別れて、明日、今井家族が謝りに来るということを聞いて、俺も了承した。


今日から九月でつい一、二週間前はうるさかったセミの鳴き声も今はほとんど聞こえなくなった。俺はセミが嫌いなので嬉しい。


「ただいま。母さん、話がある。」

「ん? わかった。何?」

「七海。覚えてるよね? 今井七海。」

「⋯⋯えぇ。皮肉なことにね。」

「その事のんだけど、仲直りしたよ。ていうか、七海が謝ってくれて、明日親も一緒に謝りに来るって。」

「そう。まぁ、俊がいいんだったら母さんがとやかく言うことは無いし、良いわよ。で? 明日の何時頃?」

「一緒に帰るから今日と一緒ぐらい。」

「そう。」


母さんは言葉にはあまり感情が感じられなかったが、怒っていた。表情も曇っていた。





俺はその日の夜、夢を見た。


七海と仲良しだった頃の夢。


俺の本来の過去。


そして、これからのこと⋯⋯。


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